見出し画像

MS-06J 陸戦型ザクⅡ【ホワイト・オーガ】

 欧州方面軍で“白鬼(ホワイト・オーガ)”の異名をとったエルマー・スネル大尉の乗機。わりと珍しい陸戦型ザクⅡのカスタム機です。
 J型は汎用機のF型またはC型からの改修機で、地上戦での稼働効率を高めるために宇宙空間用の装備をオミットして空冷式の冷却機構や防塵処理を施した機体。ロールアウトは開戦前年の9月ですが、地球降下作戦以降、順次前線に投入され、従来機からの現地改修も多い。C型からの改修機はJC型と呼ばれる場合もあるらしいですが、あまり区別されている印象はありません。

第1次地球降下作戦ではまだF型が主力だったので、
降下後にJ型に現地改修されたのかも。

 主な改修点は冷却・排熱機構だったらしく、従来機と外観上に大きな変化はなく、所謂AMBAC機動を行う宇宙空間と比べて、地上での機動は二足歩行が主と考えられたために推進系を見直し、バックパックのスラスターノズルが小型化されていて、目立たないですが脚部のサブスラスターや足裏のメインスラスターもオミットされています。

従来機のF型やC型に比べると
スラスター・ノズルが小型化されている。

 全体としてデッドウェイトを廃したしたことで、F型の本体重量56.2tに対してJ型49.9tと、約12%程度の軽量化に成功、余剰のペイロードは脚部に増設されたハードポイントに装備するオプション兵装に回しています。

追加兵装の3連装ミサイル・ポッド。

 パイロットのエルマー・スネル大尉については情報が少ないのですが、(多分)第1次地球降下作戦で第1地上機動師団とともに地球に降り、欧州方面軍に属していたと思われます。どうやらジオン軍人には珍しい、月面生まれのルナリアンだったようです。
 7月時点では当時欧州方面で活動していたノイエン・ビッター大佐麾下のMS大隊に所属、26日の連邦軍攻勢への反攻、所謂“ビッター・ターン”に従軍する途中、機体不良を理由に脱落し、連邦軍のハーマン・ヤンデル中尉の第301戦車中隊第1小隊と交戦し戦死しています。ヤンデル小隊とは以前にも交戦していて、そのときの戦傷で片脚を失っていたらしく、仇敵の匂いを嗅ぎつけたということでしょうか。連邦軍がMSを本格的に投入する以前に戦死したため、MSとの交戦経験はなく専ら61式戦車が主要な実績で、大戦末期まで活躍したエース・パイロットたちに比べるとやや地味でしょうか。

ヒート・ホークのホルダーと一体化した予備弾倉ケース。他では見かけないので特注品かも。

 白系の機体色というと、“白狼”シン・マツナガ大尉や、エリック・マンスフィールド中佐のR型が思い出されますが、J型のカスタム機は他にあまり見かけませんね。とりわけ目を惹くのが頭部とシールドに描かれた蜥蜴のエンブレムで、白いカラーリングと相まってザクのカスタム機でも屈指のゲキ渋さで好きな機体です。

蜥蜴のエンブレムがゲキ渋。

 エンブレムには“441”のナンバリングもみえますが、(多分)“44”が部隊番号、“1”が機番を示すと思われます。大尉という階級は中隊長クラスですが、公国軍は階級と職務の一致にあまり拘泥しない傾向があり、番号の大きさからすると(多分)欧州方面軍第44MS小隊のような小隊番号ではないかと思います。劇中の台詞などを聞く限りかなりの病み系な印象を受けるので、パイロットとして腕は確かだけど指揮官としてはちょっと…というタイプだったかもしれません。
 全くの余談として、『機動戦士ガンダム MS IGLOO2 重力戦線』には“44”という数字の並びが度々現れます。連邦軍の“陸戦強襲型ガンタンクRT-440”や“独立混成第44旅団”といった具合に。この作品では兵士が幻視する女性の死神が戦争のメタファーとして登場するので、もしかしたら“44”は“死ね死ね”の暗喩なのかなと思ったりもします。想像です。

いいなと思ったら応援しよう!