藤巻タツキ先生の「さよなら、エリ」について。

以下、ネタバレあります。

海のシーンが美しすぎて、あまりに美し過ぎて、哀しくなってしまった。なんというか、藤巻先生は海を描くのが上手い。ファイアパンチにせよ、チェンソーマンにせよ、海が特別なシーンになることは、藤巻先生の特徴である。

また、病院や廃墟を爆破するシーンは、馬鹿馬鹿しいが故に色々なメタファーを感じられて本当にいい。私には、苦しい思い出を捨てて美しい思い出だけを胸に残す珠玉のシーンに見えた。他にも、解放、ナンセンス、場面転換、など、色々な見かたはあるだろう、が、私はなんだか感動してしまったのだ。涙が止まらなくなった。

私は、あれが藤巻タツキにとっての存在証明だと考える。常に常識を外れて、予想外を目指す。そんな作者の、ある意味自伝的な存在として、この漫画は存在しているのだ。そんな気がする。作者は常に、常識を超えた存在を作品の中で描いてきた。その集大成が、優太であるように感じる。また、理想的恋愛を描くのも作者の得意とするところだが、絵里と優太の関係性は、恋愛的でない恋愛である。動画という芸術を通して繋がったプラトニック・ラブであり、恐らくは絵里が優太の才能を利用している形の、正しく吸血鬼的搾取関係の甘さがそこに見え隠れしている。絵里の系譜は恐らくはチェンソーマンのレゼから来ており、また、マキマのファム・ファタル的な要素も微かに感じさせ、理想的な、悪女との、プラトニックな恋愛の集大成として場に君臨している。その全てが藤巻タツキという漫画家の全ての技巧と魂を込めて描かれた嘘のないエピソードと絵であり、藤巻タツキという人間が生み出せる魅力の、現在の集大成であると、私は思う。

とにかくすごいので一度読んで、二度読んで、そして三度読んで下さい。


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