求めていたもの
2023/6/24
ノーンカーイ3日目、最終日。
チェックアウト前にアリキ君と朝食を取り、2人で収録作業をする。
彼は自身のラジオチャンネルを持っていて、旅や民族等に関する話題を発信しているのだ。
そこで私の旅、とりわけモンゴル遊牧民との共同生活について話してほしいとオファーを頂き、恐縮ながら引き受ける事に。
無事に収録を済ませ、宿をチェックアウト。
その後、街中のカフェへ移動し、再び収録。
こんなに興味を持ってくださるなんて光栄だ。
結局3話分を録り終え、バスターミナルへ。
着いてみると、想像以上にターミナル職員の押しが強い。
バスの行き先を物色する私とアリキ君が看板を見ながら歩いていると
「どこ行くの?」
「バンコク?」
「バンコクならこっちだ」
あまりに積極的に話し掛けてくるので、最初は不当に高いバスチケットを売りつけられるのかと思い、警戒していた。
が、どうやらそうではなく、困っている客をバンバンと捌いているだけの様だ。
「ウドンターニー行きはどちらですか?」
アリキ君が尋ねると、やや強めの語気と早口(に聞こえる)でプラットフォームとチケット売り場を案内され、あれよあれよという間に行き先が決まった。
彼としては、もし他に楽しそうな所があれば場所はそこまで拘らない、といった具合だったのだが、まさに成り行きまかせ。
それもまた旅の醍醐味だ。
私はというと、元々鉄道の寝台列車で首都バンコクか海の見えるパタヤに行きたいと考えてはいたのだが、まぁバスでも、安くて乗車時間が極端に変わらないのであれば、それでも良いかなとは思っていた。
アリキ君がパタヤ行きの路線を聞いてくれる。
職員は首を傾げて苦笑いをしながら
「(たぶん)このバス!」
と答えてくれる。
わりと大事な事を
「なんとなく」で曖昧に返事される事は
珍しくない
『本当にパタヤまで行くのか…?』
半信半疑だったが、バンコク行きの方は明記された表示があるので、間違い無さそうだ。
値段は580バーツ(曖昧な返答)。
寝台列車の半額に近い値段(たぶん)。
おそらく、乗車時間もそんなに違いは無さそうだ(未確認)。
ただ、夜通し10時間ほど(もっと長い可能性あり)の乗車を横にもなれず過ごすのが少し気に掛かる。
そしてまた、ラオスをずっと一緒に過ごしたオオヒラ君。
彼からオススメされていたノーンカーイ鉄道駅前の食堂に行きたいという気持ちもあった。
そこには約20年ラオスとタイに定住する80歳ほどの日本人男性が働いているらしく、お会いしてみたかったのだ。
「う〜ん、やっぱりとりあえず鉄道駅に行ってみます。そこでバンコクかパタヤ行きのチケットが取れなければ、俺も追ってバスでアリキ君と同じウドンターニーに行きます」
そうアリキ君に伝え、まずは彼を見送る為に発車時間までしばらく、お別れ前の会話を楽しんだ。
そして時刻16:30。
いよいよウドンターニー行きのミニバンが到着し、握手をしてアリキ君を見送る。
また必ず会えるはずだ。
今はあえてここで詳しく書くことは控えるが、アリキ君にもやりたい事がある。非常に楽しみだ。
私に出来ることがあれば、全力で応援したいと思う。
その後、トゥクトゥクに乗ってノーンカーイ駅へ。
窓口で尋ねると、バンコク行きがある。その場でチケットを購入し、駅前の食堂へ。
ここには80歳代の日本人男性が働いているとオオヒラ君から聞いていた。
中を覗くと一目でわかる高齢の日本人。
早速入店し声をかけると、その男性は快く私との会話に乗ってくれた。
リタイヤメントVISAを取得し、もう20年ほどタイやラオスで生活しているらしい。
本当に、色んな人がいるものだと改めて実感する。
そこでは若い日本人学生とも出会った。
セイマ君というその若い男性は、休学して世界各地を旅している途中で、これから私と同じ寝台列車でバンコクに行くとの事。
発車時間まで暫く時間があるので、ご飯を食べつつ話をしていると、視界の外から聞き覚えのある声が。
ミツルさんだ!!
「噓ぉっ!?!?」
私はおそらく、この旅で一番大きな声を出して驚いた。
信じられなかった。
彼はラオスの首都ヴィエンチャンを北上し、私は逆に南のタイへ入国したので、真逆に進んでいたはずだ。
聞くと、ラオス北の街ルアンパバーンが合わなかったらしく、バンコク経由でインドに向かう事にしたみたいだ。
私のnoteを見て動向を知り、なんとなく会う気がしていたらしいのだが、私は全く予想外だった。
それに、つい1時間前まで私はバスターミナルにアリキ君といて、そこからバンコクやパタヤ、ウドンターニーに向かっていたかも知れないのだ。
前述の通り、それでも良いかと実際に思っていた。
なので、少しでも予定が変わっていれば実現しなかったはずである。
これだよこれ
これを求めていたんだ
ビールで乾杯し、偶然の再会に喜びつつ時間は過ぎ、そろそろ出発時間。
食堂から駅に戻り、それぞれバンコク行きの寝台列車に乗り込んだ。
バンコクも楽しくなりそうだ。