【ラジオ】80年代サイケデリック探訪:ダニーデンサウンドとフライング・ナン・レコーズ.mp3 <後編>
ポッドキャスト番組「アーバンぱるNEW」の文字起こし記事です。
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<メンバー>
店長 / ダモリ / ファグ
<The Chills>
ファグ「まあ実際だから、大きい流れでいくとThe Cleanが最初の看板で、それがちょっと活動鈍ってきたタイミングで、The Chillsっていうのがフライング・ナン・レコーズの看板みたいになっていく、っていう流れが一応あるっすね。」
ダモリ「"Submarine Bells"がなんかメッチャ売れたみたいな?」
ファグ「そうそう。それはでも、ちょっと後というかね。」
ダモリ「もうちょっと後やな。」
店長「The Chillsは、ダニーデン・パンクのThe SAMEのMartin Phillippsが結成したバンドですね。で、1stが87年にリリースということで、これがなんとMayo Thompsonのプロデュースだという事ですね。」
ダモリ「そうなんです。」
ファグ「そうですね。Mayo Thompsonこんなとこにも!ラフ・トレードの流れとかなんかな?」
店長「うん、そうなのかなと思ったし。なんかちなみに、プライマル(スクリーム)の1stも同じ年に出てるんで。この時のなんとなくMayo Thompsonのニーズが…」
ファグ「モードがね。なんかちょっと似てるよね。」
ダモリ「なんかThe Chillsがイギリスを拠点にしてた時があって。その時の繋がり?」
ファグ「あー、それはその後やな。」
ダモリ「その後か。」
ファグ「うん。だから、なんかダニーデンから出てきて、"Kaleidoscope World"とかでニュージーランドで知名度が上がっていって。で、その次の展望としてイギリスに行ったと。」
ダモリ「あー、そういうことか。」
ファグ「で、イギリスで仕事をしてたけど、なんかやっぱりちょっと自分が部外者に感じる、みたいな事をMartin Phillippsが言ってて。っていうか、Martin Phillippsは結構メンタルに色んな、あのー…」
ダモリ「繊細?」
ファグ「繊細。そうですね。」
店長「Kevin Ayersタイプなの?」
ファグ「そうなんですか?」
ダモリ「Kevin Ayers、そんな繊細なん?」
店長「Kevin Ayersは繊細でしょう。ツアーで疲れたらすぐマジョルカ島に引っ込むヤツやんか、だって。」
ダモリ「あー、なんかそんな話あったな。」
ファグ「いや、まーそういう系じゃないねんな。ほんまダイレクトに精神を病んでいく感じの病み方で。まあ、それがすぐ確認出来るのが…、俺が今まで話してきた内容って結構、"Heavenly Pop Hit"っていうフライング・ナン・ストーリー、フライング・ナンを6回ぐらいに分けて関係者にインタビューを取った動画っていうのがあって。それYouTubeとかに上がってるんで、興味ある人は見てもらいたいなと思うねんけど。それの一番最初にMartin Phillippsが出てきて。始まり方からなんか、海外にツアー出てる間に僕は鬱病になって。ドラッグの問題があって、C型肝炎に罹って、本当に大変だったんだ、みたいな所から始まるというか (笑)」
ダモリ「散々じゃないですか (笑)。凄いネガティブ。」
ファグ「そうそう。なんかやっぱ色々経て、かなり大変やったんやなっていう事は分かるというかね。」
ダモリ「なるほど。」
ファグ「まあ、だからイギリスでもヒットはあるけど、やっぱどっかで部外者のように感じていて。しかもだから、バンドメンバーが凄く入れ替わるのがThe Chillsの特徴で。」
ダモリ「なんかDiscogs見ても、The Chillsのところ凄いなんかメンバーが…、Martin Phillipps以外なんか凄い…」
ファグ「そうそう!線引かれてる (笑)」
ダモリ「取り消し線引かれてる (笑)。なんかThe Batsのメッチャ固定してる感じとは、全然違う感じっすね。」
ファグ「そうね。だってさ、XTCの人とかもさ、アメリカでレコーディングする時とかに入ってたりとかさ。結構普通にメンバーを…、なんかビザのトラブルとかで入れへんた時とかに、急に募集してやってもらうみたいな。この辺の固定しなさみたいなのが、The Chillsのサウンドの変遷に割と刻み込まれてる感じ、っていうのはするよね。」
店長「うん。まあ、アレですね?Galaxie 500のDean WarehamとLunaを結成する人(Justin Harwood)とか。」
ファグ「あー、そうね。その人はだから"Heavenly Pop Hit"の入ってる、ダモリンがさっき言ったアルバム…」
ダモリ「"Submarine Bells"。90年のやつ。」
ファグ「そうそう。その1曲目が"Heavenly Pop Hit"。その時に入ってたのが、Lunaにも参加する人やね。」
店長「とかね。Stereolabの初期メンバーの人とかもいたって言いますよね、The Chillsには。」
ファグ「あ、そうなんや。まあ、でもメンバー40人くらいいる、みたいな話もちょっと茶化して聞かれてたりしたから (笑)。それくらい入れ替わってるっていう感じやね。」
ダモリ「それが特徴、みたいな?」
ファグ「特徴。まあ、でも何て言うのかな?ポップセンスがやっぱり凄いあると言うか。ちょっとヒネたポップセンス…、ヒネたっていうかなんかナチュラルにちょっと変みたいな感じが。"Heavenly Pop Hit"とかも結構ね、展開が不思議な展開やし。」
ダモリ「なんかそういうのがね、ダニーデンサウンドのね、ナチュラルになんかヒネてるみたいな?」
ファグ「うんうん。そういう意味でだから結構、The Chillsも象徴的なバンドやんね。」
<The Verlaines>
店長「うん。ヒネた展開って言うと、俺は割とThe Verlainesが結構ヒネてるなぁっていう気がしましたね。」
ダモリ「あー。The Verlainesもかなり…、何とも言えないヒネ感やったわ、聴いたけど。」
ファグ「俺は1番好きかも、っていう感じかな。ボーカルのGraeme Downesはメチャメチャインテリじゃないですか?現代音楽を教えてたっていう。それこそダニーデンのオタゴ大学っていうのがあってさ。そこの音楽部の部長までなってたっていう人が。」
店長「あ、そうなんですか?」
ファグ「うん、そうそうそう。」
ダモリ「メチャメチャインテリ。」
店長「ダニーデン系の人はやっぱり、そういう人ちょいちょいいるよな?なんか学者ですとか、ライターですとか」。
ファグ「うんうん。やっぱりこう大学都市から出てくる人材というか。」
店長「Chris Knoxだってなんか、漫画批評とか映画評論とか書いてたんじゃなかったっけ?確か。」
ファグ「あっ、そうなん?まあ、(The Verlainesの)一番有名な曲はやっぱり"Death And The Maiden"。ウサギが出てくるミュージックビデオのやつ。」
店長「途中からなんか3拍子になったりするやつね。」
ファグ「そうそうそうそう。これをStephen Malkmusがメロディーを一部パクリましたって言ってたけど。Pavementの。」
ダモリ「あー、Pavementの。」
ファグ「うん。で、まあそこから何年か経って、その曲カバーしたりしてて。しかも、だからさっき言った"Heavenly Pop Hit"っていうドキュメンタリーに、唯一ダニーデン関係者じゃない人でインタビュー受けてるっていう。そんなに好きやったんかっていう感じがして、ちょっと面白かったです。」
ダモリ「あー、Pavementへの影響が凄い。」
ファグ「ねえ。なんかオーストラリアでツアーした時も、The Batsを前座にして回ったみたいな話があったから、ほんまに好きやったんやなって思いますね。」
<The Bats>
ダモリ「The BatsもなんかThe CleanのRobert Scottのバンドでしたっけ?」
店長「そうです。」
ファグ「ベースのね。」
店長「Robert Scottが、なんかThe Cleanとは違う音楽をやろうって言って同時並行的に…、ちょっとThe Cleanの後に始めた別プロジェクトみたいな感じですね。」
ファグ「うんうん。」
ダモリ「まあ、音は全然違う感じやね。」
ファグ「まあ、しっかりしてるよね。比べると。」
ダモリ「そう。かなりしっかりしてる。」
店長「うん。The Batsは息が長いですね、かなり。まだ現役でやってるし。だし、Robert Scottのソロとかを聴いてても思ったけど、この人のなんかメロディーセンスというか、ポップ感覚みたいなのは凄い抜群やなと思ったんで。普通に最初に聴いたファースト・インプレッションとしては一番好きって思った、俺は。」
ファグ「あー、そうなんすか。なんかThe Batsはそんなにサイケデリックなグニャっとした感じは無くて…」
店長「無いよね。」
ファグ「ねぇ。グッドメロディーのジャンクリー・ポップっていう感じ。」
店長「で、まあ男女デュオのボーカルで、グッドメロディーでイイんですよね普通に。」
ダモリ「コーラスね。」
ファグ「うんうん。」
<Sneaky Feelings>
ファグ「Sneaky Feelingsも結構だからさ、フライング・ナンの割と主要寄りのアーティストっすよね。」
店長「うん。でも、まあSneaky FeelingsのフロントマンのMatthew Bannisterっていう人は、17歳でスコットランドから移住してきた人なんで。」
ファグ「あー、そうなんや。」
店長「モロにダニーデンみたいな人ではないのが、ああいう音の感じになってんのかな?ってちょっと思ったりはしましたね。」
ファグ「うん、しっかり感っすよね。」
店長「そうそうそう。」
ダモリ「しっかり感。」
ファグ「しっかり感。」
ダモリ「ゆるゆるではない、しっかり感。」
店長「なんかSneaky Feelingsは一応、メンバーが全員曲を書いて歌うみたいなバンドやったんで。どの曲によって、みたいな印象は多分変わると思うねんけど。」
ファグ「あー、そうなんや。俺、1番好きな曲が"Major Barbara"っていう曲やねんけど。」
店長「"Major Barbara"?」
ファグ「うん。あんまり多分メインの楽曲じゃないけど、それは凄い良くて。ちょっとサイケデリックな感じもする。そうか、なんか今の結構納得いったかな。書いてる人が違うから、曲によって印象が違うし。」
店長「うん。みたいですね。」
ファグ「かといって、バラバラっていう感じではないけど。いい具合の振れ幅がありますよね。」
店長「ちなみにバンド名は、コステロの曲名からという事らしいですね。」
ファグ「ね。YouTubeとかでインタビュー見てると『卑劣な感情』って訳されて出てくる (笑)」
店長「(笑)」
ダモリ「卑劣な感情、Sneaky Feelings!空飛ぶ修道女!」
店長「Sneaky Feelingsが割となんかペイズリー・アンダーグラウンドとよく比較されてた音っていう事らしいですけど。」
ファグ「あー、なんかそうかもね。確かに。」
<Look Blue Go Purple>
店長「で、あとはダニーデン系でほぼ唯一と言っていいガールズバンドで、Look Blue Go Purpleっていう5人組の女性バンドがいたんですけど。まあ、彼女達なんかは凄い"Nuggets"的な。ガレージ・サイケ的な音を出してて、それはそれで結構イイんですよね。まあ、短命で終わったんで、あんまり有名ではなかったのかもしれないんですけど。」
ファグ「なんかでも、ドラムの人かベースの人かは結構そのあとも、フライング・ナン系のバンドに入って屋台骨を支えた、みたい記述を見た事があるけど。」
店長「うん、そうね。とか、なんか解散してマネージャーになったりとか、そういう形で貢献してたりする人もいたらしいけどね。」
ファグ「そうっすね。その辺りのアーティストは割とだから、そのChris Knoxのおばあちゃんの遺産で買った4トラック・レコーダーによって結構、音色を仕上げられてた人達なんじゃないかなという感じですね。」
ダモリ「うんうんうん。」
<Jean-Paul Sartre Experience>
店長「あとは、Jean-Paul Sartre Experienceはまあ、俺は割と良いなと思ったんですけど。なんかフライング・ナンのYouTubeに上がってるミュージックビデオの、"Flex"っていう曲とかは結構気持ち悪い感じの…、なんかダニーデン系ではだいぶ独特の美意識を持ってる人達やなみたいな感じがちょっとして。サウンドもなんかちょっと、ゴスっぽいのかな?なんか変な暗さがあって良いなと思ったけど。」
ダモリ「へー。」
ファグ「そうね。まあ、やっぱりその辺の90年代ぐらいのアーティストになると、4トラック・レコーディングの魔力から逃れてるからね。ちょっと外部って言うとアレやけど、主流の影響が大きくなってくるタイミングで。賛否は分かれるかもなという所はあるかなぁ。」
店長「そうですね。まあ、Jean-Paul Sartre Experienceはクライストチャーチのバンドなんで。ダニーデン系とはやっぱりちょっと違うのかな、っていうとこもありつつ。」
ファグ「まあ、でも結構こう霧散していくというかさ。ダニーデンっていうものの実態がやっぱりあるようで無いからさ。みたいな所はあったのかなと思ったりするけどね。」
店長「うん。」
<The Dead C / Bruce Russell>
ファグ「まあ、そういう意味ではやっぱりさっきも言ってたけど、マッシュルーム・レコーズとかに90年代に株式を半分取得されたりして。ちょっとずつメジャーレーベルに変化していくフライング・ナンっていうのに対して、ちょっとヒネた見方をしてたThe Dead CのBruce Russellとかが気になる所ではあるよね。」
店長「うん。」
ファグ「まあ、The Dead Cって言ってしまえば、ノイズ・ロックバンドというかね。ノイズ・インプロビゼーション・ロックバンドみたいな。で、まあメンバーのBruce Russellっていう人は、フライング・ナンのスタッフやってんな。ダニーデン出身でね。で、まあフライング・ナンからも出してるけど。90年代前後のダニーデンの方向性っていうのが、結構こう使うべきじゃない所に金をかけ過ぎてるんじゃないのかって事を批判してたり。ある意味だから、Bruce Russellのやり方っていうのは、1発録りでノイズをバキバキに出して売るみたいな感じで。そういうやり方っていうのは、初期の4トラック・レコーディングにある意味回帰したとも言えるというか。まあ、やってる音はポップじゃないし。そもそもだから、ダニーデンサウンドのポップ至上主義みたいなのも、そんなに必要かどうか分からないみたいな事を言ってて。そういう所がBruce RussellのThe Dead Cの活動に繋がっていくという感じで。」
ダモリ「うんうんうん。」
ファグ「だからフライング・ナンっていうのが、ちょっとずつ呪いとしても機能するようになってくっていう感じやね、90年代ぐらいになってくると。だから、フライング・ナンが有名になっていくにつれて、ニュージーランドのシーンっていうのがほぼイコール、フライング・ナン的なもの、ダニーデン的なものっていう風になっていくと。そういうものに対して、アンチっていうのが90年代頃から出てき始めるという流れですね。」
店長「うん。」
ファグ「ちなみに言うと、関係性はそんなに完全に悪いっていう感じじゃなかったみたいで、Bruce Russell。まあ、とにかくフライング・ナンっていうのはコンピが多いレーベルなんですね。何でかっていうと、初期の出版物がEPが凄く多くて。で、アルバムになると、コンピレーションとかベストみたいな形で、二毛作するようなやり方が割と多いと。」
店長「うん、そうですね。」
ファグ「そういうものの中で、The Dead CのBruce Russellがキュレーターを務めたオムニバスってのが1個出てて。それが"Time To Go - The Southern Psychedelic Moment: 1981-86"っていうアルバムがあんねんけど。これはフライング・ナンのレーベルから出た音源を、81年から86年までのやつを、Bruce Russellがチョイスして作ったコンピやねんけど。これがなんか意外と、よく出てるベスト・フライング・ナン的なんじゃなくて、Bruce Russellの目線から見たフライング・ナンっていうコンピになってて。これが意外とだから、こういう感じに影響を受けてたんや。というか、フライング・ナンのダニーデンサウンド的じゃない側面、ノイズ・ロック的な側面、ちょっとねっちょりしたノイズ・ロック的な側面っていうのが現われてるコンピで、かなり面白い!」
ダモリ「はいはいはい。」
ファグ「で、まあもちろん最初に出たThe Pin Groupとかも入ってるし。普通にTall DwarfsとかThe Chillsとかも入ってんねんけど、選ばれてる曲がやっぱちょっと変というか。あっ、これ?みたいなのが選ばれてる。こんなん出してたんや、みたいな。で、やっぱり選ばれている中で興味深いのは、フライング・ナン初期のThe Gordonsとかね。The Gordonsは異名があって、『南半球のSonic Youth』とか言われてた、フライング・ナンの中でもちょっと異端寄りのバンドですね。」
ダモリ「キム・ゴードンズ?」
店長「それはKim Gordonとは関係ないの?」
ファグ「Kim Gordonとは関係ないんですけど (笑)。The Gordonsはちなみに、The Gordonsが解散した後にThe CleanのHamish Kilgourと一緒にBailter Spaceっていう…。まあ、The Gordonsがノイズ・ロックやとすると、ノイズ・ロックとダニーデンっぽいポップさを混ぜたようなバンドをやってたりして。だから、そのコンピから現れてくるのは、フライング・ナンのノイズ的な側面というか、実験的な側面みたいな。だから、表側のクリーンなジャングル・ポップみたいな感じのダニーデンサウンドの、裏側のドロっとしたノイズっぽい側面みたいなのを、系譜として受け継いでいるのがThe Dead Cなのかな、っていうのが分かるコンピレーションで、凄くイイです。」
ダモリ「うん。なんかギタリストのMichael Morleyやっけ?のソロがなんか良かったですね。結構フリー・フォークにも通じるような感じの。なんかBill Orcuttとも共演してんのかな?だから、なんかそういう所にも直結する感じで、良かった。個人的に。」
ファグ「へー。ちなみにMichael Morleyは、えーっと、なんか難しいバンド名、Wreck Small Speakers On Expensive Stereosっていうバンドに元々いて。で、そっからThe Dead Cに行くねんけど。」
ダモリ「あっ、そうなんや。」
ファグ「で、そのメンバーのRichard Ramっていう人は3Dsっていう、ダニーデンサウンドの割と中期のバンドに参加した、という流れがあるみたいですね。」
※Wreck Small Speakers On Expensive Stereosにボーカルでゲスト参加した、Denise Roughan (Look Blue Go Purple)が3Dsを結成した。
<3Ds>
店長「うん。U2の楽屋からシャンパンを盗んで怒られた3Dsですね (笑)」
ファグ「はい (笑)。怒られて、なんかギャラが出えへんみたいな話になったけど、U2が僕達は君たちのファンなんだって言って、ギャラを出るように交渉してくれた。」
店長「ボノが、(ギャラを)倍くれるっていう約束をしてくれた、みたいな話がありますね。」
ファグ「3Dsは割と自覚的にダニーデンサウンドを受け継いだというか。ダニーデン・リバイバルではないけど、そういう意識を持ったバンドやったみたいですね。なんかグランジ、オルタナティブ時代のダニーデンサウンドっていうのを、結構意識的に作ってたようなとこがあるアーティストですね。」
店長「そうですね。まあ、NirvanaとかPavementとツアーを回ったりとかもしてたらしいんで。そういう感じですよね結構。」
ファグ「そうね。何て言うのかな?ダニーデンサウンドって、オルタナティブとかに影響を与えてたというか。なんかそういう音色が、やっぱあるよね。」
店長「うん。だし、90年前後とかになってくると、なんかシューゲイザーっぽい音とか、ドリーム・ポップっぽい音のバンドとかも出てきたりするなぁっていうのは感じましたね、なんか。」
ダモリ「なんかその辺への影響が…」
<Headless Chickens>
店長「で、ですね。俺がなんかひとつ取り上げたいのは、Headless Chickensなんですけど。」
ファグ「あー、はい。」
ダモリ「ほうほうほう。」
店長「まあ、フライング・ナンをレーベルオーナーのRoger Shepherdが離れる時の何かのインタビューでも、Headless Chickensをリリース出来て良かった、みたいな事を言ってたりするんですけど。」
ファグ「はいはい。あのゴールド・ディスクを逆に持ってるやつやろ?」
店長「そうそう。なんか音がメチャメチャ、アシッド・ハウスなんですよね。Headless Chickensは。」
ファグ「うんうんうん。」
店長「その時代的にやっぱり、セカンド・サマー・オブ・ラブっていうのがあってさ。で、まあなんか俺的にはニュージーランドのPrimal Screamじゃないですけど。"Loaded"的な音のアルバムを出してて。"Body Blow"っていう2ndかな?っていうアルバムが凄いアシッド・ハウス的やなって俺は思ったんですけど。ちなみにHeadless Chickensっていうバンド名は、Thom YorkeがRadiohead前に組んでたバンド名と同じという話もありますが。」
ファグ「影響関係は?」
店長「ない、と。多分。」
ファグ「偶然。へー。Headless Chickensはフライング・ナンから唯一のニュージーランド、No.1ヒットを出したという。」
店長「うん、そうですね。」
ファグ「"George"っていう曲やね。」
店長「で、まあそのペイズリーアンダーグラウンド然り、ネオサイケ然り、ダニーデンサウンド然りなんですが。そのやっぱり、セカンド・サマー・オブ・ラブの前夜的なムードがなんか局所的にあったのかなぁ?みたいな気がしてるんですけどね。まあ、セカンド・サマー・オブ・ラブの本流は、アシッド・ハウスとエクスタシーとレイヴなんですけど。」
ファグ「うん。個人的には同時期やったと思っていて。で、60年代のサマー・オブ・ラブから何が分岐したかっていうと、ドラッグ・カルチャーが分岐したんじゃないかと思っていて。まあ例えば、ペイズリーアンダーグラウンドであるとか、ダニーデンサウンド…、さっきThe Chillsの話でドラッグで身を持ち崩したみたいな話もしたけど。でも、なんか本格的なドラッグ・カルチャーっていう感じではなくて。やっぱりその、音源派によるロック史の編み直しみたいな所の端緒が、ペイズリーアンダーグラウンドであるとか、ダニーデンサウンドにあって。それが、なんか90年代のムードに突破する感覚、サンプリング・カルチャーとかと接続する何かがあったんじゃないかな?っていう風に、個人的には考えています。」
店長「うんうん。」
ファグ「だから、分かれた現象っていう感じかな。セカンド・サマー・オブ・ラブは、やっぱりレイヴィな現象やし。それはだから、ドラッグ・カルチャーなんすよね。享楽的なムーブメントであって。理知的な感覚から何かを汲み上げる、っていうのとはちょっと違うような気はするという感じですね。だから、セカンド・サマー・オブ・ラブとは、やっぱり60年代から何かが分派した、分かれてしまった2つの現象っていう感じで、合流はしないんじゃないかっていうイメージですね。
ダモリ「分かれたまま、みたいな?」
ファグ「はい。どうですか、店長?」
店長「いや、合流はしないと思うんですけど。なんかマッド・チェスターとかとはちょっとサウンド的に似てる所もあったりするのかなって、思ったりはしたんですけど。まあ、レイヴとは全然違うけど。っていうのをHeadless Chickensを聴いて、なんかちょっと考えさせられた所はあったりしたんですけど。」
ファグ「はい。」
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【REFERENCE】
■80年代ニュージーランド音楽考―「フライング・ナン・レコーズ」と「ダニーデン・サウンド」
http://kukkuru04.blogspot.com/2015/03/80.html
Lo-Fi Club氏による2015年の記事。ダニーデンサウンドについて書かれた日本語のまとまった記事。早い段階から書かれた貴重なネット上の記事のひとつで、サウンドの特徴と代表的なバンドを紹介。
■「ダニーデン・サウンド」―NZインディーロック80年代から現在まで
https://wakizata1115.hatenadiary.com/entry/2020/04/18/214702
wakizata1115氏による2020年の記事。貴重な日本語の記事のひとつ。オークランドとダニーデンの違いを分かりやすく書いているほか、年代別にバンドを現代に至るまで紹介。
■1996 "Official History" of Flying Nun
https://www.flyingnun.co.nz/pages/1990s-official-history-of-flying-nun
Flying Nun Records公式によるレーベルの歴史で、1996年のレーベル15周年記念の記事。立ち上げか、Mushroom Records(Festival Records)への身売りなど詳しく書かれている。
■New Zealand Indie: Beyond Flying Nun and the “Dunedin Sound”
https://daily.bandcamp.com/scene-report/new-zealand-indie-list
Bandcampの記事。2006年にFlying Nun RecordsがWMGに売却された後、2009年のRoger Shepherdら共同事業者による買い戻しという上記の記事以降の話にも触れている。その他NZの様々な独立系レーベルの話も。
■Heavenly Pop Hits: The Flying Nun Story (Music Documentary 2002)
https://www.youtube.com/watch?v=GJxdex3QHog
上の記事にも記述があった、Flying Nun Recordsの2002年のドキュメンタリー。日本語字幕は英語の自動翻訳のみだが、関係者の率直な発言など時系列順に追っており映像の分かりやすい資料。確執や怒られの話もあり赤裸々で面白い。
■Chris Knox Interview Part One: The Enemy and Toy Love
https://www.audioculture.co.nz/articles/chris-knox-interview-part-one-the-enemy-and-toy-love
Toy Love、Tall Dwarfsのメンバーで、NZパンク時代から活動するレジェンドChris Knoxへのインタビュー。Flying Nun Recordsの初期のLo-Fiサウンドに強い影響を与えることになった彼の、NZパンク時代からの話を読むことができる。
■The Mixtape: Fiona McDonald | RNZ
https://www.rnz.co.nz/national/programmes/nat-music/audio/2018660684/the-mixtape-fiona-mcdonald
Headless Chickensはレーベル初のナンバーワンヒット・シングルの快挙を成し遂げたバンドだが、このFiona Mcdonald(1995年まで在籍)によるプレイリストはバンドの影響元を伺い知ることができる。
■Album of the Day: The Courtneys, “II”
https://daily.bandcamp.com/album-of-the-day/the-courtneys-ii-review
Bandcampによる、バンクーバーのThe Courtneysの2017年のアルバム『II』の記事。Flying Nunライクな音を出すカナダのバンドがFlying Nunと契約した事を書いており、最近のダニーデン・サウンドの一端を伺える。
■Tally Ho! Flying Nun's Greatest Bits(bandcamp)
https://flyingnun.bandcamp.com/album/tally-ho-flying-nuns-greatest-bits
2011年にFlying Nunからリリースされたコンピ。代表的バンドを網羅的に知るにはやはりこれが一番か。
■Time To Go(bandcamp)
https://flyingnun.bandcamp.com/album/time-to-go
2012年にFlying Nunからリリースされたコンピ。Dead CのBruce Russellがセレクトしており、同レーベルのサイケで実験的な一面が見れる。上のアルバムと対となった裏の一面と見ると面白い。
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