論文の構造
こんにちは、URAKOMEです。
近年、科学論文の多くは英語で書かれます。もちろんそれぞれの国の学会で出している雑誌などはその国の言語で書かれることがあります。
科学雑誌は学会や研究機関で発行していたり、出版社で発行していたりと様々です。
科学雑誌には査読という専門家による内容の精査が行われるものとないものがあります。
これらの雑誌に投稿するとき、論文の構造にはルールがあり、決まった形で書かれる必要があります。
書くのはもちろん、論文を読むにもまず、どこに何が書いてあるかを理解することは重要です。
本稿では科学論文がどういった構造になっているかざっくり書いていきます。
今回は、これまで私が取り組んできた医学・生命科学分野の論文について取り上げたいと思います。物理や数学、文系の論文などはまた体裁が異なると思いますのでご了承下さい。
雑誌のauthor's instructionに従うこと
もし論文を書いて投稿したいと考える場合は、必ずauthor's instructionを読んで理解することが大事です。
それは雑誌によって少しずつ構造が異なるからです。
査読してもらうにはまずはルールに従うことが大事です。
ルールに従わなくては土俵にのることはできません。
Title(タイトル・表題)
論文のタイトルです。それぞれの論文で何をやったかを書きます。
どんな文章でもそうですが、タイトルはその文章の顔になります。
どういうタイトルをつけるかで印象もグッと変わります。
どういうタイトルがいいのか?
良いタイトルをつけるためには良い研究テーマを選ぶことが重要です。
では、良い研究テーマとは何か?
イシューを解決することです。
例えば、「〇〇(今までなかった新しい薬など)を開発した」「〇〇(イシュー)は△△△(反応経路など)によって起こる」などでしょうか。
イシューの重要度が高ければ高いほどインパクトも高くなります。
研究テーマについては以前の記事で書いていますのでよければご覧になってください。
Titleの下にAuthor(著者)の名前と所属が並びます。Corresponding author(責任著者)というのは、その論文に責任がある人のことです。
順番をどうするか、というのはまた1つの記事になってしまいますのでまた改めて書きたいと思います。
Abstract(要旨)
要旨という名の通り、その論文の要点をまとめたパートになります。
論文のタイトルの後につくことが多く、ここを読めば内容がわかるものにしなければなりません。
論文の重要性や何をやるのかなどが明確になっていなければうまく書くことはできません。
何をやるかが明確になった研究ほど良い要旨になります。
Introduction(諸論・緒言)
なぜこの研究を行うに至ったかを説明するパートになります。
これまでの研究背景(これまでにどういうことがわかっているか、など)や論文を理解するのに必要な情報を書きます。
そのためには、その分野における自分の研究の立ち位置をキチンと理解していないといけません。
只々重要だとか、面白いと言っても他の人には伝わりません。
なぜ重要なのかについて、マイルストーンとなる先行論文を引用しながらロジックで説明することが重要です。
Pubmedでの論文の探し方については、過去の記事でもものすごくざっくり書いていますのでよければご覧になってください。
Materials and methods(材料と方法)
研究で使用した機器、材料、方法について記載するパートです。
データの収集方法や解析方法、統計解析の手法などについて記載していきます。
イシューをどういった方法論で解決していくのか、妥当で実現可能な方法で明らかにしていきます。
購入した試薬等もカタログ番号等やロット番号などをノートに正確にまとめておくことが大事です。
Results(結果)
研究の結果について記載するパートです。
ここでは結果を述べていくのみで、解釈については記載しません。
〇〇の遺伝子が存在するかを調べるためにPCRを行った。PCRで△△にバンドが検出されたので反応が確認できた。などです。
しばしば結果を示す図(Figure)が入っていますが、その下にFigure legend(capture)が記載されており、そこにFigureの説明が入ります。
Figure legendを読めばその図が何を示しているのかがわかるようにかかれています。
Discussion(考察)
得られた結果の解釈を述べるパートです。
・得られた結果から何が言えるのか?
・何が新しいのか?(これまでの先行研究との差異)
などについて書いていきます。
しかし、意外と忘れがちなのが、
・今回の研究における限界点(今回できなかった課題)
・今回の研究で言えない点
などの点です。1つの論文で言えない部分があります。
実は、教科書に載るような問題解決というのは必ずしも1本の論文で行われるわけではありません。
複数の論文がつながりを持って、多角的に解決していくことが多いです。
このあたりの話は1つの記事になってしまいますので、また改めて書きたいと思います。
Disucussionのパートは、自分の研究がその分野でどういう立ち位置にあるのかをしっかり理解し、今回の論文で何を解決したのかを書きこむ最も重要な部分です。
ここの書き方で論文のアクセプト(受理)されやすさも変わってきます。
References(引用文献)
引用した論文を記載する部分です。
Endnoteなどの文献収集ソフトを使うと整理しやすいです。
各雑誌によって異なるので、Author's instructionをしっかり読むのと、その雑誌の先行論文を確認しておきましょう。
Acknowledgement(謝辞)
実のところ、ここはかなり重要です。
その研究を助けてくれた方々を記載します。また、研究費番号などについてもここに記載します。
近年の生命科学研究は一人でできるものはほとんどなく、複数名で行われます。
研究に参加した人たちはauthor(著者)として名を連ねますが、研究の責任はなくとも実験を手伝ってくれたり、実験をするための下地作りをしてくださったりする方々がいます。
そういう方々にキチンと謝意を示すことは、人として大事なことだと思います。
研究者というのは概して目立ちたがり屋で主張の強い方が多いように思います。
むしろそうでないと生きていけないのかもしれません。
しかし、自分一人で研究はできないのだということをしっかり心に留めておくことは重要だと思います。
研究にはやった人の性格が出ますから、細やかな配慮ができる人は細やかでエレガントな研究をされるのではないでしょうか。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
Merci.