また会う日まで
2023/11/2
料理は全く得意ではない。
しかし、流石にパスタくらいは茹でられる。
何てことはないのだが、遠い国トルコのスーパーで食材を買い、ゲストハウスの共用キッチンでソーセージを焼き、パスタに絡めて食べる。
それだけで美味しく感じてしまうのだ。
東南アジア、南アジアでは出来なかった自炊生活を今、楽しんでいる。
この日はダイキ君と共に行動。
彼は仕事があるので昼間は別行動が多いのだが、何やら旅中に知り合ったエスキシェヒル出身のトルコ人男性と会うとの事で、私も同行させてもらった。
その男性、スレイマン君は大学生。
今はカイセリという別の街にある学校に通い、日本語を勉強していて、ゆくゆくは日本で働きたいとの事。
予めダイキ君から聞いてはいたが、彼は本当に日本語が堪能だった。
イントネーション、アクセントから会話の間の取り方まで違和感が無く、語彙力もある。
何やら三島由紀夫、村上春樹、芥川龍之介などの本に興味を持ち、それを理解したく勉強し始めたのだという。
いやはやなんとも…頭が下がる思いだ。
帰省中のスレイマン君は地元・エスキシェヒルの今昔、伝統が知れる各地を案内してくれた。
これらを日本語でガイドしてくれる
こんな贅沢は無い
しかもスレイマン君の奢りだ
本当に
有難いやら申し訳ないやら…
やはり現地の方から聞く話は説得力がある。
貴重な体験、そして私を快く受け入れてくれたスレイマン君と、紹介してくれたダイキ君に感謝。
笑顔で別れた後、私とダイキ君は近くのカフェに立ち寄り、お互いの今後について話す。
一週間を共にした彼とも、明日からはまた別々の道になりそうだ。
だが悲壮感は無い。
初対面から自然と馴染んだ私達は
『たぶん、またどこかで会うだろう』
と、お互いに理解していた。
私は紅茶代をダイキ君に渡し、一足先に宿へと戻る。
そして発つ明日の準備が落ち着いた頃、着信が。
「今夜、飲みませんか?」
もちろん、断る理由など無い
板チョコ、向日葵の種、オレンジジュース、そしてウォッカを買って来てくれたダイキ君。
宿の小さなバルコニーで交わす別れの乾杯。
ずっと笑い話だ。
日本で会うキッカケもできた。
高知出身の彼と、郷土料理のウツボをつまみ、土佐鶴で飲れたらなぁなんて思いつつ、あっという間に夜は更ける。
ウォッカが空になり“そろそろ”な時間
私とダイキ君はいつものように
「また」
と挨拶を交わし
エスキシェヒル最後のベッドに潜り込んだ