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お香が好き

 窓を開けると心地よい空気が通るようになった季節。春よりもなんだか落ち着いた空気の秋は、お香がぴったりだ。これが一般的な感覚なのかどうかは分からないが、私は秋に焚くお香が一番好きだ。

 単純に、ずっと窓を開けていて心地いい季節がそれほど多くはない、ということはありそうだが。でも、同じような季節の春よりは秋、と思うのだ。なんだか少し憂うような空気の含まれた秋の空気が。

 お香にもいろいろな種類があるが、私はお線香みたいなスティックタイプを好んで使っている。エスニック雑貨屋さんにあるような持ち手が木の長いやつではなくて、ほんとうにお線香、って感じのタイプだ。そもそもお香とお線香が違うものなのかどうか、という線引きも私はそれほど分かっていない。お香のことをあまり理解してはいないけれど、好きだ。

 香りは白檀や沈香といったTHEお線香の香りのタイプもつかうけれど、いま家にあるお香は美術館や植物園で買った花の香りのものがほとんどだ。

 あと、私は薫玉堂というところの出しているお香が好きで、それもいま一種類だけ家にある。「三室戸の蓮」という香りだ。

 ここのお香はどれもお上品でありながらも香り高くて、燃えた化学物質、みたいなものをほとんど感じることがない。使っていると気品が溢れてくるような気がする。完全に気のせいではあるのだけど。
 いろいろな匂いの入ったセットのものもあるので、是非試してもらいたい。

 コロンなどとは違う、柔らかな香りも私には合っているのかもしれない。あと、やっぱりお線香に近いので祖父母の家のことを思い出したりして心が安らぐ。

 お香の香りが良いのは言わずもがなだが、煙も見ていてとても心地よい。
 空気の流れが少なくてスッ……と上に伸びていく煙も美しくて、こちらの背筋がシャンとなる。空気の中でふわりと揺れる煙も見えない空気の流れが見える面白さや、ギチギチに詰まった頭が緩むような感覚を得ることが出来る。煙草の煙のように有害でもないから安心だ。

 今日も4本ほど焚いていた。眠る前にもまた焚くだろう。いい時期だし、たっぷり堪能したい。こういう小さなことが、驚くほど心に効いたりするから不思議だ。

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