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真・なぜ働いていると本が読めなくなるのか|「花束みたいな恋をした」を通して
「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」という本がある。
通読しても「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」はよくわからず、なぜか「全身全霊で働くのをやめよう」という気持ちになる現代の奇書である。
この本では映画「花束みたいな恋をした」の登場人物である男性「麦くん」
が就職と同時に本を読まなくなる描写を、典型的な現代人の姿として紹介している。
注
麦くん(菅田将暉)はいわゆるサブカル系男子で、読書や映画鑑賞をする習慣があった。イラストレーターとして収入を得ていたものの、薄給かつ不安定であるため「恋人の絹ちゃん(有村架純)とずっと一緒にいるため」と就職する。
仕事は多忙で、彼は休日も勉強したりで時間がない。また、深夜会社で作業し、横になって小休憩する際も「パズドラしかできない」と嘆いている。
素朴に考えると
・働いて疲れているから(頭が回らない・気力が出ない)
・たくさん働くと本を読む時間がなくなるから
などの原因が考えられる。
「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」におけるメインの主張、「全身全霊で働くのをやめよう」は上記のような理由を想定した主張だろう。
ただ、個人的には本当か?と思う。
すこし考えてみたい。
まず、前提として以下をおきたい。
人間は以下の2つが揃った時にのみ、その行動が可能となる。
1「手段(あるいはリソース)」
2「モチベーション(あるいは価値)」
この視線で考えると、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」の著者(三宅 香帆)は「手段とリソースの喪失」のみに注目しているように思う。
つまり、時間がなくなり、体力的精神的余裕がなくなったのである。
もっと言うと、「麦くんは本当は読書をしたい、けどできない」という前提があるように感じる。
ここまで書いて私の主張はもう明確だと思うが、私は麦くんが喪失したのは「モチベーション」なのではないかと思う。
彼は読書を楽しんでいたのか。私はそこから疑っている。
彼は読書(その他カルチャーへの接触)をイキリあるいはマウンティングのためにのみしていたのではないだろうか。
というのが私の解釈だ。
私も含めて男性の多くはマウンティングのために読書をする。
しらないが、女性もやるかもしれないけど、しらない。本当にしらない。
ただ、男はマウンティングのために読書をする。
これは実体験と自虐だ。
上の参考WEBサイトは東北大の元総長が北大の元総長に高校生時代にした読書マウンティングの一例だ。
「おれはこの本読んでるぜ」
「あの漫画も知ってて、この映画も見た」
という歪んだオタクの特権階級意識が麦くんの読書やカルチャー鑑賞を駆動させてたと思う。田舎(新潟)出身の彼はそれが周りの人間と自分を差別化するための数少ない手法だったのではないだろうか。
ではなぜ、就職してから彼は読書をしなくなったのか。
私は「大人のマウンティングは年収や社会的ステータスだから」
を主張したい。
ハイデガーを読んだ年収400万円男性より、特に読書習慣のない年収1000万円男性の方がマウンティングに強い。
特に根拠にもならないが、麦くんは就職を期に前田祐二の「人生の勝算」を読んでいるシーンがある。
麦くんは読書を通じて何かに勝ちたかったのではないか?
サブカル読書に人生の勝算を感じていたのだ。
大学生時代の麦くんの価値観では
カルチャーに精通している=勝者
の図式だったのが、就職をきっかけに
年収が高い=勝者
に変わったことで、本を読む価値を失い、モチベーションは喪失した。
そして、可処分時間は資格勉強やビジネス書に費やした。
牯嶺街少年殺人事件とかいう4時間もある映画に時間を使っている場合ではない。
私はさらなる疑いも持っている。
恋人の絹ちゃんすら勝利の要件の一部としか思ってないのでは?
(トロフィーワイフ的な)
有村架純だから、絶世の美女だからあんな頑張ってたけど、
パッとしない女(トロフィー感のない女性)だったら
「絹ちゃんのため」とか言い出さなかったのではないか?
そこらへんはもうわからない。わかりたくもないけど。
菅田将暉だったら。菅田将暉だったらあるかもしれない。本物のイケメンだったら愛のために自分を押し殺して働くことを選ぶかもしれない。
最後に思考実験をしてみたい。
麦くんは
「年収1000万のイラストレーター」と「年収2000万円の商社マン」
どちらを選ぶだろうか。
有村架純あり・なしそれぞれでお考えください。
さようなら。
メモ
麦くんはどうしたら本を読み続けられただろうか。
アンサーはある。
Twitterで本の感想や解釈について発信すればいい。
「俺はこんなに読解できてるぞ」とイキリ倒せばいい。
そういう奴はいっぱいる。この記事もそうだ。