印象の雲
2024/4/15
快晴のカズベキ、3日目の朝。
この辺りはとても不思議だ。
山頂の残雪、そして雲が近くにある高地なのだが、ポカポカとした日光に照らされ暖かい。風は穏やかだ。
当初、私とサトミちゃんはこの日トビリシに戻ろうかとも考えていたのだが、そうした雰囲気や景色、街の様子が気に入ったので延泊する事にした。
そして昨夜、アジちゃんからのメッセージ。
彼女も今夜、カズベキに来ることになった。
こういった偶然が何とも旅らしく、心が踊る。
時刻11:00。
一足早くこの街に来ていたアンディは今日、トビリシに戻るとの事で、私とサトミちゃんは彼を見送る為、共に街外れまで歩く。
「ありがとう、また会おう」
そう挨拶をして別れた後、アンディはヒッチハイクを試みたが、どうやら上手くいかなかったらしい。
こればっかりは運もあるので仕方無い。
ともあれ、彼は明るくコミュニケーションが得意なので、今後も楽しく旅を続けるはずだ。
いつか、どこかで再会できる事を願う。
2人になった私とサトミちゃんは、今夜の宿にチェックインするまでの間、眼前にそびえるコーカサスの山々を一望しながら色々な事を話した。
血液型やホラー、そして生い立ちから人生感、ボランティア、平和といった大きなテーマまで。
彼女は私の事を優しいと言ってくれたりもしたが正直、私はその言葉をあまり気にしない様にしている。
印象というのは千差万別で、且つ曖昧だ。
それは今、目の前を流れている雲の様に捉えどころがなく、すぐに変化してしまう。
ただ、自分にできる事が少しだけ誰かの為になるなら、それはなるべく惜しまずにいたいと思うし、感謝をされたら素直に嬉しい。
そういう面倒な性格なのだ。
時刻18:00過ぎ。
アジちゃんと宿で合流。
彼女は天真爛漫で、歯に衣着せぬ言葉を持ち前の明るさと柔らかい声色で包むので、キツさを感じさせない。
まだ出会って3日、時間にすると数時間だ。年齢は一回りも離れている。
しかし、そんな距離を自然と縮められる親しみやすさを持っている。
3人でシェアする個室ではYouTubeで懐かしい日本のポップソングを流し、まるで自宅さながらのあたたかな雰囲気。
それでいて修学旅行の様なワクワク感。
和やかな会話と共に時間はあっという間に過ぎていく。
『こんな日がずっと続いたら良いのにな』
そんな事を思いながら日付を跨いだ深夜、私達はバックパッカーに似つかわしくないフカフカのベッドに潜り込み、部屋の外に広がるカズベキの大自然を瞼の奥に感じながら眠りについた。
2023年3月から世界中を旅して周り、その時の出来事や感じた事を極力リアルタイムで綴っています。 なので今後どうなるかは私にもわかりません。 その様子を楽しんで頂けましたら幸いです。 サポートは旅の活動費にありがたく使用させて頂きます。 もし良ければ、宜しくお願いいたします。