いざこざと優しさと
2023/9/19
バングラデシュ、ダッカ5日目。
時刻は7:00。
久々に電話の着信音が鳴る。
日本の某銀行からだ。
事情を説明し、送られてきたメールにレシート画像を添付して返信する。
それを基に銀行がクレジット会社を通し、バングラデシュ側の銀行に意義を申し立てるのだ。
遡ること一昨日の午後。
ATMで現金を引き出そうとしたのだが、エラー画面が表示され、お金が出てこなかった。
しかしエラーはすぐに解消されたので、再び手続きをしたところ、無事に引き出す事ができた。
の筈が
口座を確認すると
しっかり2回分
引き落とされているのだ
実際には受け取っていない金額、日本円にして約7,000円。
システム上は正常に取引されている事になっているらしい。
それを
「いや、お金は受け取っていない」
と、説き伏せなければならない。
銀行からは結果がわかるまで2〜3ヶ月かかると言われたが、期間はともかく、返金はどうだろう…。
現実的に考えて難しいだろうなぁ…というのが正直な感想である。
とにかく、あとは銀行に任せて待つしかない。
切り替えて、外へ。
ショドルガットという河港に向かう。
その為にはまた、あの厄介なバスに乗って極度の大渋滞の中を進まなければならない。
しかし、そうしてまでも見たい。
私の中では今回、バングラデシュで唯一ともいえる目的地だったのだ。
ベンガル語が読めないので前回同様、人に聞きながらショドルガットに向かうバスを探し、そこに同じ行き先の青年と偶然に出会い、一緒に乗り込む。
そしてバスはやはり大渋滞に巻き込まれ、20kmそこそこの距離を3時間かけて、ようやく到着。
ダッカの南西を流れるブリガンガ川。
「死んだ川」または「オールドガンジス」とも称されるこの川は、20年前まで魚が多く生息し、岸で暮らす人々はかつて、それを捕り生計を立てていた。
しかし現在は産業廃棄物や生活ゴミによる汚染が原因で、ほとんど魚がいなくなってしまったらしい。
バングラデシュは今や世界有数の衣料品輸出国だが、その産業の発展が川の生態系を悪化させる要因でもあるようだ。
工場からの廃棄物が水を黒く染めている。
そんな川で各都市を結ぶ定期船、また対岸への渡し舟がひしめき合っているのが、このショドルガットという船着き場なのだ。
川に橋が架けられた今は渡し舟の存在意義が薄れてきているとの情報もあったが、実際に来てみると、まだまだ地域の移動手段として活用されている。
当初、乗るつもりはなかったのだが、対岸への往復で15分と聞き、小さな木製の小舟に乗った。
ちょうど居合わせたムスリム男性が、私に値段を吹っ掛ける輩を制止し、適正価格の人を紹介してくれた事も決め手だった。
船頭がパドルで一掻きする度にゆっくり…
ゆっくりと陸から離れていく…
不思議な気分だ
騒然たるダッカの中心にありながら
そこだけ時間の流れが緩やかに感じる
流石に勘違いかも知れないが、それは今でも渡し舟に乗って移動する人が絶えない理由になっているのではないか。
少し頼りない木船に胡座をかき、古びた建物との対比も相まった輝かしい青空を見上げると、そんな事を思ってしまう。
金銭トラブルで滅入りつつも、奮起させて来た甲斐があった。
時刻17:00。
宿に戻り、出発の準備をし始める。
明日の昼にはバングラデシュを発ち、インドに向かうのだ。
なので私にとって、今夜が実質この街の最後となる。
一通り落ち着いた頃にスタッフから声を掛けられ、受付に向かうと、そこにはオーナーの女性が。
今お世話になっている場所は「あじさい」という日本人宿で、オーナーの“ママ”こと田中さんも日本の方だ。
同じく居合わせた日本人女性の方と3人でバングラデシュを取り巻く話題で盛り上がり、初対面の私にも快く接してくださった。
長くダッカで宿を経営する田中さんの声からは、この国と人々への愛着や想いが伝わってくる。
私も今回ダッカを訪問して、何度も言いようのない興奮と現地の人の親切に触れ、また来たいと思えるようになった。
その時に待っていてくれる宿や人がいる事は、とても嬉しい。
また、この街がどれだけ発展しているのかも楽しみだ。
良い出会いがあった頃に離れてしまうのは毎度の事だが、それも旅として受け止め、次の国インドに備え、ベッドに潜り込んだ。
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