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2023/3/31 君の病気は治らない だけど僕らは生きてく アーバンギャルド十五周年記念公演・ディストピア2023 SOTSUGYOSHIKIに寄せて
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生きることは病気だ。
心臓が脈打つ状態は異常だし、思考することは安定さに欠ける。
死という完治に向かって、再発と寛解を往来しながら呼吸を続けていくしかない。
しかしこの不安定な状態にこそ、生き甲斐がある。生の旨味がある。
不安定な生を彩るように、音楽が流れている。
音楽は揺らぎ、高まり、いつか終わるまで繰り返す。鼓動と同じように。
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三月三十一日。遂にこの日が来てしまった。
アーバンギャルド十五周年記念公演・ディストピア2023 SOTSUGYOSHIKI、中野サンプラザ。
この企画を立てたのは一昨年の秋、コロナが一番猛威をふるっていた時期だろうか。再来年に向けた十五周年公演を何処で行うか。ちょうど閉館が発表された中野サンプラザで行うのはどうか。同会場で行った十周年の公演で浜崎容子も「またここに帰って来ます」と宣言していたが、「ここに帰ってくる」最後のチャンスは今回しかない。
イベンターを介して日程を聞いたところ、三月の土日は既に全滅。平日が二日ほど空いており、三十一日はまだ埋まっていないのを確認した。
中野サンプラザ、最後の三月末日をアーバンギャルドが飾るというシナリオは悪くないと思った。イベント的には平日という厳しさはあるものの。
此処から前回「KEKKONSHIKI」に続き「SOTSUGYOSHIKI」というタイトルが着想された。
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15年。バンドをひとりの人間だと考えたら、十五歳。義務教育からの卒業の季節。
この通過儀礼を、我々だったらどのように演出するか?
何からのSOTSUGYO、何からの別れを表現するのか?
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ライヴの内容については、開催発表後もまだ迷いがあった。幾つかのアイデアが浮かんでは消え、最後に残ったのは「本来アーバンギャルドでやりたかった全てをこの公演に注ぎ込む」ということだった。
前回十周年は、どちらかというとメモリアルな側面が強かった。普段行っているライヴを大きなホールで開催する、それだけで当時の自分たちには手一杯だった。
しかしそこから五年経ち、今回も同じことをやってもしょうがない。十五周年はライヴというよりは、総合芸術としての本来夢想していた「アーバンギャルド」という作品を制作しようと考えた。
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まず『アンドロギュノス』の振付を手掛けてくれたこともあるコレオグラファーのRikakoさんにお声がけをした。彼女のダンスはコンテンポラリーな要素があり、バレエの素養も入っている。ダンサーをあえてパフォーマーと呼び、いわゆる舞踊だけでなく演技的な要素も加えたいこと、彼女たちを「山の手少女」と呼ぶなど、カフェで繰り広げられる妄言を、彼女はしっかり聞き入ってくれた。
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そして映像はALiさん。今回は縦型透明LEDということで、前回の横型スクリーンよりも立体的、抽象的な要素が強まる。昨年のソロのMVからの流れでこの半年で六作品もの(!)MVをお願いしたALiさんだが、ここ数年のアーバンギャルドのVJ素材を再構築した舞台装置としての映像を用意してくれた。
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セットリストとしては、前回十周年の後、つまりここ五年の曲を多く加えた。この五年は瀬々信脱退を起点に、ベースを加えた新編成のバンド、テクノポップセット、シティポップ的なアプローチ、過去作品のセルフカヴァーなど、バンドとしてはサウンドの実験を繰り返した季節でもあった。また世の中的には平成から令和に年号が改まり、コロナ禍が三年分を占め、音楽の聴取環境やライヴ興行に対する意識が激変してしまった時期でもある。
新型コロナウィルスも五類扱いとなり世の中ではだいぶ緩和ムードにはなったものの、音楽業界全体におけるいわゆる「ライヴファン」の総数は確実に減ったと感じる。ゼロ年代以降のフェスブームやテン年代のアイドルブームも相俟って熱に浮かされ続けてきたライヴを趣味や生き甲斐とする人たちの熱が時代の変化によって冷めてしまったところは否めない。人間は環境に適応して生きていく。戦前から戦中、戦後のような価値観や生活スタイルの激変がコロナ禍に起こったのは間違いない。
我々も勿論、このパラダイムシフトに可能な限り応戦した。配信ライヴでの魅せ方を考え、有観客ライヴと配信の連動や映像を使った演出方法など、自分たちの持ちうる武器を全て使って総力戦を繰り広げた。時代の変化に対しては、勝てたとも言えないが、負けたとも言い切れない。何とか生き残ってきたのは事実だ。ここ五年で、同期デビューの十年選手のバンドやグループが幾つも活動休止や解散に見舞われたなか、アーバンギャルドはどっこい生きている。冷たく硬質なテクノのイメージとは相反するように、泥臭くやってきた。
泥だらけの真っ赤なヒールで踊り続けて来た。
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当日はかつてのマネージャーや過去のスタッフが舞台裏で協力してくれ、またゲストには懐かしい顔ぶれも多数訪れた。人生の総集編、走馬灯のように、たくさんの再会があった。
訊けば久しぶりにライヴに訪れたお客様だけでなくこれを機に初めてアーバンギャルドのライヴに足を運んだお客様も少なくなかったというので、そういう意味では新たな出会いもあったのだろう。
長くファンでいてくれた人にとっては、緊張のステージだったとも聞いた。狭くて小さなライヴハウスでのワンマンを長く見続けてきてくれたリスナーたちにとっては、この大舞台はそれこそ我が子の卒業式のようなものでもあったかもしれない。
そう、紛れもなくあのライヴはあなたたち自身のステージでもあったんだよ。
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ライヴの演出はセリフを含め僕が脚本を書いたが、卒業生答辞部分のみ浜崎容子自ら執筆をお願いした。
彼女の書いた答辞で、この式が何からの卒業だったのか、ようやく明確になった。
「既存の音楽からの卒業」
ロキノン系、アイドル、サブカル系…擦り寄ってもしょうがない。
アーバンギャルドはアーバンギャルドでしかなく、これからもアーバンギャルドとしての音楽を極めていく。
メジャーとマイナー、流行と衰退、メンバーチェンジや楽曲の変化などとは無縁に、アーバンギャルドはアーバンギャルドとしてやっていく。
それしかないし、それをやりたい。
十五年間一緒にやってきた彼女に背中を押され、ようやくこの「式」が完成した。
そしてこの活動は彼女との二人三脚だけではない。おおくぼけいという強力な音楽職人がいてこそ、アーバンギャルドの現在の「三位一体性」は強まったともいえる。
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今回のライヴは準備に時間をかけたぶん、自分自身にも相当のプレッシャーがあった。
気持ちが落ち込んだとき、どうしても眠れない夜は「でもタトゥー入れてるし」と思い込んでその場を凌いだ。
「でも僕、ハートに血の丸のタトゥー入れてるし」
こう思い込むことで動悸は収まり汗は引き、リラックスして就寝することが出来たのである。
冗談みたいな本当の話だ。
いつ終わってもおかしくないようなバンドで十五年もやれてきた。これはもう自分の人生をかけてきたといったっていいだろう。
今後実際に身体に刺れても笑わないで下さい。いや、笑っても結構。僕は本気でやっていくだけです。
この病気はどうやら一生、治りそうもないので。
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01.ももいろクロニクル
02.いちご黒書
03.ワンピース心中
04.スカート革命
05.自撮入門
06.さくらメメント
07.映えるな
08.生まれてみたい(浜崎ソロ)
09.都市夫は死ぬことにした(松永ソロ)
10.神ングアウト
11.アルトラ★クイズ
12.アンドロギュノス
卒業生答辞
13.都会のアリス
14.少女元年
15.いちご売れ
16.ダークライド
EN1
17.シガーキス
18.言葉売り
EN2
19.コマーシャルソング
20.プリント・クラブ
21.セーラー服を脱がないで
22.【エンディングロール】さよならサブカルチャー
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このライヴをディレイ配信します。是非とも御覧下さい。
次はライヴハウスでお会いしましょう。東京大阪名古屋にて「16歳」のアーバンギャルドをお目にかけます。
アーバンギャルド presents SICK'S TEEN TOUR
アーバンギャルドの十五周年を記録したオールタイムベストアルバム、ベストBD&DVDは好評発売中です。
お手紙を送れます。短文になってしまいますが、お返事書かせて頂きますね。