首都クアラルンプールへ
2023/7/9
ペナン島ジョージタウン5日目、最終日。
少し見慣れた早朝の玄関、そこからの景色。
いつもはネット作業が目的だったが、今日は違う。
オオヒラ君の見送りだ。
彼は私より少し早くチェックアウトして、マラッカへと向かう。
そして数日後、日本へ帰国する。
他に誰もいない静かな空気に呼応した、やや小声の挨拶。そして握手。
それで良いのだ
最早それで十分なのだ
見慣れた早朝の玄関、開くドア。
その景色が心なしか、少し明るく見えた。
宿のスタッフはテーブルに着く私に、毎朝コーヒーを出してくれる。
この日はなんと、ドラゴンフルーツも切ってくれた。
もうそろそろ私もチェックアウトだというのに、最後まで親切な人だ。
御礼を伝え、重いバックパックを背負って宿を出る。
外は既に登り始めた太陽が、雨で濡れたアスファルトをキラキラと反射させていた。
なんとも清々しい1日の始まりだ。
それなのに
何故1人になった途端
いつもグタグタになってしまうのだろうか…
宿を出て、クアラルンプール行きのチケット売り場に向かう。
前日に購入済みなのだが、チケットにプラットフォームの場所と車両ナンバーが書かれておらず、どこから何に乗車して良いのかわからないからだ。
時刻10:30。
ちょうど昨日、発券してくれた女性がいたので尋ねる。
「すみません、これからクアラルンプール行きのバスに乗りたいんですが、乗り場はどこですか?」
「コレ、午後11時のチケットよ。今じゃないわ」
まずそもそも、質問の答えになっていない。
そして午後11時の間違いを私が指摘し、午前11時に修整したのはあなただ。
「……これはなぜ書き直してあるの?」
「……書き間違ったからです」
「………誰が?」
「……………あなたです」
途端に女性の顔つきが不機嫌になる。
しかし、どう見ても自分の筆跡だと思ったのだろう。
反論せず、黙々とPCで確認する女性。
そして少しイライラ混じりの筆調で、チケットに書かれた私の座席を変更する。
つまり昨日私が予約した席は、既に他の客が取っているということだ。
そしてやはり無言で車両ナンバーを書き加え
「乗り場はここ、車両ナンバーはコレ」
納得いかない(したくない)顔でチケットを突きつける女性。
「……ありがとうございます」
返事は無い。
昨日の対応は良かったんだけどなぁ…。
しかし、どこで何をやっても移動の手続きはこんな事がザラだ。
よくこれで物事が回ってるよなぁと思う。
地元の市民達はどうしているんだろう。
それとも、私だけなのか?
いつもこんな目に遭うのは。
そんなはずは無いのだがつい、そう考えてしまう。
何はともあれ、バスに乗る。
ここから鉄道で隣の駅に行き、グーグルマップで宿に向かう。
しかしマップが上手く機能しない。
ナビ通りに歩いているが、急にルートがコロコロ変わる。
むしろ、ただ立ち止まっていても現在地すら定まらない。
体の前後に背負った計20kg超のバックパックが重くのし掛かり、大量の汗が噴き出る。
初めての宿に行く時は、いつもこうだ。
この時が旅で一番大変だといっても、過言ではない。
時刻18:30。
最後は自力で宿を見つけ、何とかチェックイン。
支払いを済ませ、カードキーを受け取る。
しかしカードキーを何度かざしても、ドアが開かない。
受付に戻り、説明する。
「わかりました、今から行くのでドアの前で待っててください」
そう、もちろん来ない。
ドアの前で滝の様な汗を流し座り込む私を見て、周りの人が同情の声を掛けてくれる。
再度受付に行き、催促。
んだよメンドクセェなぁ、といった顔でスタッフが席を立つ。
それでも、言葉遣いが丁寧なだけマシだ。
結局、カードキーにパスコードが登録されていなかった様で、新たに打ち直し、ようやく部屋へ…。
この日はもう疲れて外へ出る気にもなれず、何も食べないままシャワーだけ浴びてベッドに潜り込んだ。