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ミロ展へ

久しぶりに渋谷に来た。

人と建物とがひしめき合う、独特な空気感。
自分にはなんとなく馴染まないような感じがして、普段はあまり訪れない街。

でも、ひとつだけ度々足を運ぶところがある。
それが渋谷Bunkamura。

目当ては、地下1階の美術館。
人の波をくぐり抜けてここまでくると、ようやく少しだけ息がつける。

今日見に来たのは、ミロ展。

すこし前、堀江敏幸の『定形外郵便』を読んだときにミロのことが書かれていたのが記憶にあって、あのミロの展覧会か、と気になったのだ。

とくに予備知識もないまま、展示室へ。

画題のない作品も多く、ちょっと見た感じでは人らしきなにかが存在しているな、とかそのくらいのことしか捉えられない。

こういうのをシュルレアリスム、というのだろうか。
普段あまり見ない領域だ。

のびやかに描かれた画面が印象的で、とてもおおらか。分からないながらも見ていて飽きない。そうやってぐるりと眺めていくと、徐々にこれはさっきのあのモチーフと通じるかも、と思えてきたりして面白くなってくる。

カンバスに使う素材がサンドペーパーや布であったり、ときには焼き物も焼いてみたりと、いろいろな表現を模索していたようだ。

途中、《マーグ画廊ミロ近作展ポスター》というのがあった。
マーグ画廊といえば、20世紀美術のコレクションで知られているところだったっけ。そういえば、ジャコメッティ展でも取り上げられていたなあ、などと思い出す。

ミロは日本美術にも興味を持っていたようで、大規模ミロ展や大阪万博に合わせて来日している。
陶板で構成された大作、《無垢の笑い》は大阪万博にて展示されていたもので、これは今、大阪の国立国際美術館の壁面に展示してあるという。

そこで思い出した。

ジャコメッティ作・ヤナイハラの彫像が収蔵された特集展示で国立国際美術館に行ったとき、たしかに《無垢の笑い》を見たことを。そうか、あれはミロの作品だったんだな。

意識していなかったけれど印象には残っていて、当時の記憶が甦ってきた。のちのち、こうして繋がりに気づくことがあるのって面白いよなあ。

最後に、出口のところに飾られていた、信楽焼きの狸とともに写真におさめられたミロがなんとも愛嬌があって、思わず頬が緩んでしまった。

 

さて、帰る前に、もうひとつ寄る場所がある。

美術館の横にある本屋。
展覧会に来ると、いつもここに立ち寄る。

建物のほんの一画にあるのだけれど、美術展に合わせた作品が揃えられているし、その他もラインナップがなかなか面白い。見ていると、『定形外郵便』もあった。もしかしてミロの繋がりかな、なんて。
帰ったらもう一度、『定形外郵便』を読み直すのもいいかもしれないな、と思いながら渋谷の街をあとにした。








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