見出し画像

「鯰絵(なまずえ)」という試み

UoCの「クリエイティビティ with AI」の、このカテゴリー担当の須田和博です。試しに書き始めます。

生成AIを使って「新ジャンル」の表現(画題のようなもの?)を試しに作ってみる試み。

「鯰絵(なまずえ)」という、江戸時代に流行した画題を、2023年現在の生成AIで描いてみようという試みをしてみる。本来の鯰絵は、安政の大地震を機に大流行した。地震を畏れ、災厄を避け、大地よ鎮まりたまえという思いが、江戸庶民のニーズと、絵師の想像力とで「画像化」した世俗的想像力の結晶である。

日本列島から地震がなくなることは、ほぼ永久に、ない。21世紀を迎え、生成AIの時代を迎えた、今2023年でも、定期的に日本列島周辺で地震は起こる。

ならば、今日的な手法で、地鎮を祈る「鯰絵」をたくさん生成して、今日的な世俗的想像力を可視化してみようと、思った次第である。

画像生成には、様々なAIが対応しているが、ここではAdobe社の「Firefly」を使用した。

【ナマズが渋谷の街を壊している】の図

ひとつめの画像は、プロンプトに「鯰が渋谷の街を壊している」と打ちこんで生成した。さっそく、はなはだしく、まちがっている。欲していたのは、「シン・ゴジラ」の幼体が渋谷のセンター街周辺を破壊しているようなイメージだった。

「本日の刺身盛り合わせ」みたいな舟の上に、サンマのようなものが大量にのっている。渋谷川には見えない水量豊富な川に、屋形船のようなものが見物に出ている。

どうやら、欧米のデータベースを学習している生成AIには、そもそも「鯰(なまず)」という言葉と絵が通用しないようだ。

そこで、「ナマズというのは、太ったウナギ」と入れて、生成してみた。

【ナマズというのは、太ったウナギ】の図

まあねー・・・、わからんでもない。まあ、こんな感じかな、という画像が生成された。スケール感のわからない絵だが、なんとなく構図は良く撮れている。

次に、江戸時代の「鯰絵」では定番の、神さまがナマズの頭を押さえつけている絵の今日版が見たいと思い、

【大鯰を剣で押さえつける鹿島大明神】の図(国際日本文化研究センター 所蔵)

ズバリ、「ナマズの頭を神さまが押さえている」と、打ちこんで生成してみた。いくばくかの期待感を込めながら、生成結果を見ると、

【ナマズの頭を神さまが押さえている】の図

上の結果を得た。まあねー・・・、なんとなく、わかる気はする。欧米の学習データから見ると、東洋の神さまは、インドがベースなんだな・・・と。

もうチョット、こう、時代を鋭く切り取ったようなものが、出せないものか・・・と思って、次に、

【大鯰を懲らしめる民衆を描いた鯰絵】(東京大学総合図書館 所蔵)

上のような構図をイメージしながら「大衆が破壊神のナマズを礼賛しているような図」になって欲しいと、プロンプトを打った。ナマズという語彙は通用しないので語彙変換して、いわく、「庶民が太ったウナギを褒め称えている」と。

【庶民が太ったウナギを褒め称えている】の図

「庶民」という言葉に反応したのか、頼んでもいないのに、いきなりカートゥーンな絵柄になった。なかなか、思うようにいかないものだ。

21世紀の今日的な「鯰絵」で欲しているのは、ゴジラ的な情景で、大都市をズタズタに破壊している巨大ナマズと、それをあおぎ見ながら、必死で逃げ惑っている民衆の姿なのだが、なんとか、それに近いイメージを生成できないものか、と、今回、最後の、渾身のプロンプトを書き込んだ。

「民衆の上空に巨大ナマズがいる。」

文末にチカラ強く、句読点まで付けた。これで、文句ないだろう。誤読のしようもない、明瞭な依頼文である。意を込めて、生成ボタンを押す。

【民衆の上空に巨大ナマズがいる。】の図

いやー、名画である。欲してた画像とは、まったく違うが、よくこんな絵が描けるなぁと、感心する。芝桜が満開の芦ノ湖畔の向こうに、センター構図で見事な富士山。そして、まるで五月の風に舞うコイノボリのような、爽やかな四つ目ナマズ。

人間に、このクレイジーな絵が、この依頼文で描けるだろうか?いや、不可能である。

この連載カテゴリー(「マガジン」と言う)は、人間にはチョット不可能な「狂ったクリエイティブ」を「狂ゥエィティブ」と称して探究する試みである。

「画題」というものを、誰もが参加できる「クリエイティブのゲーム」として新たに開発し、皆が生成AIを使って、その「お題」にトライし、生成クリエイティブを楽しむ、ということが創発できることを意図してスタートした。

第1回目の画題を、江戸時代から無数の錦絵が存在するカテゴリーである「鯰絵」の現在版としてみた。さっそくの「エラー祭り」で、思うような画像は描けなかったが、それも「生成AIクリエイティブの面白み」である、として、第1稿の筆を置く。

このような形で、今後も、模索しながら連載してみようと思うので、ひきつづき、なにとぞ、よろしくお願いいたします。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集