本の感想 浅倉秋成『俺ではない炎上』
ジャンル：ミステリー、現代日本
浅倉秋成氏の著作『俺ではない炎上』を読了し、興奮冷めやらぬなか感想を書く。
※ネタバレは避けてるつもりです
あらすじ
外回り中の営業部長・山懸泰介が帰社すると、社内の様子が変だった。どうやら泰介が「女子大生殺害犯」であるとされて、すでに実名、写真付きでネットに素性が晒され、炎上しているらしい。まったくの濡れ衣だが、Twitterで犯行を自慢するアカウントは実に巧妙で、見れば見るほど泰介のものとしか思えず、誰一人として無実を信じてくれない。会社も、友人も、家族でさえも・・・・・。ほんの数時間にして日本中の人間が敵になり、誰も彼もに追いかけられる中、泰介は必死の逃亡を続ける。
舞台はまさにSNSが蔓延る現代。
逃亡劇など面白いに決まっているではないかと期待値爆上げで購入。
さてさてどう真犯人を探し当てるのか楽しみだと胸を躍らせる。ワクワク。
余談だが黒地の表紙がとても好き。
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感想
浅倉氏の作品である以上、見事な伏線に踊らされるのだろうなとは思っていたが想像以上だった。
思考停止したよね。
結末に向かって怒涛のスピードで襲ってくる伏線回収の様々、ドンデン返し。
混乱しているところに新要素…というか伏線回収がやってくるため、後半はかなり忙しかった。
それでも一気読みできるテンポの良さと面白さ、なにより確実に追い詰められていく没入感が楽しい。
…いや楽しいというのは不謹慎か。
SNSの普及した現代だからこそできる、リアリティのある作品だったと思う。
再読するとたしかにミスリードが多く、ちゃんと騙されてたなぁと省みる。
まだ読んだことのないひとは、これ以上ネタバレを踏まずに読んでみてほしい…！
作品概要
本作は主に4人の視点から描かれる。
・濡れ衣からの炎上に逃げ回る山懸泰介
・SNSは人並みに扱う大学生住吉初羽馬
・山懸泰介の娘山懸夏実
・取り調べに勤しむ刑事堀健比古
きっとこの中のだれか一人には感情移入できると思う。それくらいそれぞれのキャラの価値観やら考え方は人間臭さがある。
これ伏線じゃね？というシーンはいくつも見受けられる。
だがアレもコレもソレも全て伏線であり、全て結末に必要不可欠なピースなのだ。
グロすぎるシーンや濡れ場はなく、本当にハラハラドキドキする逃亡劇を味わうことができる。
ただ序盤は泰介に感情移入しているとかなり心苦しいし、続きが気になりすぎて焦ったくなる。
たった1日間のお話なので、ぜひ一気読みしてみて。
察しの良いひとはすぐに真相に気付くのだろうか？わたしは全くわかりませんでした。
星付け
読みやすさ：★★★★★
安定して読みやすいと思う。疾走感のある逃亡劇に没入しやすい。リアルタイム検索、という本作ならではの表現も面白い。
登場人物の魅力：★★★☆☆
主要キャラはそこまで多くなく、スポットライトはやはり泰介に当たるかな。みんな人間臭くて良い。ただ特別目立つ人もいないかも。
衝撃度：★★★★★★★
結末にも、作中のとある人物の台詞にもいえる。正直この台詞はグサグサ刺さりすぎる。きっと自分もそういう考え方をして今まで過ごしていたよな〜…と。もちろん結末のドンデン返し、衝撃です。
最後
身近な存在であるSNSの恐さを体感できるミステリー、『俺ではない炎上』
疾走感のある逃亡劇を繰り広げながら、ぜひ真相に辿り着いてほしい。
そしてSNSのよくない部分、誰しもがもつであろう自己の正義を実感していただきたい。
たぶんびっくりします。わたしはびっくりしました。
たぶん「ウ"ッ」てなります。わたしはなりました。
閲覧ありがとうございました。