Ryuichi Taniguchi

書評家、サッカー観戦家、出没家、ウェブ日記家、ほかもろもろ実行中。ライター仕事、就職先など募集中。

Ryuichi Taniguchi

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マガジン

  • 積ん読パラダイス in note

    1996年から続く書評サイトをnote向けマガジンにしてみました。ライトノベルとSF多め、漫画も多々。

最近の記事

田中敦子さんを悼む

【悲しいけれど声は残った。ネットにアクセスして田中敦子さんに会に行こう】  声優の田中敦子さんが亡くなった。子息で声優の田中光さんが8月20日に報告。1年ほどの闘病を経てのことだが、世間にはまったく急の知らせで、61歳という若さともあいまって驚きの声があがっている。田中敦子さんとはどのような声優だったのか。  やはり広く知られているのは、士郎正宗の漫画『攻殻機動隊』のアニメーションで主人公の草薙素子を演じていたことだろう。1995年に押井守監督が劇場アニメ『GHOST I

    • 映画『数分間のエールを』レビュー

      【生き方を迷っている人たちに贈られるエール】  頑張れば夢がかなうとは限らない。才能があれば成功できる訳でもない。努力しても努力してもたどりつけない場所はあるし、どれだけすぐれた能力でも求められていなければ発揮しても意味がない。  世界はことほどさように残酷だ。その残酷さに人は夢を諦め、才能を捨てて違う道を歩み始める。それが人によっては新しい夢へとつながる道になっているかもしれないし、別の才能を求められて発揮できる場所へと導いてくれるかもしれない。  そういうことがある

      • 中心なき宇宙を泡のように漂い続ける〈ブギーポップ〉の物語たち 「ユリイカ2019年4月号 特集=上遠野浩平」寄稿

         漂っていた泡に触れた。そんな出会いだった。    1998年2月にライトノベルレーベルの電撃文庫から刊行された上遠野浩平の『ブギーポップは笑わない』を、すぐに手にとって読んだという記憶がない。1996年2月から書き続けているウエブ日記を見返してみても、『ブギーポップは笑わない』を買って読んだという記述がない。電撃文庫の存在はすでに知っていて、『ブギーポップは笑わない』が大賞となった第4回電撃小説大賞で金賞となり、同時に発売された橋本紡の『猫目狩り』は読んだ記憶がある。『ブギ

        • 映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』レビュー

          【鬼太郎が生まれる前に目玉おやじは何をしていたのか】  PG12だからといって『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を子供に見せちゃいかんだろ、っていうのがファーストインプレッションで、舞台挨拶付きということもあって会場に割と多かった子供がこの映画を見て、血しぶきにあふれかえった映像からどんな衝撃を受けたかがとても気になった。  とはいえ以前に北久保弘之監督の『BLOOD THE LAST VANPIRE』が久々に劇場上映された際に、子供を連れてきていた親がいて、映画の途中からギャン

        マガジン

        • 積ん読パラダイス in note
          7本

        記事

          舞台『言の葉の庭~The Garden of Words~』レビュー

          【映画よりも奥深く描かれた登場人物たちとの関係から強く浮かんだタカオとユキノの出会いの意味】  ぴあスペシャルデーで購入してあった舞台『言の葉の庭~The Garden of Words~』をステラボールの2列目で見る。舞台に向かって上手側。真ん前にOHPが設置してあって、何に使うのかと思ったらそこに張られた水に絵の具を垂らしたもの舞台の背景に投影して揺らぎを見せたり、タカオが描く靴のスケッチを大映しにして観客席から見られるようにしたりといった使われ方をしていた。  舞台

          舞台『言の葉の庭~The Garden of Words~』レビュー

          映画『メカバース:少年とロボット』レビュー

          【『ガンヘッド』で『トップをねらえ!』で『パシフィック・リム』で『バンブルビー』なシンガポールのロボット映画】  なぜか平日の午後に舞台挨拶付き上映があったシンガポールのロボット映画『メカバース :少年とロボット』は、CGを使ってロボットを描写しつつ描くのは地球の水資源を求めて攻めてきた木星蜥蜴、ではなく火星の後継者でもない火星に拠点を置く敵対勢力で、それを地球では戦闘メカやら何やらを駆使して撃退しようと戦っている、そのメカの中に時折ガンヘッドめいた形態にもなったりする二足

          映画『メカバース:少年とロボット』レビュー

          映画『君たちはどう生きるか』レビュー

          【破滅へと向かう世界から少年は小さな平穏を願うか焼け跡からの再生を望むか】  宮崎駿監督の10年ぶりとなる長編アニメーション『君たちはどう生きるか』を観た。事前の予想通りに、全体の流れはやはりジョン・コナリーの児童文学『失われたものたちの本』(創元推理文庫)を踏襲していた。母親を亡くした少年デイヴィッドが父親と共に再婚相手の屋敷を訪ね、そこで失踪した大叔父が残した書庫を見つける。そしてドイツ軍の飛行機の墜落に巻き込まれた中でデイヴィッドは異世界へと飛び、木こりに助けられ、ロ

          映画『君たちはどう生きるか』レビュー

          映画『雨を告げる漂流団地』レビュー

          【まさに子供の喧嘩を見せられて試される子供心】  まさに子供の喧嘩である以上、まるで子供の喧嘩だと言うのは何の例えにもならないけれど、そんな子供の喧嘩を見せられて、子供の喧嘩なのだからとその心情に寄り添ってあげられる人には、どうしてあげるのが良いのかを考える機会になるだろうし、そうではなくて、子供の喧嘩の非論理性に苛々だけが募る人には、どうして何もしてあげようとしないのかと、物語の作り手に苛立ちを覚えるだろう。  石田祐康監督のアニメーション映画『雨を告げる漂流団地』は、

          映画『雨を告げる漂流団地』レビュー

          映画『夏へのトンネル、さよならの出口』レビュー

          【過去に溺れて知る未来を生きる大切さ】  八目迷のライトノベルを原作にしたアニメーション映画『夏へのトンネル、さよならの出口』を2度見て、やっぱりこの映画が大好きだと分かった。  クライマックスに近い部分、届かなかった時間を取り戻したかのような場所にいつまでも留まっていたいと思いながらも、新しく得られた出会いのかけがえの無さを改めて思い知って、停滞を乗り越えて前へと進み始める場面からあふれ出る未来に生きる大切さが、否応なしに進んでいく時間の中を否応なく進まざるを得ない身に

          映画『夏へのトンネル、さよならの出口』レビュー

          漫画『ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ』レビュー

          【ロカのファドが聞こえてくる】  ファドを知らなかった。どこかで聞いたことがあったかもしれないけれど、意識して聞いたという記憶はなかった。シャンソンだったら感じは分かるしカンツォーネだったらなおのことどんな感じか思い浮かぶのに、ファドだとまるで浮かばなかったのは、それをファドだと語ってくれる人が周りにあまりいなかったからだ。  これからは違う。ファドはポルトガルを発祥とする民族歌謡で、そして悲しみや慈しみといった感情が乗った歌声が響き渡って、心を振るわせてくるものだという

          漫画『ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ』レビュー

          映画『今夜、世界からこの恋が消えても』レビュー

          【記憶が失われても記録が消されても思いは残る、永遠に】  記憶が失われても、どこかに記録は残っている。記録が消されても、誰かの記憶には刻み込まれている。あったことはなかったことにはできないし、いたことはいなかったことにできないのだということを知って、今日もまた生きていこうと思わされる映画がある。  三木孝浩監督の『今夜、世界からこの恋が消えたとしても』だ。  交通事故に遭ってから、以後の毎日の記憶を翌日に持ち越せない日野真織という少女がいて、そんな真織のことを知らないま

          映画『今夜、世界からこの恋が消えても』レビュー

          映画『ビリーバーズ』レビュー

          【右と左とであれほど形は違うものなのか?】  思ったのは、右と左とでは大きさが違うのだな、ということだ。  お椀のようで、手の中に収めるとようど良さそうな大きさと形をした右と比べて、左はやや大きい上に下がり気味。これをひとつのサイズとして捉えて良いものなのか、ひとつのサイズのカップに収まるものなのかと疑問に思った。  山本直樹の漫画を原作に城定秀夫監督が撮った映画『ビリーバーズ』の中、北村優衣が演じた副議長と呼ばれる女のそれは、立って真正面から見れば左右で大きさがちがっ

          映画『ビリーバーズ』レビュー

          映画『ゆるキャン△』レビュー

          【山梨から富士を見たくなる】  名古屋が出てくる名古屋映画なので存在としてすこぶる正しい。同時に山梨映画でもあって、山梨で見る富士山の正しさを描いて静岡県民を刺激しているのではないかとも想像する。キャンプ場から見る元旦のダイヤモンドの美しさにかなう富士山はあるか? 静岡県民の意見を聞いてみたいところだ。  原作については漫画を数巻を読んだくらいでアニメもほとんど見ておらず、時々『ヤマノススメ』と混同してしまいそうなところもあったりするものの、今回の映画は映画として独立して

          映画『ゆるキャン△』レビュー

          映画『映画ざんねんないきもの辞典』

          【ウチヤマユウジの脱力ペンギン劇場に笑い由水桂のフラットな絵に驚く】  生き物が生きるためにとっている様々な習性が、人間の目から奇異に映るからといってそれを残念と言ってしまうことにあまり賛成はできないので、書籍としての『ざんねんあいきもの辞典』は読んで来なかったし手にも取ってこなかった。ただ、動物の不思議な習性を楽しいストーリーに載せて教えてくれるエンターテイメントとして理解することで、楽しむことはできるとは思っている。  だから、『ざんねんないきもの辞典』を原作にしたア

          映画『映画ざんねんないきもの辞典』

          映画『東京2020オリンピック SIDE:B』レビュー

          【B面とは東京オリンピックを見て撮り切って歌った河瀬直美総監督だ】  A面が選手なら、B面は裏方だというのが普通一般の考え方だとしたら、クリエイターの思考はそれを軽々と超越し、易々と裏切ってとてつもないところへと着地させる。  2021年に行われた東京オリンピックを公式に記録した河瀬直美総監督によるドキュメンタリー映画『東京2020オリンピック SIDE:B』のことだ。  いや、ドキュメンタリー映画とこの作品を定義すること自体が、普通一般の考えに囚われていることかもしれ

          映画『東京2020オリンピック SIDE:B』レビュー

          映画『東京2020オリンピック SIDE:A』レビュー

          【何かに沿わせず何にも阿らない東京オリンピックの姿】  あの夏、何か大きなものが傍らを通り過ぎていった。  新聞を読まず、テレビも観ず、ネットからしか情報を得ない暮らしで、何だったのかがよく分からなかったそれは、ひとつひとつが自分はどこに向かっているのかを思って、歩き続けてきた道の集まりだった。  河瀬直美監督による映画『東京2020オリンピック SIDE:A』を観て、分かった。  柔道。女子バスケットボール。ソフトボール。スケートボード。サーフィン。陸上女子200メ

          映画『東京2020オリンピック SIDE:A』レビュー