地頭力を鍛えたい
細谷功さんの 地頭力を鍛える -問題解決に活かす「フェルミ推定」を読んでみた
頭が良くなりたい!
こう思わない人は居ないだろう。居たとしたら本当にこれまで何もかも順風満帆にやってきた天才か、問題があることにすら気が付かなかったかのどちらかだ。
私もご多分に漏れず自分の頭の悪さには自信のある方だ。理解力も乏しく、人に説明するのも苦手だ。いかん。言ってて悲しくなって来た。とにもかくにも、そんな「頭悪いコンプレックス」を持つ私にとって、この本は飛びづきたくなるような本であったのは間違いない。
地頭力が良いとはどういうことか
この本は副題に 問題解決に活かすフェルミ推定 とある。
フェルミ推定とは有名どころで言うと
日本国内に電柱は何本あるか?
なんていう、初見では「はぁ?知る訳無いだろ」と言ってしまいそうなアレである。
表面上のフェルミ推定は、文字通り「推定」するための考え方で、例えば電柱であれば、
・アプローチ設定で切り口を考える
単位面積当たりの本数を市街地と郊外に分けて総本数を決定する
・モデル分解
市街地と郊外で電柱の密度はどれだけ違うか。それぞれの総面積は?
・計算実行
知っている知識を組み合わせて答えを出す。(例:東京―博多間が1200kmだから…等)
といった考え方で何とか数を推定することになる。
私も表面上の知識としてそこまでは知っていたが、フェルミ推定の本当の価値は数を出すことだけではなく、そこ過程で「地頭」の土台となる考え方や、それに必要な力を鍛えることができることだ。
地頭力の構成は下記の通りである。
知的好奇心を土台にして論理思考力、直観力があり、その2つの力を使って抽象化思考、フレームワーク思考、仮説思考を行うといった感じだろうか。
仮説思考力(結論から考える)
仮説思考力は、仮説を作って結論から考えるということだ。言葉にすると簡単だが以外と難しかったりする。
例えばプレゼン資料を作るとしよう。まずデータや必要な資料を集めて、何を伝えるべきか考えていく。普通に見えるかもしれないが、これは筋の悪い考え方だ。まず、何を伝えたいか、そしてどのようなリアクションが欲しいのかを、「嘘でもいいから」「とりあえず」決めてしまう。これが仮説だ。その上で目次までざっくり作ってしまい、それを証明するため、伝えるためのデータを探す。その中で最初の仮説に合わないものがあれば仮説を修正する。
これは手元の情報から「積み上げる」タイプの人にとってはまさに「逆転」の考え方だ。さきほどのフェルミ推定の電柱の例で言えば、最初に自宅の周りの電柱を思い浮かべ、それを日本全国へ拡大していこうと考えた人は「積み上げ」タイプである。それは間違いでは無いが切り口としては良くないだろう。
フレームワーク思考力(全体から考える)
フレームワーク思考とは、問題を「漏れなくダブりなく(MECE)ボックスに分けて」で考えるということである。
先ほどの電柱の例で言えば「市街地」と「郊外」というように分けている。
フレームワークの良いところは、最初から問題の切り口を考えることによって問題を俯瞰して見ることができること。そして問題を分解して考えることが出来ること。そして個人の思考の癖を取り払うことが出来ることだろう。
フレームは電柱の問題のように自分で考えて作るほかに、ビジネスであれば既存のものを使うことも出来る。有名どころでは3CとかSWOTとかである。
抽象化思考力(単純に考える)
抽象化思考というのは、ざっくり言うと「つまりこういうことだね!」とまとめる力のことだ。細かな事象から共通点を探す、またはパターンを認識することで一般的なモデルに落とし込む。そうすることで起こっている問題に対し、一般的な解決方法が適用できるようになる。そのうえで、もう一度具体的な問題に立ち戻って解放の適用方法を調整しながら適用するわけだ。これは、問題の枝葉を切り落とす作業でもある。
電柱の例で考えてみる。もしこれを「単純に考えずに(抽象化せずに)」考えるとしたら、それこそ電柱の数を数える。それ以前に電柱とはどんなものを電柱というか考えることから始めなければならない。
物理学者は「牛を球体として捉える」という話が紹介されていた。それくらい大胆に単純化しても、「さしたる影響はない」のだ。
同じことが我々のビジネスの現場でも起きているのではないだろうか?問題にぶつかった時に単純化して考えることで、案外簡単に解決方法が見つかるかもしれない。
論理的思考力と直観力。そして知的好奇心
以上の3つの思考力を支えているのは「論理的思考力」と「直観力」だ。
昨今「ロジカルシンキング」が大ブームだ。(少なくとも私の中では)
しかし論理的に考えるだけでは足りない。そもそも仮説を立てる最初の段階ではどうしても直感が必要になる。論理と直感は思考の両輪なのだ。
論理的思考力も直観力もトレーニングで鍛えることが出来る。
そしてフェルミ推定は、これらの思考方法や論理的思考力と直観力を鍛えることが出来る強力なツールだ。
最後に知的好奇心。知的好奇心にも2種類ある。「問題解決に関する好奇心(WHY型)」と「知識に対する好奇心(What型)だ」。知識を得ることだけに満足してはいけない。問題をどうやって考えることこそが、地頭力の基礎となるものだ。
いやぁ、中々読み応えのある本だった。実は私は電柱の数を自分の家の周りを想像して拡大しようとしてしまったタイプだ。
この本に書かれていたことを十分に消化してフェルミ推定の問題を通じて地頭を鍛えていきたい。