ラオス出国、再びタイへ
2023/6/22
毎日賑やかだった朝食も、今日は大人しい。
この宿で出会った人達は皆、チェックアウトして各方面に向かっているので私1人、スープに入った麺を啜る。
ズズズッという音が耳に響く度、ここ数日の出来事を思い出す。
みんな無事に楽しく旅を続けられる様願う。
勿論、私自身も。
チェックアウトを済ませ、送迎のミニバンに乗り込み、まずはヴィエンチャンのバスターミナルへ。
と、そこに向かう途中、60代らしき男性3人組が乗車。
全員、日本人だった。
もうここまでくると驚きは無い。
聞くと、学校の同級生で毎年この時期になると一緒に旅行をしているが、コロナの影響で4年振りなのだという。
そうはいっても集合場所は海外の現地、そこから各々の自由行動になり、帰る日にちもバラバラ。
そんなユルさが丁度良いのだそうだ。
長年の付き合いだから出来る旅行の仕方。
素敵だと思う。
ラオスで出国手続きを行い、バスで友好の橋を渡る。
無事にラオス入国手続きも終え、再びバスでタイ国境の街ノーンカーイへ。
宿にチェックインし、まずはタイ通貨を調達しに銀行へ向かう。
残ったラオス通貨を交換してもらう為だ。
しかし不安があった。
先程まで一緒にいた3人組の方々から
ラオス通貨は交換してくれない
そう聞いていたのだ。
それでも23万キープ(約1,800円)程あるので、何とかしてもらえないかと、窓口に尋ねる。
「あの、通貨交換は出来ますか?」
「えぇ、出来ますよ」
愛想の良いお姉さんがニコッと穏やかに、笑顔で応えてくれる。
微笑みの国タイを象徴するかの様な表情だ。
私は財布からスッと、ラオスのキープ紙幣を取り出した。
途端にお姉さんの表情が曇る。
「あ…キープはちょっと…出来ないんです…」
微笑みの国タイから
苦笑いの国タイへと変わる瞬間だった
「ですよね…実は私もそう思っていました」
私も苦笑いで応え、申し訳無さそうに紙幣を財布に戻してATMでバーツをキャッシングした。
しかし、極小の金額ならまだしも
通貨交換すらしてもらえないお金の事を
ラオス国民はどう思っているのだろう…
ともあれ、一先ず調達したバーツで近くの屋台に行き、マンゴースムージーを飲む。
そして通り過ぎる車や街人を眺めていると、突然こちらに手を振る人影が。
アリキ君だ!
私より1日早くラオスを出国した彼は、タイのこの街ノーンカーイに滞在し、今ここでバッタリと再会したのだ。
私はこのシチュエーションをずっと楽しみにしていた。
何しろ、何度も読み返した様々な旅のエッセイや小説などでこういったシーンがあり、その度に
こういう経験したいなぁ
と憧れていたのである。
だが、その本はいずれも30年程前の話。
インターネットも発達しておらず、だからこそ、彼らはその偶然に心踊らせていただろうし、私もそれを読んで興奮した。
ところが今は容易に連絡が可能な時代。
ましてや今回は事前に
「僕もノーンカーイに行きます」
と直接伝えていたのだから、どこで何時に待ち合わせなどしていなくても、歩いていたらバッタリ会うだろうと思っていた。
この街はそんなに大きな所ではないのだ。
それどころか、宿泊先も同じだった。
まぁ、ヴィエンチャンでも同宿だし、Booking.comで最安値を検索してお互い予約するのだから、当然といえば当然だ。
そんなわけで、エッセイや小説で読んでいた程の衝撃的な再会とはならなかった。
とはいえ、とても嬉しい事はいうまでも無い。
その後、アリキ君は散歩。私は部屋で少し休んでいたのだが、宿の目の前はメコン川。
日没の景色は綺麗なのだろうと、夕方6時頃に再び外に出る。
アリキ君も川沿いにいるとの事で合流し、パイナップルをつまみながら静かに夕陽を眺める。
日没後もアリキ君と暫く川沿いで会話を楽しみ、すっかり暗くなった頃に夕食へ。
尽きない話は帰り道まで続き、宿の入口からお互いの部屋に戻った。
彼は明日チェックアウト日だったが、延泊する事にしたそうだ。
私も明日はこの街にいるが、その後は決めていない。
それで良い。
それが良いのだ。