COVID-19のテニュア前教員への影響
教育学部の学部長がTenure前の教員を集めたミーティングがあった。COVID-19の影響による困難を把握し、的確な支援や調整をするという目的のもので、10人ほどの教員があつまった(厳密にはもう3-4人いる)。
学部長はとても真摯であたたかい人で、一人ひとりが安心していろいろな個人的な事情をシェアしていたのが印象的。私は始めたばかりなのと子どもや家族が近くにいないこと、さらにうちのプログラムはサイズが小さいのとが重なり、幸い誰よりも恵まれた状況にいることを改めて認識したが、一人ひとりがいろいろな苦労に直面していて、テニュア審査の延長や授業サポートの配置など、いろいろな対策が話しあわれた。
授業作業量の増加
COVID-19をうけて大学側が最終課題や成績の提出期限の延長を指示したため、前期の授業の成績づけと今期の授業の運営が重なりほかのことが全くできないという問題がまずでた。また、学生数の多い授業では特に、先生が講義を録画するなどオンライン以降へのコストが高いことが多く悩んでいる先生が結構いた。普段の授業に対する理想を少し下げて、臨機応変にできることをやっていく必要があるということが話された。また、成績づけや授業準備の作業量増加から、研究費を使ってアシスタントを雇おうとしていた先生には、学部側がコスト負担をしてResearch Assistantをつける提案がなされた。また、最近の度重なる人種差別事件を受けて精神的な打撃をうけている学生や研究者も多く、そのサポートに回ってパツパツになっているという先生もいた。私は今学期1授業のみにしてもらっていたのと、COVID-19がはじまったときに教えていなかったことでかなり準備や作業を1つに集中することができたのは幸運だった。学生数が15人以下というのも、他の先生に比べるとかなり少ないようだった。
研究プロジェクトの中止、延期
コミュニティ研究をしている先生方からは、プロジェクトが1年先までのびただとか、まったく再開の目処が立たない状態だとか、かなり厳しい状況が報告された。6年の間に成果を出さなければいけないPre-Tenureの立場を考えると、おそらく相当ストレスをかかえているに違いない。それらの先生方は他の方法で研究ができるようにすでに状態を整えているとのことだったが、早く状況が改善することを願うしかない。私のプロジェクトの中で影響があったのは、日本でやる教員研修でデータをあつめるはずだったものができなくなったということのみだったが、それもオンライン研修にきりかわったため、幸い予定通り進行できている。他にもオンライン化によって新しいプロジェクトに参加することになった、という先生もいて、両方向への影響があったようだった。
論文誌レビューの遅れ
このレビューアーの先生方が多忙になってレビューがなかなか返ってこないという問題は、アカデミックなら誰しもが影響をうけていることかと思う。同じ論文誌に前に出したときにはかなりスムーズに返事がきたので明らかに遅いという先生もいた。私は恥ずかしいことに初めて出した論文ばかりなので普通と比べて遅いのかどうなのかわからないけれど、1つの論文誌に問い合わせたら「この状況ではいつレビューを返せるか目処が立ちません」との返事がきた。テニュア審査が迫っている先生方には特に、この遅れは致命的になる恐れがある。学部長は、対策として、テニュア審査を遅らせるか(ただテニュア審査を早く終わらせたいというのも本音なので、迷うといっていた先生もいた)、もしくは証拠を整えておいて、万が一出版が間に合わなかった場合にも認めてもらえるように手はずを整える、とのアドバイスがされていた。
子ども、両親、家族の世話
これは大学の先生に関わらずだが、参加した先生のほとんどの先生が、家にいる子どもをhome schoolしながらの仕事のしづらさ、週末も休みが取れないことによる疲れ、重なって両親の世話を引き受けなければならなくなった、などプライベートでの状況が仕事に与えている影響について口にしていた。COVID-19は、小さいこどもがいる30-40代の、かつ仕事がハードで責任が重く、助けや助けを求めるためのリソースがない人への打撃がとても大きい。仕事には関係なくても、そういうプライベートの部分へのサポートがなくてはこの状況は打破できない。家のことは外からのサポートは難しいためかあまり具体的な対策は話されなかったが、家事サポートやchild careサポートなどの対策など何かしらの生活へのサポートの必要性が感じられた。
私をふくめ始めたばかりのTenure Track教員に対しては、とにかくCOVID-19からどのように影響を受けたかを細く記しておき、数年後に自分の審査になったときに証拠として提出できるように準備せよとの指示がでた。私の影響は他の先生にくらべると最小限ではあるものの、論文誌レビューの予定の日程と実際の進行など、調べて記しておこうと思う。
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