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SOHOで起業した旅行会社のはなし|11〜楽しくなければ仕事じゃない

人はみんな、自分の仕事を楽しいと思っているだろうか?

旅行業を目指す人は、十中八九「旅」が好きな人だと思っている。そして、「旅」を仕事にしたいと思って旅行業を目指し、旅行業に就いている。

だが、会社の歯車として働いていると、必ずしも希望する仕事に就けていない人も多いかもしれない。

筆者が選んだ、SOHOで旅行会社を運営するということは、自分の会社で自分のやりたい旅行の仕事が出来る仕事のスタイルだ。

いずれ、中途半端な旅行会社は消滅し、巨大旅行会社か、あるいは、小さいけれども他にまねできないことをしている旅行会社だけが残る時代になるだろう。

そのようなことになったとき、生活のために、したくもない仕事をしなければならなくなることを避けるには、どうしたらよいか?

「好き」を仕事にできているか?

20代の時に、中学校の同級生とキャンプに出かけたことがあった。

とりわけ仲が良かった4人で、今でも交流がある友達同志だ。

お互い、やっと仕事にも慣れてきた頃だったので、キャンプファイヤーを囲みながら仕事のことをあれこれ話していた。すると、それぞれの仕事に対する考え方で真っ二つに意見が分かれた。

それは「好きな仕事」をしているか否かだ。

自分ともう一人(歯科技工士、やがて独立した)は、望んでその世界に飛び込み、結果「好きな仕事」をしているつもりだった。

もう2人はサラリーマンだ。そのうち一人は、誰もが知っている大企業に入ることが出来たにもかかわらず、仕事は「生活のため」で、好きでやっているわけではないという。その後も意見は分かれたままだ。

例えば、音楽に目覚めてバンド活動にいそしめば、「音楽で食べていければいいな」と考えるものだ。

だが実際は、そんなに世の中甘くはない。

例え、音楽の仕事に就いたとしても、「仕事」としての音楽と、「趣味」としての音楽が違うことは誰でも知っている。

しかし、旅行は少し事情が違う。

「旅行業」という仕事自体を好きになったら、それは趣味から高じた音楽とは違うものだ。

仕事は人生の手段か目的か

話は変わるが、以前勤めていた会社で、航空業界華やかなりし頃、エールフランスの日本社長を務めた人を、わざわざ会社に迎えたことがあった。

その時筆者は、その会社ではまだ新人で、「業界のレジェンド」ともいえるその社長が講師を務める、週1回の新人教育講座に参加していた。

その講座で、社長が話した言葉の中で、今でも覚えているのは、

「仕事は単なる人生の手段であって、目的であってはならない」

ということだった。

仕事に打ち込みすぎて、人生の大半を仕事漬けにするようなことはするな、と言いたかったのだろう。

それは、生き方において大切なことだとは思うが、今の自分はおそらく、その真逆である。

仕事自体は大変だが、旅行という仕事に生きがいを感じ「仕事=人生」そのものの毎日だ。

今はその社長も亡くなって久しいが、慕っていた社長の言葉の真逆を突き進んでいることに、なんら違和感はない。

楽しくなければ仕事じゃない

どの業界も同じだとは思うが、特に旅行業は、自分が楽しんでいなければ、お客様が楽しめるような旅行を提供できないと思う。

お客様と同じように、様々な旅行を体験し、様々な土地の風、匂い、音、光と影のうつろう様子を五感で感じることが必要だ。

その環境下で、旅をしていることに喜びを感じることが、次の新たな旅行提案のエネルギーとなる。

しかし、旅行会社の歯車の一つとなって、お客様と直接対面することもせず(リアルであれデジタルであれ)、ともすればブラックと言われるような会社で遅くまで残業していては、上述のようなことを感じる機会を持つことが出来ない。

少なくとも、楽しんで仕事をしているだろうか?

「SOHO」は、自分がやりたいと思う仕事をもとに、独立起業して運営していく仕事のスタイルのひとつだ。

少人数性とオフィスにかけるコストを削減することによって、スリムな会社運営が出来る分、やりたい仕事に集中できる。

例えば、旅行企画を目指して業界に入った人であれば、好きなだけ企画を立てることが出来る。それが売上につながるか否かは別として、アイデア次第で会社を伸ばしていくことが出来る。

現在筆者は、経理や総務といった、旅行業以外のことも、全て自分及び少ないスタッフでこなしている。

旅行業だけにどっぷりと浸かっているわけではないが、行っている仕事全てに興味があり、それをできる限り伸ばしていきたいと思っている。

そしてそれは「やりがい」というものだ。

「楽しくなければ仕事じゃない」ということは、この至極単純な「やりがい」を感じるかどうかだ。旅行という、ある種特殊な仕事だけが得られないものではなく、誰にでもその要素を見つけることが出来るはずだ。

そして上述の、一緒にキャンプに出かけた同級生の友達も、「やりがい」さえ見つければ、生活のための仕事ではなくなっただろう。

「旅行業」は特別な業種ではない、サラリーマンやカフェで働く人と同じ「仕事」だ。

注)このはなしは、コロナ禍以前までのこと。世界的パンデミックを経験した今、旅行業の未来はまだ見えない。

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