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金太郎とマルモリと私

私はこのnoteをやっていることをリアルな知り合いの誰にも教えていない。それは単に知り合いが見ていると書きづらいからだ。
夫には文章をnoteという世界で書いているという事を伝えた事はあるが、読んだこともなければ私のアカウントすら知らないし、そもそもnoteを開いたことなどないだろう。この世で本名の私と『うらのさく』という人物が一致するのは私だけということだ。

これを読んでくださっている方からしたら、私はのっぺらぼうのようなものなのだろうか。どんな顔をしているのか想像できないかもしれない。文章の雰囲気で想像するのだろうか。私は顔出しされていない方の顔はどんな顔をされているのか見当もつかない。

ーーー

先日、テレビを見ていると夫が言った。

「えっ、ちょっとめっちゃ似てない?」

さっきまで眠たいと言ってソファに横になって半目になっていたのが信じられないくらい稀に見る興奮した様子だ。「え?」と私はスマホから視線を外しテレビに映る人を見た。そこに映っていたのは鈴木福くんだった。マルマルモリモリの鈴木福くんだ。鈴木福くんは今や立派な高校生に成長していた。彼の成長を見て私も老いるはずだわと、若い子を見て思うそれこそがもう既に老いである。

夫が言うには30代女性の私は男子高校生の鈴木福くんにそこそこ似ているらしい。
別に嫌だとかいう気持ちは全くないし、むしろそんな若い子に似てるなんて言われるのは嬉しい。またまた適当な事を言ってと夫に言おうかと思ったけれど自分でも「あれ、ちょっと似てるかも」なんて思った。ちなみに福くんの妹の夢ちゃんも出ていたのだが夢ちゃんではなく私は福くん寄りらしい。ショートカットの髪型の感じもあるかもと夫の興奮度がここ最近で1番で、わかりやすく言えば宝くじで1万円が当選したくらいの興奮度だ。

そういえば、ここ長いこと「誰かに似ている」なんて言われたことがなかったものだからなんだか新鮮な気持ちだった。

子供の頃、母が不満そうに言っていたのを思い出す。私が幼稚園の頃、同じ幼稚園に通う子のお母さんに言われたらしい。

「高橋克典さんに似てる」

言われた対象はもちろん母ではなく私のことである。幼稚園児の少女がサラリーマン金太郎に似ていたらしい。
高橋克典さんは素敵な方だが母としてはまだ幼稚園の我が子のしかも一応女の子を男性俳優に似ていると言われたのはチクッと来たようで「普通思ってても言うか?」と少々ご立腹だったようだ。

それを少し大きくなってから聞いた私だったが、当時は「サラリーマン金太郎?ふーん」といった感じでそもそも知らないし、調べる術だってなかったものだからなんとも思わなかったのだが、今検索して見てみると私は幼稚園の頃こんなに勇ましい顔をしていたのだろうかと1人静かにウケた。

時が経ち、小学3年生の頃。音楽の授業で音楽室に皆で向かっている時、ある男子に「お前ってサラリーマン金太郎に似てるな」と突然言われた。私は心底驚いた。小学生の私もまだサラリーマン金太郎の要素を持っていたらしい。

そこで「実は私、幼稚園の頃にも言われたことあるらしいんだわ」なんて関西人の血が騒ぎ面白いと思って言った。するとその男子は笑い、そこそこ大きな声でクラス内で言いふらした。私はなぜか一気に恥ずかしくなってしまって、気づけば涙を流していた。確かに自分から言い出したが他の子たちに言うなんてと小学生の頃に限り明るい子で通ってた私も心の奥底に秘めたる恥ずかしがり屋な性格は隠しきれず私は顔が真っ赤になり泣いた。私が泣いたことによってその男の子は先生に怒られた。ごめん。

似ている芸能人の話をすると真っ先にこのサラリーマン金太郎エピソードが思い出されるようになった。

しかし、それ以降誰に似ているとか言われたこともなく穏やかな日々を過ごしていたのだが、十数年ぶりに夫にそんな事を言われたのだった。

たまに「誰に似てるって言われた事ある?」なんて会話をした時に、「私はあんまり言われないかな」なんてサラリーマン金太郎の過去は蓋をして生きてきた。
今改めて振り返ってこれからはサラリーマン金太郎風の鈴木福くんって答えようかと2人のように一重瞼の私は思う。

それにしても女性芸能人の名前を挙げられたことのない私って...。


街でサラリーマン金太郎風の鈴木福くんに似た30代女性を見かけたら、それはもしかしたら私かもしれない。

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