侮れない「なんかいい」
「もっと女性の直感力を活用していくべき」
どこで見たのか読んだのかは忘れてしまった、だけど記憶に残っているフレーズだ。
女性の「なんかいい」「なんか好き」は根拠はないけれど侮れない、といったことがつづけて書かれていた。まあ、何かを売る商売はターゲットを女性に定めているものが多いから、何も不思議なことではないのかもしれない。
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「なんかいい」は侮れない。
勘がいいほうだとまでは思わないけれど、わたしは直感人間だ。「〜だからすき」と理屈をつけようと思えばつけられるだろうけれど、それはあくまでも表面上のことにすぎない。正しくは「好きだから好き」。理由や理屈を問うのは野暮な話なのだ。
人間関係も、仕事も、「なんかすき」「なんかいい」で選び進んできている。「こういうところが」と説明できなくはない。だけど、「じゃあ同じ“こういうところ”をもっているほかの誰か、何かでもいいの?」と訊かれたら、「たぶん違う」と答える。……うん、違うのだ。特徴とか条件だけではない、雰囲気をまるっと含んだものに惹かれているのだろうから。
会ってみたりやってみたりして、なんだかしっくりこないなあと思う人や仕事とは、遅かれ早かれうまくいかないことが多いように思う。反対に、「なんかいい」が強まる結果になった人や仕事とはうまくいくことが多い。
仕事では「できた・できなかった」があるけれど、それだけではない「なんかいい・なんか違う」も無意識のうちに出来や結果に大きくかかわるのだろう。少なくとも、わたしの場合は。
迷子になりそうなときほど、「なんかいい」を信じて判断を委ねよう。あれこれ理屈をこねるより、自分にとっての正解に近い答えが選べるような、そんな気がする。
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「なんかいい」が増えると、毎日がなんだか楽しくなる。しょげていた気持ちも上向きになるし、「よし、またやろう」と思える。
言葉を尽くした理由なんて、「なんかいい」の前には無力なのかもしれない……なんて思ってみたりもするのだ。けれども、「なんかいい」を少しでも遠くまで伝えるために、あえて言葉にあてはめて文章にする。そんな仕事をしているのだよなあと思いながら、出会った「なんかいい」をじっくり味わっている。ああ、本当に、なんかとてもいいんだよなあ。