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本の感想 桜井美奈 『私が先生を殺した』

ジャンル:ミステリー、学園モノ

桜井美奈氏の著作『私が先生を殺した』を読了したため感想を書く。

まだ読んだことのないひと向けに書いている節がある。

※ネタバレは避けてるつもりです



あらすじ

私は“善人”か、それとも“悪人”か
「ねえ……あそこに誰かいない?」。全校生徒が集合する避難訓練中、ひとりが屋上を指さした。

そこにいたのは学校一の人気教師、奥澤潤だった。奥澤はフェンスを乗り越え、屋上から飛び降りようとしていた。

「バカなことはするな」。教師たちの怒号が飛び交うも、奥澤の体は宙を舞い、誰もが彼の自殺を疑わず悲しんだ。

しかし奥澤が担任を務めるクラスの黒板に「私が先生を殺した」というメッセージがあったことで、状況は一変し……。

語り手が次々と変わり、次第に事件の全体像が浮き彫りになる。秘められた真実が心をしめつける、著者渾身のミステリー!

桜井美奈『私が先生を殺した』小学館,2023年


このとおり、ミステリー中のミステリーだ。
裏表紙に書かれたあらすじだけで、心鷲掴みである。吸い寄せられるように本を手に取り、会計に向かった。


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感想

桜井氏の作品を読んだのははじめて。作品名のインパクトとあらすじに惹かれて書店で購入。
結論からいうと、非常に面白かった。読み進めていくうちに謎が少しずつ解けていき、最終的にスッキリと解決する。
いや謎はスッキリ解決するが、後味は決してサッパリしていない。苦味が舌に残るかんじ。かなり強く。
だがその苦味が最高。この作品の芯となる“学校の闇”を痛感させられる感覚がたまらない。
わたしはかなりハッピーエンド思想の持ち主だが、こうした“戒め”的な終わり方はかなり好きだ。美味しい。
心苦しくなるシーンも多く、悲しくなるシーンもやってくる。泣ける悲しさというよりも、無力感ややるせなさという言葉が近いかも。
自分が図書係だったら、でかでかとポップを書いて薦めたい。
『ミステリー好きは ぜひ読んで!※受験期のかたは要注意』


作品概要

話はさまざまな人物の視点から進んでいく、いわゆるオムニバス形式。
問題児の視点、先生にお熱な生徒の視点、優等生の視点など多岐に渡り、だんだん不穏な空気が色濃くなっていく。面白い。
最終的にはタイトル回収が為されるのだが、もう拍手。まさかそういうことだとは。
物語の核心に迫るまで、かなりのページを読み進める必要があり、オムニバスといえど全く同じ時間軸を描いているため途中でダレる人もいるかもしれない。
でも安心して!!
結末めっちゃ面白いよ。

星づけ

読みやすさ:★★★★☆
前述した形式と、進路関連のどろっとしたところが描かれるため好みは分かれると感じた。
登場人物の魅力:★★★★★
善い人も悪い人も魅力的。わたしは黒田と小湊の関係性が苦しくて好き。自分に置き換えたら耐えられないと思うけれど。
タイトル回収:★★★★★★★
美しい。わたしは察しの良い読者ではないため、ミスリードにまんまと引っかかり、結末では目をかっ開いて驚いた。

最後

生徒と先生が織りなす学園ミステリー、『私が先生を殺した』 
事件の真相に着々と迫る中で、共感や納得、怒りを感じるシーンが多くとても没入できた作品だった。
いずれまた読み返し、気付いたことが増えたら書き足そうと思う。


閲覧ありがとうございました。

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