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故郷にて⑨

 昔のことを思い出すことは、実はあまりない。特に、「いま」に必死になっているときはそうだ。だからごくまれに、気まぐれに昔自分が書いたものを、日記でもnoteでもなんでも、読み返すと、不思議な感動が生まれる。普段は引き出しの奥深くにしまってある記憶がすっと出て来て、あの日の感情が一瞬蘇る。

 「書いて残す」ことの大切さを改めて噛み締める。僕は薄情で、記憶力もそうよくない。いろんなことを、あっさり忘れてしまう。どれだけ大切に思っていても、気づけば思い出すことすら忘れてしまうほど遠くにしまってしまう。「いつか」と思っていたらその「いつか」がなくなってしまうなんてこと、これまでの経験でよく知っているはずなのに。いつか、いつか、と遠くへ押しやって、結果として、二度と手の届かないところに、相手が行ってしまう。

 時々、自分がかつて書いたはずの言葉に、「これを書いたのは本当に自分だろうか」と思うことがある。あるいは、「書いた記憶がある。当時の自分はなんて幼稚で情けなかったのだろう」と思うことがある。それだけ自分が前に進んだ証拠だろうし、その過程で、あったはずの良さを失ってしまったかもしれないと少し恐怖する。

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