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早朝から暗いエッセイ(閲覧注意であ〜る)

【くだらない与太話を書いて、そのオーディオブックを作りたい理由】

叔父が筋萎縮症になったのは50歳代後半のことだった。
全身の筋肉が衰えていく病。
心臓を動かす筋肉さえ衰え、ペースメーカーが埋め込まれた。
自分の意志で動かせる部分がマブタのみになるのだ。
はっきりした意識と記憶とプライドを十二分に抱えて、長期に渡り、屈辱的な入院生活を送っていた叔父。

見舞いに行った際、落語のテープを手土産にした。
創作落語だったと思う。噺家の名前はもう忘れてしまった。
突然、叔父は破裂音を発した。
声を出す筋肉も衰えているはずなのに。
爆笑したのである。

胸が苦しくつらかった。
でも、笑ってくれた。一瞬でも生まれた楽しいという感情。
人間には娯楽は必要なものだと確信した。

オーディオブックや点字本になってる物語は、落語か純文学が多いように思う。
だが、それは文科省推薦の優等生的内容ばかりだ。
人間は「選びたい」。
選択肢があって、その中から自由に好きなものを選ぶ。
人間はそうあるべきだと思う。

選択肢の中にもっとバカバカしい笑える物語が多くてもいいと思う。
娯楽だから。笑いたいのはみんな同じ。

叔父は10年以上の入院生活の末、肺炎で亡くなった。
五十音のボードを一文字ずつたどり、該当する文字で叔父のまばたきを見るのが意志を読む唯一の方法。
叔父が伝えたかった最後の6文字は
「しなせてくれ」
だった。

(終わり)

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