一人旅再会、のそばから…
2023/7/1
同室だったユウヤ君と共にチェックアウト。
パタヤ北バスターミナルに行き、そこから再びバンコクへ戻る。
別々のタイミングでチケットを買ったのだが、たまたまバス席も隣だったので、約2時間半の移動中ずっと彼と話をしていた。
そしてあっという間にバンコク、エカマイバスターミナルに到着。
一先ず昼飯でも食べようかと、カオソーイ(タイ風カレーラーメン)が評判らしい店に入る。
一息つき、ここでユウヤ君とお別れ。
彼は今夜の飛行機で帰国する。
と、いうわけで
久方ぶりに一人旅の再会だ
といっても行き先が決まっていない
マレーシアに行く事は決めているのだが、まだ早い予感がする。
というのも、共通の知人を通してSNSで繋がった日本人女性が、今月下旬にシンガポールに来るとの事で、そこに予定を合わせたいのだ。
当然シンガポールは物価が高く、その手前のマレーシアは安宿のクオリティが本当に値段なり、との情報もある。
なので、あと数週間を快適に過ごすならば、タイにいた方が良いとも思い、行動を決められずにいた。
とりあえず
マレーシア行きの路線がある鉄道駅に行こう
グーグルマップで検索し、フアランポーン駅までの経路を調べる。
そして25番線というバスに乗るため、バス停まで行き、待ち続けた。
が、他の路線バスは何度も繰り返し来ているのに、いくら待てども25番線だけが一向に来る気配が無い。
グーグルマップでは5分おきに来ると書いてあるのに…!
20kgを超えるバックパックを背負い、炎天下に汗をダラダラと垂らしながら待つこと50分、ようやく25番線が到着!
ようやく腰を下ろし、ため息をついて再びグーグルマップを開き、移動を確認。
運転手に確認すると、反対側の道路だと言われる。
どうやら25番線は上りと下りがあり、私は反対路線に乗車してしまったようだ。
急いでバスを降り、反対側の道路にあるバス停へと向かう。
そして、そんな私を嘲笑うかの様に目の前で出発して通り過ぎる本命の25番線。
手を挙げても止まってくれなかった…。
仕方なく、次の25番線が到着するのを待つ。
グーグルマップには5分毎にくると書いてあるが、当てにならない。
そして案の定、バスは待てども待てども来ない。
時刻は18:00を過ぎている。
宿のチェックイン時間を2度も変更し、太陽に長時間さらされ、疲弊した体と大量の不快な汗でイライラが募る。
そしてとうとう、50分待ってもバスは来なかった。
もう駄目だ、タクシーに乗ろう
タクシーはぼったくりや行き先間違いで何度も揉めた経験があるうえに、当然バスより割高なのでなるべく乗りたくはなかった。
しかし、あまりにも事が進まないので、強引にでも宿に辿り着きたかったのだ。
通り掛かるタクシーを止め、行き先を伝え値段を聞く。
300バーツ(約1200円)
高けぇよ…!
今夜の宿代より高けぇよ…!!
だがもう値段交渉する気も失せていたので、それで了承し、乗車。
「フアランポーンの後はどこに行くの?」
運転手はほとんど英語を話せないらしく、タイ語混じりで全然聞き取れなかったが、
恐らくそう聞いてきたのだと思う。
「マレーシアに行く予定です」
実はまだいつ行くのかは決めていないが…。
すると運転手は急に声のトーンを上げ
「チケットは?」
「マレーシアに行くの?」
「~'·|=##$=}‘/℉℃>!」
早口になった運転手の言葉は尚更わからず、
私は警戒し始めた。
『急に何を言ってるんだ?』
『俺はフアランポーン駅まで乗せてほしいだけなのに』
『もしかしして、グルの仲間からマレーシア行きのチケットを買わせようとしてるのか…?』
『まさか、フアランポーンを過ぎてマレーシア方面まで連れていく気じゃないだろうな…!』
「とにかく、フアランポーンで下ろしてください」
私がそう言うと、運転手はスマホを取り出し、誰かに電話をかけ始めた。
そして、その相手と話すよう促される。
電話越しの女性は英語を話しているようだが、私のリスニングが甘いのと、トランシーバーの様なガーガーうるさい雑音で何を言っているのか全然わからない。
「いいからフアランポーン駅まで行ってくれ!マレーシア行きのチケットも要らないから!」
「ノーストップ;6@[%6%)!0」
「マレーシア$#]"?·℉%$!」
「マレーシアはいいからフアランポーン駅まで行ってくれって言ってんだろ!」
「わかってんのかお前!!」
電話はSorryという声と同時にプツリと途絶え、数秒の沈黙の後、運転手が口を開いた。
「OK、行くよ」
呆れた様な、諦めた様な、『まぁまぁ、少し落ち着いてください』そんなニュアンスを込めた微笑みで運転手は穏やかに言った。
その優しい表情を見て一瞬
『あれ…?悪気はないのか……?』
『もしかして、俺が間違ってんのか…?』
ワケが理解らないながらも、何か申し訳ない事をしてしまった気がした。
やはり運転手は優しく穏やかに
「ノーストップ、マレーシア」
「マレーシア、バンスー」
そこでようやく、ハッキリと察した
マレーシア行きの列車は
この駅には止まらない
バンスー駅から出ている
運転手はそう言いたかったのだと
勘違いしてフアランポーンからマレーシアに行こうとしてる私を引き止めたかったのだと
私は大きな声で謝り、また教えてくれてありがとうと何度も伝えた。
結局、人の善意に気付かず、疑った末に罵倒してしまったのだ。
タイでは一度も悪質な事をされていなかったのに…。
お金を支払い、タクシーを降りて駅員に聞いてみる。
すると、マレーシア行きの国際寝台列車は、数ヶ月前にこのフアランポーン駅からバンスー駅へと機能移転したのだという。
知るかよそんなこと……
モヤモヤを抱えたまま最寄りのゲストハウスにチェックインし、鬱憤を晴らすかの様に、コンビニで買ったビールを勢い良く喉に流し込んだ。