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MS-06F ザクⅡ【イリヤ・ソラリ大尉機】(と『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』の雑感)

 NETFLIXオリジナルのフルCGアニメ『機動戦士ガンダム 沈黙のレクイエム】から主人公イリヤ・ソラリ大尉の乗機を再現。
 MS-06Fといえば所謂「ザク」なのだが、単にフルCG化だけでなくUnreal Engineの採用で作画制約から大きく解放された結果、『IGLOO』シリーズを超えた大幅なデザイン変更が為されている。製作者によると『サンダーボルト』や『08小隊』の影響を受けたというが、確かに大田垣デザインの影響を強く感じるディテールの描き方になっている。考えてみれば、全高18mの重機に組み立てやメンテナンスをのために多くの接合部や開口部があるのは当たり前で、作画リソースの問題でそこまで描き込むのが難しかったのを気の済むまでやってみたという感じか。また関節などの可動部のデザインも「リアリティを追求したらこうなっているはずだ」と言わんばかりに見直されている。

印象はかなり変わったが基本的なデザインはオリジナルを踏襲し、細部の描き込みを徹底している。

イリヤ・ソラリ大尉はユーリ・ケラーネ少将麾下の欧州方面軍第7混成機動旅団第1MS中隊レッド・ウルフ隊の中隊長。同隊は0079年11月6日時点でジョシュア・スタイン少佐指揮下のクルジュ=ナポカ奪回大隊の支援に回っている。中隊とあるが、この時点で稼働しているのはザクⅡが4機だけで定数を大きく割り込んでおり、実質的には小隊規模の戦力しか残っていない。レッド・ウルフ隊はルウム戦役に参加してサラミス級3隻を撃沈した実績があるというからMS部隊としてはかなり古参の部類。ここまでの11ヶ月でかなり損耗を強いられてきたはずで、オデッサ・デイ間近のこの時期に地球に展開している部隊に人員もMSも充分な補充を受けられる状況にはなかったのだろう。

ダブル・アンテナの左右でカラーリングが違うのは、右側が後から増設されたのかもしれない。

 中隊長機であるソラリ機の特徴として目を惹くのは通信機能を強化させるために増設された頭部のブレード・アンテナ。ダブル・アンテナとかラビット・タイプなどと呼ばれる仕様だが、アフリカ戦線に投入されたMS-06D デザート・ザクなどにもみられる。カラカル隊のロイ・グリーウッド少佐のD型はダブル・アンテナ仕様だったはず。
 ブラウン系のカラーリングはソラリ大尉のパーソナルカラーと思われ、部隊色として左肩のスパイク・シールドが赤く塗装されている。

左肩の塗装はレッド・ウルフ隊共通の部隊色。

 ソラリ機は右腕のショルダー・アーマーも赤く塗装されているが、どうやらレッド・ウルフ隊ではスパイク・アーマーのみ部隊共通で、その他に一箇所好みの場所をそれぞれ赤く塗装していたようである。なかなかお洒落な部隊である。
 ショルダー・アーマーにはクロー状の突起が備わっており、どうやらこれを打突武器として使用したようである。またクローの間にバルカン砲らしきものが3門みられ、攻防一体型の兵装として大幅にアップグレードされている。他に見かけない仕様でありレッド・ウルフ隊独自のものと思われるが、盾を右腕に固定しているザクの矛盾をうまく回収しており、なかなか胸熱である。全ザクに標準装備して欲しい。

ショルダー・アーマーにはレッド・ウルフ隊の部隊章。

 他の兵装はオリジナルのザクⅡを踏襲しており、所謂ザク・マシンガンとヒート・ホーク。こちらもデザインは若干リファインされている。また左脚には3連装ミサイル・ポッドも装備。

ザク・マシンガンはドラム・マガジンがやや右にオフセットされているZMP-50D。
3連装ミサイル・ポッドはやや小振りになっている。

 ところで、この『復讐のレクイエム』、ガンダムが怖いとかザクが弱過ぎる(ガンダムが強過ぎる)とか言われているが、視聴しながら「どこかでこの感じあったな」と思い出したのがPS2のゲーム『機動戦士ジオニック・フロント 機動戦士ガンダム0079』。このゲームはリアルタイム戦術シミュレーションと謳っていて、一応自分でザク等を操縦するのだが、アクションゲームのような快適な追随性がなく、僚機にうまく指示を出しながら連携しないとミッションをクリアできない。かなり難度の高いゲームではあったが、ガンダムゲーの中でも際立ってミリタリー色が強く、『ギレンの野望』に次ぐ作品と今でも思っている。
 で、これに登場するガンダムがバカ強いのである。ザクのモノアイでは到底追随できない速度で機動して、ザクマシンガンの弾丸は全くダメージを与えられず、ビームライフルが掠っただけでこちらは大破。基本的にガンダムと遭遇すると何が何だか分からない内に小隊全滅、これが連邦の白い悪魔かと震えた恐怖が『復讐のレクイエム』を観ると蘇るのである。ちなみに『ジオニック・フロント』ではガンタンクもかなり強く、装甲面ではガンダム同様マシンガン程度は通用せず、キャノン砲の火線に入るとやはり一撃で撃破される。
 一年戦争を戦ったザク乗りのリアルを描く点で、『復讐』の制作者は絶対『ジオニック・フロント』を参照していると思う。そして『機動戦士ガンダム』の真の主役は、いつの時代も知恵と勇気とジオン魂でガンダムに挑み続けるザク乗りであることをよく理解している。あぁジオニズムは国境も時代も超えて、いまも広がっていくんだなぁ。

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