百貨店社員の頃 犬その二
羽裏をお得意様へ持参して、代金を
頂くべく領収書を差し出しました。
「まあ京都まで行ってくれたの!」
{いえいえ博物館の催しも、見たかったので。
それも兼ねまして・・・}こうお返事しました。
するとお客様は「大川さん、優しい嘘が得意ね」
と新幹線代に食事代金を足しても、余る金額を
下さいました。
更には紋付も、当店で承る事になりました。
{お願いがございます。額裏を探すにあたり
京都の帯屋さんが協力してくれました。どうぞ
紋付用の帯は、そちらに注文して下さいませ}
素晴らしい帯を誂えて下さり、私も顔が立ちました。
後年、その坊ちゃんの結婚式で「この羽織の裏、
大川さんが京都で見つけてくれたんだよね」
お忘れなく暖かいお言葉を頂きました。
その後もお客様のご要望で、色々な物を探しに
京都へ参りました。これは誠に楽しい旅でした。