【競馬】初心者のための2021年上半期の競馬まとめ 前編
みなさん、競馬にどのくらい賭けてます?
今年はウマ娘効果で競馬を観る層がかなり変わりましたね。
僕自身、子供の頃に競馬は何度も見ていたものの(テレビで)、のめり込んだのは今年に入ってから。
現行の競馬の事前知識としては「アーモンドアイがめっちゃ強い」と「2020年の競馬がめちゃくちゃアツかった」と「友達がブラストワンピースの有馬記念で儲けた」と「友達はシャケトラ推し」くらいしかありませんでした。
ウマ娘も友達に引くほど推されたからリリースから10分くらいでログインできました。あいつがいなかったらと思うと(略)
そんな僕も無事競馬沼にハマり、必死に猛勉強中です。昔の競馬に関しては間違いなく当時やってた人の方が詳しいですが、今の知識なら負けないと思います。(何の話これ)
そんな事はさておき、今年の競馬です。
上半期を振り返って思うことは、
「今年から競馬を見始めた人は本当に運が良かった」
というのも、完全に「時代が変わった」からです。
時代の変わり目を実感するため、昨年までの流れを押さえておきましょう。
当時、時代を作っていたのはクラシック18世代。
史上最強牝馬アーモンドアイ。
アーモンドアイに1度も勝てなかったのにGI4勝もした怪物牝馬ラッキーライラック。
GI3勝のスーパーステイヤー、フィエールマン。
芦毛の牝馬マイラー、ノームコア。
こいつらだけでGIタイトルを荒らしに荒らしまくっていました。
ほとんどの馬は勝ち目なく、辛うじて抵抗できていた馬がこの馬たち。
最強牝馬マイラー、グランアレグリア。
ノームコアの妹にして春秋GP、クロノジェネシス。
3歳で香港GIを制したマイラー、アドマイヤマーズ。
で、今年は前述の18世代の名馬が揃って引退し、アドマイヤマーズも早熟馬だったので引退。こうして九冠馬時代は幕を下ろしたのです。
予見されたのは新世代の台頭。
これからの時代を作っていくのは、20世代だと思われていました。
父ディープの意志を継ぐ無敗三冠馬、コントレイル。
史上初の無敗三冠牝馬、デアリングタクト。
皐月賞、ダービー2着のGI馬、サリオス。
菊花賞で僅差2着、アリストテレス。
グランに次ぐ名牝馬マイラー候補、レシステンシア。
見るからに強そうなメンツ。
しかし、年が明けてみると、待っていたのは意外な結末で…
高松宮記念
春のGI緒戦、高松宮記念。
早速訪れた新世代と旧世代の決戦のレース。
短距離路線はスピード勝負のため、全盛期を過ぎた馬達は世代交代の波に呆気なく飲まれていきます。そのため、基本的に若い馬が人気になります。
1番人気は20世代の4歳牝馬レシステンシア。
2、3番人気は18世代の6歳牡馬ダノンスマッシュ、インディチャンプ。
ダノンスマッシュは史上最強短距離馬ロードカナロアの子で、昨年の香港スプリントではカナロア以来7年ぶり2頭目の日本馬1着。しかし、日本では未だGI未勝利。ここが2番人気になった原因だと思います。
インディチャンプは19年のマイルGIを春秋制覇。この2頭だけでわかる18世代の壊れっぷり。でもここ1年勝ち星から遠ざかっており、スプリント界進出も今年に入ってからということで様子見の3番人気。
レシスはデアリングタクトの桜花賞で2着、高松宮の前哨戦、阪急杯でインディチャンプに勝ってることから1番人気。前の月に同世代のアリストテレスがAJCC(GII)に勝ってたことも、「この世代強いんじゃね?」と人気を後押しした要因だと思います。
結果は…
そりゃダノンよ。だって香港スプリント勝ってるんだもの。ロードカナロアの子だもの。
でもレシステンシアも不利な外枠なのに奮戦して2着。やっぱり強かった。
しかも、レシステンシアには明確な欠点が。
不正駈歩といって、通常の馬の走り方と違い前脚と後脚で違う脚を前に出してしまうクセ(たまにだけど)。
これは3着だったインディチャンプにも昔は見受けられていたことで、多分いつか直る、と思う。
それが直ったらさらに強くなるだろうし、20世代やっぱ強いじゃんと言われておりました。
ドバイシーマクラシック🇦🇪
で、その間に前世代の古馬たちもがんばる。
日本の馬は日本だけで走ってると思ってる人!大間違いですよその認識は!
日本に古馬王道GIは6つしかないため、海外でも勝てそうな馬は無論海外へ向かいます。それも結構な数。
3月に行われたのはアジアの芝中長距離GIの中でもトップクラスに格式高いレース、ドバイシーマクラシック。(芝2400m)
ドバイでは賭け事禁止のため馬券は発売されませんでしたが、日本ではクロノジェネシスが単勝1.9倍の圧倒的1倍人気。
穴馬的な人気だったのがミシュリフ。
イギリスダービー馬で、なんと前走はダートのサウジカップで1着。そう、ダート編で紹介したアレで1着だったのです。まさに外国版アグネスデジタル。
赤の十字の勝負服がサンデーレーシング所属のクロノジェネシス、ゲーミングPCみたいな色合いの緑のやつがDMMドリームクラブ所属のラヴズオンリーユー。そして地味めなのがミシュリフ。
最後の直線で日本馬2頭とミシュリフが激しい競り合い。ラヴズがやや後退するもクロノは最後まで食らいつく。しかしそこはダービー馬の意地。ミシュリフがクビ差で見事に勝利しました。
当時は日本馬が勝てなくてがっかりムードだったものの、後のこの2頭の活躍とミシュリフの善戦っぷりから、 いかにこのレースがやばかったかということが分かってきます。
金鯱賞
名前かっこいいGIIランキング第1位でおなじみ金鯱賞。大阪杯トライアルのレースですが、今年は様子が変でした。
なんとGI馬が4頭も出走。しかもその内3頭は大阪杯には出走しないというのです。
理由は簡単。大阪杯にはコントレイルが出るから。
無敗三冠でアーモンドアイに肉薄した馬に誰も勝てるとは思っておらず、同じく無敗三冠のデアリングタクトや春秋GPホースのクロノジェネシスも海外に逃げることに。
金鯱賞には海外遠征組のデアリングタクト、グローリーヴェイズ、キセキが出走し、遠征のための最終チェックを行う、そんな雰囲気でした。
もちろん上位人気は上記3頭。タクトは単勝1.4倍と圧倒的な支持率。さすがは初の無敗三冠牝馬です。
しかし…
レース終盤、松山弘平の右ムチが入る。しかしデアリングタクトは反応が鈍い。必死に追いすがるもなんと届かず。
まさかまさかのギベオン逃げ切り。中京競馬場だけでなくほぼリアタイで見てた僕もざわめきました。
ここからギベオンは覚醒するかと思いきや次走からは全く勝てず。ただただタクトが「ギベオンに負けた馬」のレッテルを貼られることになっただけのレースとなりました。
クイーンエリザベス2世カップ🇭🇰
という訳で、金鯱賞2〜5着馬は仲良く香港へ。
ドバイSC3着のラヴズオンリーユーも合流し、日本馬は4頭。
メンツのいかつさに香港勢は怯え大多数が出走見送り。日本の馬4頭(全てGI馬)VS香港馬3頭(GI馬2頭)。
開催地が逆にアウェーになるよくわからない展開に。
不安材料を抱えながらもタクトは1番人気。
あくまで金鯱賞は休み明けですし、本番じゃないですからね。
コロナのため、一旦入国したら2週間は束縛されるシステムになっており、日本の馬は外国人騎手に騎乗依頼するのがほとんどでしたが、ドバイのクロノと今回のタクトは主戦を乗せて行きました。それだけ本気だったということですね。
最終直線、タクトが飛び出します。しかし脚が残っておらず、ラヴズオンリーユーとグローリーヴェイズに差される形に。キセキも追い上げ、上位4頭を日本が独占。実質大阪杯みたいなもんですね。(?)
勝ったのはオークス馬、ラヴズオンリーユー。
秋華賞前にちょっとしたアクシデントで怪我をしてしまい、以降本来の力を発揮し切れずにいたラヴズ。(それでもエリ女2年連続3着)
今年に入ってようやく力を取り戻し、自慢の末脚を炸裂させてくれました。
これで19世代の牝馬三冠路線優勝馬は、3頭ともに古馬GI馬に。
この時点で3頭合わせてGI9勝。アーモンドアイに並びました。
18世代が強すぎて霞んでたものの、19世代も化け物揃いだったということがようやく証明されるレースとなったのです。
本命のタクトは輸送のストレスで体重がガン減り、日本より固めの香港の馬場が合わなかったのか、レース後に屈腱炎が発覚。踏んだり蹴ったりな結果に。
いつも書いてる「競馬史」シリーズでは屈腱炎=引退、絶望みたいな感じのことを書いてますが、時は2021年。時代は変わりました。
まだタクトは4歳。しかも馬主は大手クラブでないため、やろうと思えば6歳時も現役続行できる、ということもあってか、「幹細胞移植」という高額医療に賭けることに。
屈腱炎も月日を経れば治るが、走ればまた再発する。そのリスクを消して、なおかつ早めに復帰させるための治療が幹細胞移植なのだとか。(詳しいことはわからんけど)
ということで、タクトは宝塚記念を回避し、来年に復帰するとのこと。
タクトには輸送は合わなかった。だからといって国内に専念し大阪杯に出ていたからといって、この事件が避けられたとは思えません。どっちに出ても詰んでたと思います。
大阪杯
叩き付けるような雨の中行われた大阪杯。芝は不良馬場に限りなく近い重馬場でした。当日は僕の住んでいる京都も土砂降りで、こんな状態でまともにレース出来るのだろうかと不安に感じたことを覚えています。
1番人気は無敗三冠馬、コントレイル。
今までの三冠馬は馬場状態に左右されない名馬ばかりでした。3歳時より馬体重がめちゃくちゃ増えてるけど、大丈夫だろうと大半の人が考えていたと思います。ただ、主戦の福永祐一騎手は「これ以上体重増えて欲しくない」と以前に仰ってたそうで、どう転ぶか?って感じでした。
2番人気は短距離女王、グランアレグリア。
昨年の短距離GI3連勝で、短距離での勝負付けはもう付いた。よって、距離を延長して2000mでも戦えるようにし、スプリント、マイル、中距離の「3階級のGIを制覇する」という、オグリキャップですら成し遂げていない大偉業に挑戦することにしたのです。
ちなみに藤沢調教師曰く「本人はまだ距離延長することに気付いてないから頑張ってくれると思う」とのこと。またしても何も知らないグランさん。
3番人気は20世代2番手、サリオス。
コントレイルの2着を2度も経験していること、古馬戦(毎日王冠)で勝ってることが評価されたのでしょう。
懸念点はその健康面。事ある事に体調崩すか怪我します。他の馬の比じゃないくらい弱いです。
4番人気は底知れぬ無敗馬、レイパパレ。
実はこの馬、秋華賞に出走する予定でした。
獲得賞金の関係で抽選になり、運悪く除外。
年の瀬のチャレンジカップは楽々勝利していたので、秋華賞に出ていればタクトの最大のライバルになっていたのではと噂になっていた牝馬でした。
最強馬が雌雄を決するのか、はたまた伏兵の登場か。
懸念点はぐっちょぐちょの重馬場。人気通りの結果にはならないだろうと思われてはいましたが…
史上に残る大事件が起きました。
無敗馬レイパパレ、まさかの圧勝。
ここから競馬を見始めた人も多いはず。衝撃は半端ではなかったでしょう。
悠々と逃げるレイパパレに仕掛けるコントレイルと、それに追従するグランアレグリア。しかし馬場状態の影響もあって中々脚が伸びません。
図ったようなタイミングで飛び出してくるモズベッロ。道悪も難なくこなす彼の脚は、あっという間にGI4勝馬2頭を置き去りにしました。
それでもレイパパレには届かず。
内側の馬場が荒れに荒れまくっていたことを見抜いていた川田プロは、失速しないギリギリのラインで外めに出して、内から攻めてきた有力馬達に影も踏ませず勝利。
無敗で古馬GIを制した馬は過去にたった2頭。ファインモーションとクリソベリルだけでした。
それも、ファインはローズSから秋華賞、クリソは兵庫CSからJDDと、3歳限定GIをトライアル含めて制しています。
しかし、パパレはチャレンジカップ(古馬GIII)から間を空けて大阪杯。
古馬重賞を3歳ながら無敗で制し、そのまま古馬GIで勝利した馬なんて過去に例を見ません。
モズベッロに先着を許したコントレイルの評価は地に落ち、20世代最強馬はレイパパレなのではないかと騒がれ始めたのでした。
天皇賞(春)
連覇したフィエールマンが引退し、主役不在となった天皇賞。
しかも今年は京都競馬場が工事中のため、阪神開催。
阪神開催の長距離戦はハードなレースになることで有名でした。
過去には阪神開催の天皇賞でナリタタイシンが激走の後骨折。
阪神大賞典ではナリタブライアンが激走後に股関節炎を発症、オルフェーヴルは唐突にIQ2になり大失速からの復活など、どうもイレギュラーが起きやすいコースなのです。(最後のは置いといて)
阪神開催でいつもと勝手が違うためか、前走の阪神大賞典勝ち馬ディープボンドが無難に1番人気。
騎手の和田竜二はテイエムオペラオー以来GIを1回しか勝てていないため、勝てば20年ぶりの盾制覇かつ3年ぶり9度目のGI制覇。和田さん自体(色んな意味で)大人気ジョッキーのため、期待が高まっていました。
2番人気はコントレイルを菊花賞で追い詰めたアリストテレス、4番人気は牝馬版ナイスネイチャことカレンブーケドール。菊花賞馬が春天を勝つ確率は極めて高いため、ワールドプレミアも僅差の3番人気。
しかしここで、伝説の企画が誕生してしまうのです。
教えて!福永先生。
この展開予想の効果により、福永先生は確変モードに突入。預言者の如くGIレースを進めていきます。
この天皇賞(春)は、「福永先生の『実際にやってみよう』のコーナー」の始まりに過ぎなかったのです…
展開動画の通りに事が進み、福永先生のワールドプレミアがレコードで制覇。ディープボンドはあと少し届かず苦渋を飲む結果に。
そしてカレンブーケドールは3着。牝馬は体質的に短距離の方が向いている馬が圧倒的に多いのですが、ブーケは珍しく天皇賞でも走れる馬。3200mの天皇賞で牝馬が複勝圏内に来たのは1983年以来38年振りのことでした。
桜花賞
伝説はクラシック戦線でも。
芦毛と違い、よほどの突然変異が無いと生まれない白毛馬。
たまたま生まれた白毛牝馬シラユキヒメを大馬主金子さんが買い、20年かけて子孫を育成してきました。
そして、シラユキヒメの子孫に金子さん所有の最強ダート馬クロフネを種付けして生まれたのがソダシ。
フロック視されていた阪神JFでの勝利。
白毛がたまたま2歳GI勝ったって、たかが1勝じゃ強いとは言えないよ〜と、まるでオグリキャップが無双し始めたあの頃のようにおじさん達はのたまうのでした。
無敗でクラシック制覇。レコード勝ち。
ぐうの音も出ない圧巻のレースに、人々は夢を見ました。
「こいつ三冠獲れんじゃね?」
しかし最後の直線、サトノレイナスのえげついスピードで襲いかかってきました。
これより800mも距離が伸びるオークス。今の脚で来られたら勝てないはず。
牝馬路線はソダシvsレイナスの2強対決になっていくと予想されました。
メイケイエールは…うん…
あいつは武さんにしか乗りこなせないただの肉食獣ですから…
オークス
なんと、サトノレイナスがダービーを目指す事が判明。完全にオークスはソダシ1強ムードになりました。
しいて有力馬を挙げるならアカイトリノムスメ。
ソダシ同様金子さんの馬で、牝馬限定GI完全制覇に大手をかけた実力馬、アパパネの子であることから、アパパネ(赤い鳥)の娘と名付けられたこの子。
ソダシの不安要素は距離適性。
父クロフネが2200くらいまでの馬だったため、それをそのまま引き継いでしまっていたら直線で沈むことに。
それでも多くのファンは夢を見て、単勝を握りしめていました。
ソダシは沈み、ユーバーレーベンが栄冠を手にしました。
ソダシに注目していた方はがっかりしたレースかもしれませんが、この一戦には関係者の夢が詰まっていました。
解説が長くなりますが、このオークスに秘められた感動を知ってください。
ユーバーレーベン
今年の3月、競馬界に悲しいニュースが流れました。
岡田総帥こと岡部繁幸氏の逝去。多くの競馬ファンがその死を悼みました。
競馬は血統が何より大事。しかし、血統を無視したとんでもなく強い馬が生まれるのも、また競馬です。
岡田総帥はそういう馬を目利きする才能があり、彼が「走る」と見抜いた馬がアメリカでトリプルティアラ(ダート牝馬三冠)を達成したり、血統があまり良くない自身の持ち馬が14番人気でダービー2着になったりと、他の馬主と違う性質の方だったのです。おそらく全ては大手の社台グループに勝つためでした。
前述の三冠牝馬の名前を拝借し、クラブ法人「ラフィアン」を設立。冠名は「マイネル」。ダービー制覇に向けて尽力されていました。
しかし、中々勝てない。
新人騎手や勝てない騎手に活躍の場を与えたいと、積極的にそういう騎手を重用した影響もあったのでしょう。
有力血統と有力騎手、有力厩舎で殴る社台グループと違い、騎手も中堅しか起用しなかったラフィアン。明暗が別れるのは当然のことでした。
岡田総帥が個人で所有していたコスモバルクという馬がかなり強く、地方競馬活性化のため、北海道に所属したままダービー制覇を目指したものの、騎手の騎乗がアレだったこともあり、国内ではGI未勝利で引退。
そんな調子では種牡馬入りできる馬もおらず、金子さんがディープインパクト、キングカメハメハ、クロフネで時代を作る裏、ラフィアン所属の馬は嫌われ、牝馬用の冠名「マイネ」が付いた馬は問答無用で評価額が下がる、そんな悲惨な現状がありました。
それを知って「マイネ」を付けることをやめ、牝馬には一頭一頭名前を付けてやることになりました。
岡田総帥の体調が悪化していた時のこと、総帥の弟が奇跡を起こします。
弟の岡田牧雄さんは総帥とは別で牧場を所有しており、スマートファルコンなどGI馬も輩出していました。
そんな彼が代表のクラブがノルマンディーサラブレッドレーシング。
クラブ用に1200万円で競り落とした馬。
才能があるのにコネが無いからいい馬に乗せてもらえていない騎手。
そんなコンビが、三本指を秋の京都で突き立てました。
2020年、デアリングタクトと松山弘平。
史上初の無敗牝馬三冠制覇。
「ラフィアン」の名の原点にあった、牝馬三冠。自身が出来なかったことを間近で達成されて、総帥は何を思ったのでしょうか。
新世代のクラシックを垣間見ることは無いまま、総帥は天国へ旅立たれました。
2020年はゴールドシップの初年度産駒が走る年でした。
ゴールドシップはディクタス、ステイゴールド一族の馬であり、一族は圧倒的な瞬発力と加速力を兼ね備えた小さな馬が多かったです。サッカーボーイしかりオルフェーヴルしかり。
しかし、ゴルシは瞬発力はなくスタミナお化け、馬体はめっちゃデカい。いわば突然変異の馬でした。
こういう馬は種牡馬しても人気になれません。なぜなら突然変異的な性質は遺伝するとは限らないから。それはオグリキャップが証明しています。
ですが、岡田総帥はゴルシに夢を見ていました。
ここからは僕の憶測でしかありませんが、少し語らせてください。
岡田総帥が信じた血統。マイネの血脈にゴルシを付けて早2年。ゴルシには似ず黒い馬体となったその牝馬は、重賞を勝つ風格を漂わせていました。
死期を悟っていた総帥は、彼女に名前を付けました。
Überleben.
生き残る。
彼女が競走馬として生き残れるようになのか、自分が死んでも夢を繋げてくれるようになのか、真意は定かではありません。けれど、その名前を見た関係者は「これは勝たせないといけない」と思ったことでしょう。死後はなおさら。
主戦はミルコ・デムーロ。エイシンフラッシュやデュラメンテ、ネオユニヴァースなどでGIを総ナメにしてきた激強ジョッキーでしたが、近年は不調に。
そんな中来た騎乗依頼。きっと彼の中でも特別な思いはあったと思います。
そして、レースの数ヶ月前。ゴルシ初年度産駒のブラックホールが競争能力を喪失。当時ゴルシ産駒で唯一重賞を勝っていた馬だったので、新世代の旗手が居なくなり、こちらにも暗雲が漂っていました。
そんな3つの想いを込めて、レースは動いたのです。
ゴルシを彷彿とさせる追い込み、まくりでの強襲。
ソダシが沈み、アカイトリが食らいつく中、なんとか、なんとかGIを手にしたのでした。
ラフィアンは7年振り、牝馬としては初のGI勝利。ゴルシ産駒もGI初勝利。デムさんも今年GI初勝利。
総帥が亡くなれど、その意思は消えない。
ユーバーレーベンの名前と共に、総帥の遺したものはこれからも記憶に残り続けることでしょう。
(勝利インタビューも載せときます)
目黒記念
そして、日本ダービー後のGII、目黒記念は同じくゴルシ産駒のウインキートスが1着。
ブラックホールと3頭合わせてGI、GII、GIIIをそれぞれ制覇しました。
ブラックホールは2歳の夏にしては長い1800mGIII、他2頭も2400と2500m制覇ということで、ちゃんと親のスタミナが遺伝してますね。
これから先、ゴルシの子供がGIを勝つシーンは、もしかしから結構な数見られるかもしれませんね。(特に春の天皇賞)
まとめ
本当は宝塚記念まで書きたかったんですが、見てくださいよ、右のスクロールバー。ここまでの容量でこんだけ小さくなっちゃってるんですよ。
と言うわけで、皐月賞〜宝塚記念&その他重賞、そして中山グランドジャンプと海外競馬は次回に持ち越しです。どんだけ書こうとしてたんだ。
わずか半年でここまで細かく書けるんだから、そりゃ競馬史シリーズが進まないわけですよ。もっと省いて書かないとと思うほど進みますよね、こういうのって。
後編も近々上げるので、それまではダート編と競馬史シリーズを読んでお待ちください。それでは。
(上げました)
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