ヒッチハイクでエッサウィラ
2024/8/15
午前10時。
朝食を済ませた私とアツシ君は同じタイミングでチェックアウト。
そしてバスに乗る為、まずはアガディールに向かう彼を見送った。
おそらくまた会えるだろう、そんな予感がしていたので爽やかな別れだった。
さて、私はこれからエッサウィラという街へ行きたいのだが、なんせもう行き方を調べるのが面倒なのだ。
バスにしても、何番線なのか、乗り換えはあるのか、幾らなのか、バス停はどこなのか、バス停にバスは来るのか、そもそもバス停はあるのだろうか…。
グーグルマップにも公共交通機関は表示されず、出した結論。
好立地、反応も悪くない、距離はそこそこあるとはいえ、目的地までは一本道。
わりと早く止まってもらえるだろうと思っていたのだが、なかなかそうもいかず…。
『あぁ、ショーツ姿は良くないか』
そう思い、バックパックから長ズボンを取り出していると、一台の車……じゃない。
えっ?バイク…?
長ズボンに履き替えたものの効果は無く、少し待つこと30分。
2台目の車が止まってくれた。
さぁ、残りはあとどれくらいだろう。
130kmくらいかな…。
そして、ここにきて車通りが激減。
おまけに陽射しが強くなってきた。
日陰は無く、水も無い。
歩いたところで街も望めない予感。
案の定、しばらく待っても止まってもらえず、苦戦を強いられる。
『最悪ここで野宿か…大丈夫かな…』
そう思っていると、遠くから2人の子供が。
子供からこんな優しさをもらったら、諦めるわけにはいかない。
弟の彼は私から数十メートル離れた先で、じっと私を見て応援してくれている。
せっかくビーチ沿いのホテルにきて、海で遊びたいだろうに5分…10分…15分経ってもずっと…。
ややプレッシャーだが、こうなれば意地でもヒッチハイクを成功させなければ…!
そして約30分後、ついに止まってくれた!
さらになんと、130km離れた目的地エッサウィラまで連れて行ってくれるとの事。
私はドライバーに御礼を伝えて車に乗り込み、フロントガラスの先に見える彼に手を振り、胸に手をあて、Goodポーズを見せた。
彼も私にGoodポーズで返し、飛び跳ねて喜んでくれている。
そして手を振り、見送ってくれた。
嬉しいなぁ、あの子はきっと“デキる大人”になるんだろうなぁ。
車に乗せてもらうこと約2時間、無事に目的地エッサウィラに到着。
ドライバーの男性と奥さん、娘さんの3人もここで一泊して翌日、カサブランカに帰るらしい。
しかしまだ今夜の宿を予約していないようで、街中をウロウロ走っていると、警察に突然止められる。
『えっ?あっ……!!』
よく見ると、一方通行路を逆走している…。
警察に切符を切られ、それまで和やかだった車内の雰囲気が一変して重々しい空気に変わる。
「君…もうすぐそこが旧市街だから…そこ行けば安いホステルがあるはずだ」
ドライバーにそう告げられた私は
「はい…本当にありがとうございました…あなたに感謝します…」
と伝え車を降りたが、返事は無かった…。
何はともあれ、私もこれから宿を探さなければならない。
なぜかスマートフォンの電波が入らず、カフェのWi-Fiを使って検索するも、安宿は全て満室。
昨日の下調べではけっこう空いてたんだけどな…。
仕方なくダメ元で直接宿に行き、空きがないか尋ねるも、やはり無理との事。
『野宿するしかないか…』
宿の受付でそう思っていると隣から声が。
Are you coming to my house? I'll give you my room.
What? That's helpful, but is it OK?
「ハイ」
「えっ、日本語!?なんで日本語話せるの?」
「アニメ、ワンピース」
Ah, I see! That would be very helpful.
Can I see the room first?
Okay, I'll check with my mom now, so wait a minute.
………
「ダイジョウブデス、ハイ、イキマショウ」
唐突な日本語に戸惑い、英語が入り混じる会話だったが、ムラドゥという名の彼はどうやら宿スタッフと友達で、たまたま受付で談笑していたところだったらしい。
「I know the ガキノツキ.」
「えっ、ガキノツキ?」
「Ah〜、ハマダァ、タナカァ、マツモトォ」
「あぁっガキの使いね!Japanese comedy right?」
「Yeah, and punishment 24h…」
「ん??あぁ、笑ってはいけない24時か!」
そんな会話をしながら、ムラドゥと夜のエッサウィラを少し散歩。
街並みこそ完全に異国だが、海沿いの湿った風がどことなく自分の故郷を思い出させる。