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ニュースにもならない日常の欠片

私が住んでいるところは24号棟まであるでかい団地(UR都市機構)なのだが、資源ゴミ用の小屋は少ない。いつもペットボトルや段ボールを置きに行ってる小屋以外はどこにあるのかも知らないが、管理している人が毎日午前中に清掃しているからキレイで臭いもない。
その小屋に資源ゴミを置きに行くと、住民のおじさんかおばさんに会うことが多いが、他の棟の人だろうと普通に挨拶していた。時には世間話にも付き合う。
ところが最近、資源ゴミ小屋で挨拶すると挙動不審なおばさんやおじさんが何人かいる。
私が声をかけると、まず驚く。
そして、挨拶には返事もなくキョロキョロしながら小屋を出て行く。
普通のどこにでもいるおじさん、おばさんの格好だからこちらも「急に声かけたからビックリさせちゃったかな」ぐらいに思っていた。

さて、つい先日のことである。
小屋でペットボトルを置いていたら、小屋の反対側(道がない)からおばさんが現れ、こちらが驚いた。
でも、挨拶したらこちらをジロジロ見るだけで返事がない。
そして、変なことを私に聞いてきた。
「缶は持ってない?」
「え?」
「缶はないの?」
「缶の分別カゴならそこですけど(満杯の缶のカゴを指差した)」
「ああ…」
と口ごもったまま、そわそわと小屋を出る。
ワケ分からんまま、私も小屋を出ようとしたら、そのおばさんがこちらをチラチラ振り返ってる。
それまで「分別しない若者と間違われてるんだな」と思っていたが、ちょっと違うと直感。
「この人は私がいなくなるのを待っている!!」
その後、私は小屋に忘れ物をしたフリをしてすぐに踵を返した。
そして、段ボールの山を整理するフリをしながらおばさんが戻れないように10分ぐらいそこに留まった。
おばさんは戻っては来なかったが、
「あの人は[ゴミ]が欲しいのだ!」
ということだけは分かった。
この後、似たようなことが何回かあった。
おじさんの時もある。段ボールを根こそぎ運ぼうとしていた。

民家の軒下に置いてある物、物干し竿、橋のプレート……盗まれたというニュースを目にした。
浅ましい……。
私が遭遇したのは多分、金属泥棒(たち)なのだろう。(終わり)

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