見出し画像

砂丘の真ん中で、歩くのをやめた【18きっぷ・現実逃避の旅行記-2】

2024年 9月 4日(水)



昨日…東京を出発してひたすら遠くを目指した旅の初日は、京都・福知山のカプセルホテルに飛び込んだところで終わった。

久しぶりの、旅先で迎える朝。いつもの部屋とは違う朝。

うまく眠れた気がしない。気が付いたら朝になっていた。カフェオレを飲んで、なんとか強制的に目を覚ます。

朝ごはんの代わりに、パン屋さんで堅そうなパンを一つだけ買って、鞄に詰める。堅めのパンって、なんか旅っぽいと思った。冒険って感じ。

高架橋の下の暑い道を歩いて、駅に向かう。


城崎温泉行きの電車。
国鉄型の113系、ちょっとテンション上がった。


福知山の市街地を抜けた電車は、どんどん速度を上げる。うす暗い車内にモーター音が響く。

旅って、なんか切ないな。

もう、昨日の町に戻ることもない。一生来ないかもしれない。そう考えると、昨日までは知らない町だったはずなのに、なぜかさみしくなる。

今日もまた、知らない町を目指して進んでいる。

胸がきゅってなるような。よくわからないけれど。



城崎温泉駅。乗り換えに少し時間があった。
温泉入って観光してもよかったけれど、ひとり旅のさみしさに勝てなかった。
こういうところは、だれかと来たい。


キハ47

朱色の気動車に乗り換える。

9月の日差しはやわらかくて、エンジン音も気持ちよくて。時間もゆっくり過ぎていた。


日本海。車窓もゆっくり流れる。


こんなところで、なにしてるんだろうなぁ。わからない。どうすればいいんだろう。

涙が出てきた。

私は、なにがしたいの?

…ふと頭に浮かんできたものは、今の私にはあまりにも重い、現実だった。


すれ違いで止まった駅。
夏を切り取った1シーンみたいだった。


思考停止

自分が、2人いる気がする。

自分のことをだれかに認めてほしい、知ってほしい自分と、それを頑なに拒む自分。

よくわからない。

…そんなことを考えていたら、終点の鳥取駅に着いていた。

ずっと、駅前の百貨店のいすに座っている。

もうなにも考えたくない。
知らない。

からだが、こころが、ぼくがまえにすすむのをこばんでいるきがする。
でも、前に進むのをやめた このままの僕に、なにができるというんだろう。

なにも考えない。ただ時間が過ぎる。


知らない町。少しずつ歩いた。

地図も見ないで、何となく歩く。足が重い。見つけたバス停で、バスに乗った。


砂丘

見わたす限り、青い空と黄色い砂。日本じゃないみたい。

足を踏み入れて、斜面を下ってみる。ただただ広い。下を向いてると、すぐに方向がわからなくなる。

絵葉書みたい。


海岸線まで下りて行った。陽がゆっくり沈んでいた。


このまま波にさらわれれば、楽なのに。たった数メートル進む勇気もない。

疲れた。何もしたくない。どこも行きたくない。

太陽の光が見えなくなった。最終バスの時間が過ぎていった。



暗い砂丘のど真ん中。

懐中電灯も、持ってない。

どっちに進めばいいのかわからない。


鞄を置いて、歩くのをやめた。立つのもやめた。

足が動かない。動きたくない。いっそのこと、このままでいい。
もう諦めればいい。




光がなにもない。星が綺麗に見える。
下向いてると、見えない。




自分以外、だれも乗ってない最終列車


米子行きの最終列車に乗った。


ネットカフェに行ったけれど、寝られなかった。

3時半を過ぎていた。


いいなと思ったら応援しよう!