本日のウニ:タコノマクラ①受精卵
久々にウニの発生シリーズの更新です。今回はタコノマクラ Clypeaster japonicus の発生です。タコノマクラはバフンウニなどの正形類いわゆるウニ型のウニ達と違って、平べったい形をしています。これらの仲間は不正形類と呼ばれています。スカシカシパンやブンブクなども不正形類に分類されます。親に関してはまた後ほど。
写真は受精後1時間の受精卵です。大きさは直径が100 µmよりちょっと小さく、バフンウニなどと比較すると卵黄が少ないため非常に透明です。卵の中心に見える核は、雌性前核と雄性前核が融合した状態で、親の体細胞と同じ染色体数を備えています。周りに見える一層の膜構造は、バフンウニの時にも紹介した受精膜です。この膜の存在により、受精後、別の精子からのアタックを物理的に排除することができます。ただし、バフンウニの受精膜と比較すると少し弱く、ATAなどで処理していなくても、ガラス針で破壊することが可能です。生殖シーズンが初夏から真夏にかけてであり、卵やその後続く胚の体が非常に透明であるため、発生生物学臨海実習などでは重宝がられる存在です。しかし一方で、生息密度がさほど高くないため、個体数の確保は難しいです。