Urara
島へのはじめの一歩は、フェリーから降りた瞬間だから、地面がゆらゆらゆれているように感じた。 まずは、新居へ。 3階建ての一軒家に、贅沢にも一人暮らし。2世帯住宅だったと思われる1階には、畳の部屋と小さなキッチン、お風呂と洗面台。2階には、リビングと大きなキッチン。3階は畳の部屋が2つ。3階からは、キラキラの海が見える。夜は、本土の街の夜景がきっと綺麗だろうと想像がつく。 長いこと誰も住んでいなかったからか、ちょっと埃っぽいけれど、私が来ると決まって、島の人がみんなで掃除して
#はたらくってなんだろう 午前中は畑に行って、午後はアトリエ。 時々、専門学校の講師やら、町役場から委託されている相談業務やらをする。 大学を卒業してサラリーマンとして勤めていたこともあるけれど、組織に馴染めない私には、苦痛で違和感しかなく職場を転々としてしまった。 30歳前に、独り身の自分には何もないと思って自分の生き方について考え、どうせ何もないのなら、いっそのこと新しい自分になりたいと、前向きに決断したと見せかけた現実逃避で、離島生活を決めた。 島の人と関わ
私のことを誰も知らないところへ行きたかった。私のことを何も知らない人たちのところに行きたかった。 まさに、0からのスタート。私は生まれ変わる、そう決めたのだ。 そう決めたのは、30歳目前で彼氏に振られたから。なんとなく、この人と結婚するんだろうなって勝手に思ってた。喧嘩も増えて、ギスギスしてたのに。お互い、些細なことでイライラし合ってたのに。 友達や同世代の従兄弟たちも、みんな結婚して、独り身なのは私だけ。「30歳なんてまだ若いよ。まだまだこれからだよ。」なんて言葉はう