生きてる証
翌朝、函館を出発し室蘭へ。
マツモトさんに会いに行くためだ。
会うのは今回で2回目になる。
初回は半年前。層雲峡ロープウェイの受付で、たまたま私の前に並んでいらっしゃったのだ。
朝一から並ぶ人達は登山目的で、ロープウェイで途中まで行き、そこから歩いて頂上を目指すので装備も相応だった。
そんな中、私だけ観光客丸出しの格好である。
『なんや、変なヤツおるなぁ』
これが私に対する第一印象だったようだ。
そうとは知らず「頂上まで行くんですか?」などと話しかける私。
大抵は相槌で済まされ終わるものだが、マツモトさんは写真や動画を撮りやすいようにと私をロープウェイの一番前に誘導し、世界一周を予定している私の話を聞いてくださった。
「またお会いしましょう」
ロープウェイ到着後、連絡先を交換して別れた。
出会って30分ほどの出来事である。
そんな些細なやり取りが今になり食事の機会を頂き、駅まで迎えに来てくださっているのだから、御縁というものは本当に不思議だ。
雰囲気の良い洋食店にて注文した料理を食べつつ、お互いの近況について談笑した。
私の話もそうだが、それよりもマツモトさんは数日前、42.195kmの大会フルマラソンを完走しているのだ。
しかも帽子にドラえもんのぬいぐるみを付けて…!
そうすると沿道の人達が「かわいい!」「頑張れー!」と声を掛けてくれるらしい。
「なんでそんなに走ったり登山したりするんですか?」
私が聞くと
「生きてる証を追いかけてるんや」
マツモトさんが穏やかに笑って答えてくれた。
苦しかったり大変だったり、励まし励まされ、喜び喜ばれ。
あらゆる感情が震える時、生きている事を実感する。
そんな命あっての感覚を追い求めることが楽しく、素晴らしいのだと。
そう話すと、おもむろに袋を取り出し、私に渡してくださった。
中には室蘭・地球岬の缶バッジと、住吉大社の御守り。
この御守りには「五」「大」「力」と書かれた3つ石が入っており、願いが叶った際には、自分も何処かで拾った石に「五」「大」「力」と書いて住吉大社にお礼参りをし、計6個の石を返納(倍返し)するという習わしがあるそうだ。
それを誰かが拾い、倍返しすることで心願成就する人が増えていく。
私もマツモトさんと一緒に住吉大社へ倍返しに行くと約束し、御礼を伝え、再び送ってくださった室蘭駅のホームで別れた。
様々な御親切に感謝いたします。本当にありがとうございました。
必ず帰ってきますね。
生きてる証を追いかけながら。
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