大人を喜ばせなくていい学びの時間
日本の大手中学受験予備校が主催の、全国模試トップ30名の小学生がアメリカ有名大学をたずねてまわるというツアーの訪問をうけた。
研究の紹介をしてほしい、とのことだったので、2-3本のモール(pipecleaner) を使ってこの旅のハイライトを表現する、というアクティビティを通して、クリエイティブラーニングを体験し、じっくり議論して、これからの「学び」について考えてもらうという時間を持つことにした。
どっさりもっていったpipeclearnerは一瞬で子どもたちに(先生たちにも)行き渡り、わいわい言いながら5分間の制作時間はあっというまにすぎた。3人組になって自分の作品を紹介しあい、どうやってそれを作ることができたのかという部分をお互いに話し合ってもらった。
自由の女神、ジョン・ハーバード、お互いが話し合っている様子や、抽象像、そしてどうやら私の前にツアーをホストしたらしい友人の顔まで(笑)「そうくるかぁ!」と何度も言ってしまうほど、幅広い作品ができあがった。
すっと形にできちゃう子、何を作るか最後までいったりきたりしていたけれど途中でメタファーを思いつき(話に花が咲いた、ということで花)仕上げた子、他の人に見せたらなんだか伝わらなかったのでやり直したという子、、みんなが気づいたことの中に、すでにクリエイティブラーニングの4つのP(Project, Passion, Peers, Play)があちこちに散りばめられていて、とってもスムーズに伝えることができた。
印象に残ったのは、たくさんの子たちが最も印象に残っていることとして「みんなとの議論」とこのツアーの参加者との対話をあげていたこと。先生によると、普段の生活では周りの子どもと話が合わないと感じていることも多く、ツアー中お互いに話すのが楽しくてしょうがないという子が多いのだという。お互いをサポートする姿勢が、私の目からもとてもはっきりあって、素敵だった。「誰か作品を紹介してください」といったときも、自然に全員他己紹介をしていたのもその表れ。「◯◯のやつが面白い」といって人のを紹介してあげていた。素敵なPeerの姿だった。
引率の先生が8人ほどいらしたのだが、先生方もノリノリでモールづくりに参加してくださり、感想をきかせてくださった。日々バスの時間などをつかって考えを深めている子どもたちを、旅の終わりにどうやってまとめていくかということを話し合っていたそうで、ちょっとモードを変えて手を動かして、という形式が新鮮だったという。一方で、手が止まってしまっていた子もいたので、その子たちをどうやって支えていったらいいかという話もした。普段、アイデアがポンと浮かんでこない子のために、いろいろな事例を用意したり、最初はみんなで最低限できることを一緒にやって、安心できる雰囲気をつくってから、好きなものを作ることに移ったりする。今回は時間がなくて簡略化してしまったけれど、アイデアがでてこない子が出せるきっかけをつくることはとても大切だ。
最近色々な子どもたちと触れていて、彼らがいかにしっかり周りを観察していて、どうすると大人が喜ぶのか、よく理解していることに気付かされる。放っておけば子どもたちは自然とこちらが答えてほしい答えを差し出し、反応してほしい反応を返してくる。いや、もう子どもたちも大人を喜ばせるのに慣れすぎていてもはや意識もしていないかもしれない。教育者の役割は、子どもたちがそこを狙えない、いや、狙わなくていい授業作り、学びの場作りをいかにつくり、ひとりひとりの正直な関心や反応を引き出せるか、というところにあるのではないだろうか。そういう場ができたとき、驚くほどのバラエティと、あっとおどろく自由な発想が子どもたちからどんどん飛び出てくる。
時間が終わった後、何人かが話に来てくれた。「先生の話きいて家に帰ってすぐ作りたいものがいろいろできました。」心からの言葉だったらとてもうれしいな。
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