アタック・オブ・リキシャーク
大きな背鰭が土俵面に現れた。
「出たぞ!!今だ!」
薄茶色の土俵越しに、リキシャークの髷や背が見える。
力士らは真剣な面持ちで網を放った。
「回り込め!そっち回り込め!ああっ……」
リキシャークは網を避け、水中……いや、地中深くへ潜っていった。
「行ったか?」
幕下が、円の中に足を踏み入れる。
土が吹き上がった。
「リキシャークだ!!」
幕下の悲鳴が響く。
(暗転、親方の部屋)
「あれは元の横綱じゃない」
「彼は彼よ。土俵の下から私を見る目は変わってない」
迫る本場所