ブラガ探訪
2024/11/17
『そうだ、ブラガに行こう』
ふと思い立ち、日帰りも可能なこの街にフラッと出掛けることにした。
何も調べず、気持ちの赴くままに。
滞在中のポルトからはバスで50分。
ヨーロッパでお馴染みのFlixbusチケットを購入し、出発を待つも、便が突然変更になり次のバスに振り替え。
だが到着したバスの職員には「そのチケットでは乗れない」と拒否される。
一度頷き様子を見ると、振り替えを待っていた客がどんどん乗り込んでいく。
「いやいや、みんな乗ってんじゃん」
職員に再度詰め寄り、仕方無く了承された。
『さて、とりあえず歩いてみるか』
おぉっ、思ってたよりも立派だな、ブラガ。
えっ?もしかして有名な所なの?
第2都市のポルトよりコンパクトだが、引けを取らないほど充実した景観。
日曜日ということもあり、とても静かで人もまばらだが、その分歩きやすくて好印象だ。
街を楽しみつつ、自分の内面にも向き合えるくらいの穏やかさが心地良い。
平和な時間と空間は、まるで3度目のアフリカを前にして享受する束の間の楽園の様。
目を覚ますと、多少感じる倦怠感。どうやら体調はまだ戻りきっていないようだ。
しかし帰りのバス乗車までは残り2時間。
少し時間が余ったので、ここで初めて街について調べてみる。すると、何やら名所らしき大聖堂が約10km先にあるらしい。
徒歩では難しいな、ヒッチハイクか。
ところが大聖堂に続く道は意外にも混雑していて、ヒッチハイクも難しそうだ。
と沿道に目を配ると、地元民らしき高齢女性が何かを待っている様子。
そうか、バスか。何故こんな当たり前の交通手段に気が付かなかったんだろう。
私は翻訳したポルトガル語の文字を見せて、彼女に尋ねる。
「ここに来るバスは大聖堂に行きますか?」
その女性は口頭のポルトガル語で返事をくれたので聞き取れなかったが、にこやかな表情と仕草で
「はい、私もそこに行くから安心して」
という内容は伝わってきた。
そう御礼を伝えて彼女と待つこと約10分。
大聖堂Bom Jesusと表示されたバスが向かってきた。
『よし、今から乗れば帰りも間に合うはず』
って、あれ?
無情にも私達の前を通り過ぎたバスは、その50mほど先で停車し、またすぐに出発してしまった。
女性はバスに見向きもせず、ただ車の往来を見つめている。
お姉さんや
バス待ってたんとちゃうんかい…
とにかく、もう次を待っても時間が足りない。私は再び翻訳したポルトガル語で
「時間が無いので諦めます」
と見せると、彼女は少し残念そうな顔をして頷いた。
とはいえ十分に楽しめたし、一足早くポルト行きのバスターミナルへ。
しかし私の予約した便だけが電光掲示板に表示されていない。
周りに事情を知る人はいないか見渡すと、明らかに観光客な韓国人カップルの姿が。
もしかしたら彼らもポルトに向かうかもしれない。
「すみません私は今、予約したポルト行きのバスを探しているんですが、見つからなくて…。それで、あなた達は何処に向かいますか?」
「あ…いや…私達は明日の予定を探してるんで…」
「なるほど、わかりました。ありがとうございます♪」
一段落してチケットを再確認すると、発車は思っていた時刻の30分先だった。私は勘違いしていたのだ。
じゃあ大聖堂行けたじゃん…何より、あの女性が何をしたかったのか知りたかったが、しょうがない。
うーん、やはりまだ本調子ではないようだ。
というわけで無事にポルト到着。
しばらく歩き、宿近くのスーパーに入ると、先程の韓国人カップルとばったり。
「おぉっ、ポルトに来たんだね」
「あ…いや、まぁ…はぁい…」
彼らは少しバツが悪そうな表情をしていたが、私は特に何も思わない。
正直、ブラガのバスターミナル時点で彼らが誤魔化しているのは気付いていたし、知らない人に話し掛けられたら警戒するのは当然だ。
しかし、このテの嘘のつき方って東アジア人(というか、私の知る限り日本人と韓国人)特有だよな、と不意に母国を客観視してみたり。
私も日本人なので、これが“相手を不快にさせない為の嘘”でもあると理解できるが、一部の欧州人は不審に思うのではないか。
おそらく、彼らならこう言うだろう。
「私達もポルトに行くけど、あなたのそのバスについてはわからないな」
私もそう言いがちだ。なので、どちらも理解できる。
色々考えさせられた今回のブラガ探訪だが、十分楽しめたし、満足満足。