読書記録|ドアノーとプレヴェール、パリの街『プレヴェール詩集』
咥え煙草に1杯の酒、円卓を前に腰掛けるプレヴェール。犬の散歩の小休憩、というところだろうか。
ロベール・ドアノーの写真を眺めていて、詩人・プレヴェールを写したこの1枚に目が留まった。
ほかの写真に写る彼はカメラのレンズを真っ直ぐ見据えるまなざしが印象的であったから、この1枚が妙に印象に残っている。人々の往来を観察しているのか、思索に耽っているのか、あるいは単に一服しているのか。
レンズを意識しないその一瞬の様子がなぜか気になった。
それで、普段あまり詩は読まないのだけれど『プレヴェール詩集』を思わず手に取った。
プレヴェールが描くのは、戦争や労働者の生活、恋人たち。そんな生活の実感を伴った詩だからだろうか、素直にすっと受けとれる感じがする。
労働者はなれなれしく
ウインクして
なあ 太陽くん
じっさいくだらねえと
思わんかい
こんなにいい一日をまるまる
経営者(おやじ)にくれちまうのがさ。
「なくした時間」より
読み終えて改めてあの1枚の写真を見ると、プレヴェールその人自身の生活を切りとった感じがするようだ。
パリの街をその真っ直ぐなまなざしで捉えていたのだろうか、などと思いながら、またドアノーの写真を眺めている。