24/25 TSGホッフェンハイム 前半戦通信簿
みなさん、こんにちは。けれむです。
ブンデスリーガも2024年のゲームを全て消化して、毎年恒例のウインターブレイクに突入しました。ゲームがコンスタントに行われていただけあって寂しい気持ちがありますが、1月のリーグ再開を楽しみに年末年始を過ごせたらと思います。今季も踏ん張りましょう。
さて、僕が応援しているTSGホッフェンハイムですが、今季ここまではあまり思わしくないシーズンを送っています。成績が以下の通りです。
前半戦終了時点の成績をご覧頂きましたが、リーグでは残留争いに巻き込まれ、UELではリーグフェーズ敗退の危機に瀕しており、DFBポカールは既に敗退と言う結果になっています。そこで、今回はシーズン前半を振り返って批評をしていきたいと思います。
24戦でわずか6勝。
では、早速シーズン前半戦を振り返っていくわけですが、昨季7位でブンデスリーガを終えたことで、今季は2020/21シーズン以来となるUEFAヨーロッパリーグ出場を果たしています。ただ、試合数の増加と過密日程という避けては通れない要素に対する不可解なオフシーズンの動きによって、ワクワクする気持ちよりも不安な気持ちの方が大きくなってしまったのが正直なところです。
内部の権力闘争。市場の出遅れで過剰な支出。
7月末、TSGホッフェンハイムに激震が走りました。長年クラブの強化に携わってきたアレクサンダー・ローゼン氏が解任されてしまったためです。これは以前から一部で問題視されていた、ディートマー・ホップ氏とエージェント企業・ROGONの親密すぎる関係性がクラブ運営に明確に関与した瞬間でもありました。この問題については話し始めると長くなるので要望があれば後日改めて書くことにしますが、クラブの根幹を揺るがす大きな事態だったことは間違いありません。
また、ローゼン氏が解任となった時期は昨季終了から2ヶ月程度が経っていました。それまでにローンで加入して活躍した選手(ex: ヴォウト・ヴェホースト)の買取は無く、売却候補と見られていた選手(ex: アッティラ・サライ)の売却にも失敗。欧州カップ戦出場を果たしたクラブ創設125周年というこれ以上ない特別なシーズンを素晴らしいものにするはずでしたが、この時点でスタートダッシュに失敗していたことは間違いありません。
後任として暫定でフランク・クラマー氏がこの役職を担ったものの、フロントの業務は未経験。当然ながら交渉の術は持ち合わせておらず、リストに載っている選手に対して続々とオファーを提出するも決裂。獲得できたと思えば、当該選手の市場価格を上回る金額を支払っているということもしばしば。ローゼン氏の時代は選手売却によって手にした金額の範囲内で選手獲得を行ってきましたが、今回はその理論から大きくはみ出す膨大な支出となってしまったため、「どこからそのお金が出てきたんだ」「ホップ氏のポケットマネーか?」と波紋を呼びました。僕としては、市場の出遅れにより足元を見られ、法外な移籍金を払わなければならない状況に陥らせた経営陣の傲慢さに腹が立って仕方ありません。クラマー氏については補強内容に関してはともかく、分からないなりに短期間でよくまとめあげてくれたと思っています。
キャンプから低調。新戦力の見極めもできなかった。
チームはキャンプから低調でした。僕がこのチームを見始めて9年ほどになりますが、ここまで酷いプレシーズンは見たことがありませんでした。キャンプを見学に行った現地のファンはチームが経営陣の不審な動きに対して敏感になっていることを察知していました。具体的には、ローゼン氏が解任されたことで、彼と親交が深かった現場のコーチングスタッフも追い出されるのではないかという不安が広がっていたことが現地ファンの発信によって明らかになっています。また、プレー面においても、TMでの出来はUELどころかブンデスリーガを戦うレベルにも達しておらず、降格も頭に過ぎるような本当に厳しいシーズンになることを覚悟させられるものでした。
このオフシーズンにはTSGからも複数の選手が出場したEUROが開催され、チームへの合流が遅れていました。また、昨季主力を担った複数の選手がケガで長期離脱を余儀なくされるなど、軸となる主力が欠けていたことで現有戦力での戦術の落とし込みに非常に苦慮していたのは外野から見ていても明らかでした。個々が与えられたタスクを全うしようと必死になるあまりに余裕がなくなり、余裕を持っている選手がそれをカバーしようと無理することによって攻守両面でチームが機能不全に陥ってしまいました。あれほど乱れたポジショニングは二度と見たくないですし、ペジェグリーノ・マタラッツォ前監督には同情せずにはいられません。
新戦力の融合と歪なスカッドに苦慮。向上しないチーム状態。
オフシーズンからチームに加わってしっかり準備ができた新加入選手は、EURO帰りで加入したアレクサンダー・プラスのみでした。彼以外の選手は合流がシーズン開幕直前、あるいは開幕後の加入というケースが大多数を占め、マタラッツォ前監督は新戦力の特徴を把握することに苦慮していると吐露していました。実際、彼らを試す機会は公式戦に限られ、明確に彼らの特徴を把握した頃にはチームは危機的状況に陥っており、標榜する戦術を落とし込むことを諦めて現実路線に舵を切った末に彼は解任となってしまいました。
さらに、特徴の把握だけではなく現場が求めていたスカッドを組むことができなかったことも大きく影響しました。昨季は前線にスピードのあるマクシミリアン・バイアーとイフラス・ベブーの2枚を並べて、彼らを軸にしたカウンターアタックで仕留める形でゴールを重ねました。しかし、前者はドルトムントへ移籍し、後者は大きなケガを抱えて前半戦全休。両者ともに不在となってしまいました。現在、クラブが抱えている稼働可能なCFは多くがボックス内で構えて仕事をする旧来の9番タイプで、スピードを活かして相手の背後に走り込んでゴールに迫るタイプではありません。メルギム・ベリシャがいるのに、似たようなスタイルのハリス・タバコヴィッチをなぜ獲得したのか。先ほどクラマー氏に対する評価で「内容はともかく」と記載したのは主にこうした理由があるからです。
足りなかった時間。後半戦への期待。
先ほどマタラッツォ前監督が解任された経緯を簡単に記載しましたが、純粋に時間が足りなかったことも理由として挙げられます。本来であれば毎週末のリーグ戦に向けて準備期間が1週間ありますが、ミッドウィークにUELやポカールのゲームが立て続けに組まれることで、その都度目の前のゲームに対する準備とリカバリーに時間を取られてしまうことになります。長く時間をかけて準備をすることが叶わないことから、結果を出すために戦術理解度の高い選手を継続して起用することでケガ人が増え…という悪循環に陥りました。
この悪循環は新監督のクリスティアン・イルツァー氏が就任して以降も変わらず、ケガによる離脱者の数はさらに増加しました。11月の代表ウィーク明けから指揮を執っていますが、戦術を落とし込む時間は限られ、ケガ人が立て続けに出てしまいました。ただ、12月に入った頃にはイルツァー監督が標榜するフットボールの大枠が見え始めています。開幕から期待感が薄かった攻撃が活性化し、固定できなかったCBや中盤のメンバーを固定できるようになっていることから、順調に成熟させることができれば勝ち点3を積み重ねることも可能なのではないかと感じています。
各ポジション総括
ここまではクラブ内部の動きとピッチ内の動きをリンクさせながら振り返ってきましたが、次に各ポジションごとに選手たちの活躍を振り返っていきます。
GK
まずはGKです。TSGの守備はオリヴァー・バウマンなしでは語ることはできません。毎年のように安定したセーブを披露してゴールマウスを守り続けてくれています。彼がいなければどれだけ失点していたか、想像するだけでも恐ろしいです。今季はようやくドイツ代表デビューも飾り、TSGファンにとっては忘れられないエモーショナルな瞬間を迎えることができました。後半戦も彼の活躍は欠かせません。
話すことはバウマンのことに限られてしまいがちですが、ここでは敢えて2nd GKのルカ・フィリップにも触れたいと思います。フィリップはポカール1回戦でプロデビューを果たしました。彼の素晴らしい人間性とチームへの献身をファンは知っていましたし、この瞬間を待ち望んでいた人も多かったことでしょう。僕もその1人でしたから。ただ、イージーミスでゴールを献上したシーンを筆頭に不安定なプレーが続き、苦いデビュー戦になってしまいました。TSGには彼と近い年齢でナウエル・ノールという2部のグロイター・フュルトにローン移籍しているGKがいます。彼は年代別のドイツ代表に選出されている実力者で、現在は2部で継続的に出場して経験を積んでいます。クラブとしては、ノールに経験を積ませることで、将来的にはかつて巻き起こったバウマン・コーベル論争と同様に、バウマンとノールの二択の選択肢が持てること、あるいはバウマンからのスムーズなバトンタッチを思い描いているように個人的に感じています。あの日の120分間は彼に対して厳しい現実を突きつけたようなものになってしまいましたが、フィリップには屈せずこの争いに割って入って欲しいと僕は応援しています。
DF
続いてDF。まずは、CBから振り返ります。開幕から失点が嵩み、チーム低迷に大きく関与してしまったポジションです。全体的に厳しい評価をせざるを得ない中、個人として評価を上げたのは新加入のアーサー・チャベスです。ポルトガル2部のアカデミコ・ヴィゼウからの加入ということで彼の実力を疑問視する声が多くありました。しかし、蓋を開けてみれば現在のチームで最高のCBとなり結果で見返してくれました。対人守備に長け、球際の強さが際立ち、攻撃ではポカール2回戦のニュルンベルク戦で打点の高いヘディングからゴールも記録しました。絶対的なディフェンスリーダーだったオザン・カバクの穴を埋めきった彼には最大級の賛辞を送りたいです。
また、開幕から継続してゲームに絡み続けたケヴィン・アクポグマも評価されるべきです。現在はチャベスとスタンレイ・エンソキのコンビで定着していますが、彼らが台頭するまでは好パフォーマンスを披露して苦しむDF陣の中で孤軍奮闘しました。さらに、激しかった好不調の波が落ち着いた点も評価を高めたポイントです。
逆にCBで評価を落としてしまった選手は、ティム・ドレクスラーとロビン・フラナーチの2選手です。ドレクスラーは昨季プロデビューを果たし、出場したゲームでは安定したパフォーマンスを披露したことから、クラブから期待を込めて背番号4を託されました。しかし、開幕から個の能力で上回られるだけでなく、経験不足も影響したまずい守備で失点に関与するシーンが目立ち、早い段階でゲームに絡めなくなってしまいました。今冬はローンでの放出も検討されているという現状には厳しい評価を下さざるを得ません。一方、新加入のフラナーチについては、現場のスタッフが彼の特徴を理解できていない段階でゲームに出場することが多く、その中で彼自身がイージーミスを重ねて失点に関与したことが悪い印象を与え、評価を落としました。結果として出場機会を失い、チェコ代表からのコールアップも無くなってしまいました。イルツァー監督就任後はサブに名を連ねることが増え、チーム内で序列を上げていることが推測されるため後半戦での挽回に期待しています。
次にSB・WBですが、このポジションで最も評価を高めたのは、新加入のヴァランタン・ジャンドレイです。加入当初は右サイドに絶対的な存在として君臨していたパヴェル・カデジャーベクのローテ要員と見られていましたが、シーズンが進む中でその序列を逆転させました。イタリアで磨いたタイトな守備と、相手DFの背後にも飛び出して行く積極的な攻撃参加でチームに大きく貢献しました。日本でもFC町田ゼルビアが多用して話題になっているロングスローを投げることができ、第14節のドルトムント戦では劇的同点弾を演出しています。
MF
次に中盤です。このポジションで評価を高めたのはトム・ビショフです。新たに背番号7を託されて迎えた覚悟の契約最終年は、ここまで彼のベストシーズンとなっています。昨季までは標榜するフットボールのスタイルと彼のプレースタイルに乖離があったことから出場機会が限られていましたが、今季は開幕からゲームに絡み続け、イルツァー監督体制になってからは持ち前のパスセンスでチャンスを数多く演出して輝きを放っています。待望のプロ初ゴールも生まれ、チームには欠かせない主軸の選手にステップアップしました。
また、イルツァー監督体制以降で評価を高めた選手として語らずにいられないのは、ディアディ・サマセクです。前体制では出場機会が与えられず、昨季まではローン移籍も経験して構想外となっている売却候補選手の1人でしたが、持ち前のインターセプト能力で評価を高め出場機会を大幅に増やしました。以前は簡単に相手の攻撃と自軍のCBが対面するシーンが多発していましたが、彼が定着して以降はその前でボールを刈り取ることができるようになって減少させることに成功させただけでなく、自分たちの攻撃に繋げられるシーンもよく見られました。ここまで逆境に立たされても腐ることなく懸命に取り組み続けた彼のプロフェッショナルな姿勢に対して、ファンから賞賛の声が多く寄せられています。
一方、このポジションで著しく評価を落とした選手はいません。チーム全体でケガ人が続出しましたが、特に中盤に離脱者が集中したことによって限られた選手でやり繰りしなければならない状況てした。各々が与えられた役割をそれぞれ全うしたと考えています。デニス・ガイガーがゲームに出る度にイエローカードをもらうことで達成されるイベント、「デイリーミッション」も健在でした。
FW
最後にFWです。このポジションで評価を高めたのは、マリウス・ビュルターてす。現在は負傷離脱を余儀なくされていますが、苦しかった序盤戦で奮闘した彼の活躍に胸を打たれた方も多いのではないでしょうか。僕もその1人で、現地で見た彼のゴールに救われたという補正も入っていますが、それがなかったとしても評価は高いです。マタラッツォ前監督が標榜したカウンターアタックを実現できた唯一のプレイヤーで、少し不器用な部分はありますが、ダイナミックなドリブルで相手ゴールに迫る姿は苦しい状況下において希望の光でした。イルツァー監督体制では本職のWGで起用され、これまで以上に躍動する姿を見ることができていました。彼の1日も早い復帰と更なる活躍を期待しています。
息を吹き返したという点では、ヤコブ・ブルーン・ラーセンも若干ではありますが評価を高めました。決定機を逃しては「相変わらずだな」と思ってしまうことが多くありましたが、今季挙げた2得点はいずれもチームに勝ち点をもたらす後半ATの劇的な "ジョーカーゴール" でした。スタートから出場した時も同様の活躍ができるとより良いのですが…。彼の心はここに在らず、移籍を見据えながらプレーする選手に対して期待するというのは何とも難しい心持ちになりますが、少しでもチームの力になり続けてくれることを願っています。
一方、評価を落とした選手はアダム・フロジェクです。彼に関しては評価を落としたと言うよりも、我々の期待値を大幅に下回っていると言った方が正しいかもしれません。クラブ史上最高額となる移籍金で加入して、開幕から燻り続けていること。さらに、12月のゲームでは決定機を次々と外し続けていることから、ファンは彼に対して溜まっていた不満が噴出している現状です。乱打戦の末に勝利したライプツィヒ戦や、今季のUELで唯一の勝利となっているディナモ・キエフ戦で見せたように一度波に乗ってしまえば止められない、素晴らしい才能を持った選手であることは間違いありません。固め打ちも大事ですが、コンスタントにゴールを取り続ける存在になれると彼に対する視線も変わってくるのかなと感じています。また、決定機を逃し続けている選手は彼だけではなく、チーム全体の課題であることも追記して彼をフォローしたいと思います。
まとめ
ここまでTSGホッフェンハイムの2024/25シーズン前半戦の戦いぶりを振り返ってきました。個人的にシーズン折り返しの時点でここまで真剣に振り返ったことは未だかつてありませんでした。ここに文章としてまとめる中で改めて気づいたことがたくさんありましたし、苦しい状況だからこそ愛するクラブの現状に対して真剣に向き合うことができて良かったなと思っています。クラブに対する思いや書きたいことが多いばかりに超大作になってしまいましたが、ここまで読んで下さりありがとうございました。
ドイツ国内だけでなく日本国内でも人気が出ないクラブですが、少しでもこのクラブに興味や関心を持ち、応援してくださる方が増えたらいいなと思っています。そんな日を楽しみに僕はこのクラブのPRを続けたいと考えています。また、今は苦しい状況ですが、取り組んでいるフットボールはとても魅力的で、軌道に乗った時には素晴らしい景色を見ることができると確信しています。
2025年も私、けれむと、TSGホッフェンハイムをよろしくお願いいたします。では、良いお年をお迎えください。
けれむ