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MS-07H8(グフ・フライトタイプ)

 7月のMS第2弾は #グフ・フライトタイプ

 地球降下作戦の開始以降、公国軍は戦線の拡大に伴って重力下におけるMSの移動に苦慮することとなる。
 戦略輸送についてはガウ攻撃空母やファットアンクル等の空中輸送、潜水艦隊による海中輸送、サムソン・トレーラーや列車による陸上輸送など、各種のロジスティックの確保に努めたが、こと作戦展開の局面では広大な戦域において虎の子であるMSを効果的に運用するためにはMS自身の移動力に頼らざるを得ず、二足歩行という移動方法は展開速度の面でも機体への負荷という点でも課題が多かったと考えられる。07H型はMSによる単独飛行を実現することによって、この問題を解決すべく開発が進められた機体群である。

飛行試験型の8号機にして唯一の成功例

 1〜4号機は飛行試験型としてYMS-07Aグフ(先行量産型)若しくはYMS-07Bグフ等の試作機が流用され、サイド3本国で製作された後にアリゾナのフラットネイル空軍基地で試験が進められた。しかしその結果は芳しいものではなく、4号機の空中爆破事故をもって計画は頓挫し、戦闘爆撃機ドダイYSによるSFS(サブフライトシステム)構築に方向転換を余儀なくされた。

かなり力技で飛ばす推力系
臀部にもスラスター

 MS-07H8は型式番号通りH型系統の8号機と思われるが、東南アジア方面ラサ基地で確認され、知られる限り(可変機構なしで)MSの単独飛行に唯一成功した機体であり、グフ・フライトタイプとも呼ばれる。北米での4号機の事故によって頓挫したと思われたH型の開発だが、どういう経緯でかラサで開発が継続され、8号機の成功によって所与の目的を果たしたと言える。
 ラサ基地は軍事拠点というより、ギニアス・サハリン技術少将の監督下で進められていたアプサラス計画の開発拠点であり、相当数の優秀な技術者・開発者を擁していた。4号機で頓挫した飛行技術の開発には、アプサラス計画に従事した技術者による貢献が少なからずあったものと考えられ、恐らくはアプサラスの直衛機として並行して開発が進められたのではないだろうか。

主兵装はB3と同じガトリング・シールド


 ギニアス少将がサイド3から持ち込んだ07H用に再設計されたパーツがMS-07B3 グフ・カスタムにも多数流用されており、両機は形状や兵装に共通点が多い。ラサ基地にはノリス・パッカード大佐の乗機であるB3も配備されており、そもそもB3もここで開発されたものかもしれない。したがって07H8型の兵装も、ガトリング・シールド、3連装35㎜ガトリング砲、ヒート・サーベルなどがB3とおなじものが採用されているが、ヒート・ワイヤーは外されているようである。

ヴァイス・ローゼとの2ショット


 コロニー国家であるジオン公国には空力学的な技術の蓄積が乏しい面があり、ガウ攻撃空母やドップ、ファットアンクルなどの航空機はいずれも空力特性が悪く、推力の相当な部分を揚力に充てて無理矢理飛ばすような設計が多い。
 07H8も脚部のスカート内部に大型の熱核ジェットエンジンが配され、かなりの力技で揚力を得ているのが分かる。ランドセルと臀部のスラスター、左右の脚に各2機配されたジェットエンジンで推進力を得ていたと考えられ、総推力は108,400kgに及びグフの2.6倍以上、ドムと比べても1.8倍以上を叩き出しているが、そもそも人型をした70tを越える重機を飛ばすという設計思想自体が空力学的には無理筋と言わざるを得ない。このバランスで戦闘機動を空中で行うのは困難だったろうし、稼働時間もそう長くはなかったのではないだろうか。

リアルタイプカラーとの2ショット


 07H8型の実機はアプサラスⅢの直衛として2機が確認されているが、ラサ基地が連邦軍極東方面軍の大攻勢に晒された際、脱出するザンジバル級機動巡洋艦ケルゲレンに随伴し共に撃墜されている。MSの単独飛行に成功したという点では開発史上の画期を示す同機だったが、その技術的知見はMS-09 ドムの熱核ホバージェット推進の開発に活かされたようである。MSの単独飛行による移動というアイデアは実用化に至らなかったが、ホバー走行による速度や航続距離の向上という別のソリューションを見出すことができたと言える。

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