12月31日
古い随筆から・・
大晦日夜9時まで働いて居たと言うと、
一体どんな仕事かと思われるでしょう。
デパート勤務の頃は、毎年恒例の事でした。
新年初めの催し物を、担当していたからです。
31日午後6時閉店それから準備開始です。
しかしそこは全員早く帰りたい気持ちで動く
ので、いつもより迅速に作業は進みます。
やっと品物の陳列を終え電車に乗ると、気の
早い若者が初詣に行くのに出会いました。
ある年ディズニーランドで、年越しをしました。
未だ予約制でなく、早朝からチケットを売り出す
ので、一番電車で駆け付けました。ここですでに
大変な行列で、夜の混雑が思われました。
海からの風がそれは冷たい筈なのに、誰も彼も
笑顔でした。12時少し前にシンデレラ城の前に、
入場者すべてが集合!あと20秒から、カウントダウン
の始まりです。鐘の音・花火と共に年が明け、それ
ぞれが手にしたペンライトをかざします。
誰彼となく「おめでとう」と言葉をかけ合い、微笑みを
交わしました。
ローマに住んで居た時、有名な終着駅近くの日本人宅へ
集合してパーティ。0時と共にベランダから花火を
打ち上げます。すると入線して来る列車からも、花火が
打ち返されました。国旗を振る人・何語か分からない
叫びも聞こえました。我々のシャンペンの瓶が、空に
なっても騒ぎは朝まで続きました。
近年の大みそかは好きな音楽を聴き、一年間の日記
を読み返します。あの時こうすれば・・・などと、
反省ばかりです。11時を過ぎると茶室に火を入れ、
茶の湯の準備をします。車の音さえ聞こえない、静かな
中かすかに鐘の音が聞こえます。炭火の弾ける音と、
湯の沸き立つ音だけの世界です。一年に一度だけ、
自分自身で御茶を楽しむ貴重な時間は、こうして静かに
過ぎて行きました。