コミュニティとDAOの未来 vol.1
Unyte Intern 田伏です。
第5回となる今回から3回にわたって、「コミュニティとDAOの未来」について考察していきます。代表的なコミュニティと、その成功例から必要な要素や陥りやすいポイントをみていきます。
<こんな方に読んでいただけると嬉しいです>
・コミュニティを運営する予定があるが何をやればいいかわからない
・運営しているコミュニティをより活性化したい
・DAOを活用したコミュニティ構築に興味があるが、コミュニティについてあまり知らない
<3回分読んでいただけるとこうなれます>
・陥りやすいポイントを回避できる
・コミュニティ活性化に必要な要素を把握できる
・具体例の引き出しが増える
vol.1となる今回は、ファンコミュニティについて、展開する上での必要な要素や回避すべきポイントをみた後、実際の事例で確認します。盛りだくさんになっているので、是非最後までチェックしてください!
コミュニティの分類
オフライン・オンライン問わず様々なコミュニティがありますが、そのカラーや特徴は多岐にわたります。今回のnoteから3回にわたって、代表的な4つのコミュニティである、ファンコミュニティ、企業内コミュニティ、ボランティア団体、地域コミュニティについて、考察していきます。
vol.1となる今回は、企業が主導して展開するコミュニティの代表例として
ファンコミュニティを見ていきます。
ファンコミュニティとは
好きな芸能人やアイドル、チームだけでなく、好きなサービスや商品、ブランドが同じ人たちで構成されるものです。「好き」という気持ちを共有/共感し、情報交換や交流することで、盛り上がることができます。様々なファンコミュニティが展開されており、「ファンマーケティング」のようなマーケティング用語も流行しています。
一方で、サービスを終了するものも多数存在します。それらの多くは「ファン同士が繋がる手段が無数に増えた」ことに起因しています。SNSの発達により様々な人と様々な方法で繋がることができる中で、あえてファンコミュニティを展開するには、どのように設計すれば良いのでしょうか。
まずはサービスが終了したコミュニティから学ぶ、陥りやすいポイントを見ていきます。
先人に学ぶ回避項目
閉鎖してしまったコミュニティに共通する要素はどのようなものがあるのでしょうか。代表的なものとして、新陳代謝が悪い、コミュニティの趣旨に合わない参加者が増える、コンテンツ投下型になっている、考えたプランを参加者に押し付ける、の4つがあります。それぞれ詳しく見ていきます。
1. 新陳代謝が悪い
コミュニティ内のコミュニケーションにばかり集中してしまうと、新規参入者が少なくなり、新規参入者にとって最もハードルが高い内輪ノリが元々いるメンバー間にできることで悪循環にはまります。あくまでKPIは新規参入者に置き、その次にリピート率を追うことで、この悪循環を未然に防ぐことができると考えられます。
2. コミュニティの趣旨に合わない参加者が増える
1を気にするあまり、新規参加者数だけを追ってしまうと、コミュニティの目的/ゴールに沿わない参加者が増えることでコミュニティに貢献するメンバーが減り、結果としてコミュニティ全体の熱が下がってしまいます。「コミュニティの目的/ゴールを共有した」新規参加者をいかに増やすかが大切なポイントです。
3. コンテンツ投下型になっている
コミュニティ内のコンテンツが、運営が用意するものだけに依存してしまうと、メンバーを惹きつけるコンテンツを継続的に作成できなければ、メンバーが離れていってしまいます。コミュニティ内SNSのようなものにメンバーが投稿し、プラスアルファで運営側がコンテンツを提供するという形が、持続性のある活性化につながると考えられます。
4. 考えたプランを参加者に押し付ける
メンバーに対して用意したコミュニティのお知らせ方法を押し付けてしまったり(Xでハッシュタグをつけた投稿をするなど)、運営が考えた企画ばかりを連続して実施してしまうと、メンバーの参加率が下がったり辞めてしまうこともあります。考えた施策やキャンペーンは実施した後、メンバーからのリアクションやフィードバックを適切に反映するループを1度ずつ回すことで、メンバーも気持ちよくコミュニティに他の人を誘うことができるかもしれません。
以上の回避項目4つを考慮した上で、企業が主導して展開しているコミュニティの具体例と合わせて、活発にメンバーが活動できるために必要な要素として以下の4つを考えます。
1.何をやるためのコミュニティなのかが明確であること
2.メンバー自らコンテンツを作成すること
3.メンバー間の交流を促す仕組みがあること
4.投票/クイズなどワクワクを演出するイベントが定期的に開催されること
それぞれ詳しく見ていきます。
ファンコミュニティ活性化に必要な要素
1. 何をやるためのコミュニティなのか明確であること
大前提として、コミュニティの目的/ゴールが共有されていることが必須です。コミュニティが盛り下がってしまう1つの原因に、参加者が想定していた活動ができないことが挙げられます。参加する前に認識をすり合わせ確認することで、参加者は参加する前の熱量や期待を維持したまま、コミュニティで活動することができます。また運営側としても、最初にスタンスを表明することで、作成するコンテンツの方向性を定めることができ、コンテンツの方向性が分散することでメンバーが離れてしまうことを防ぎます。
2. メンバー自らコンテンツを作成すること
次に、メンバーがSNSのように投稿をすることで、コミュニティのコンテンツを形成することです。コミュニティ内で使用されるSNSは、同じものに対して「好き」という気持ちを持つメンバーになら見られてもいいと感じやすく、誹謗中傷などがきてもコミュニティが対応してくれるという安心感があります。XやInstagramなどのSNSに比べて投稿する心理的ハードルが低い中で、他では解消できない承認欲求を満たす場所として機能します。
また企業側は、運営が提供するコンテンツに依存することを避け、持続的にメンバーを満足させるクオリティを保つためのコストを削減できます。
3. メンバー間の交流を促す仕組みがあること
1であげた承認欲求を満たすために、他のメンバーからのリアクションを可視化する方法として、他のSNS同様いいねやコメントの機能が必要です。また立ち上げ初期の段階では、運営がほぼあらゆる投稿に対していいねやコメントを行うことで、投稿すればリアクションがもらえるとユーザーに感じてもらい、積極的にいいねやコメントをするカルチャーを定着させます。
4. 投票/クイズなどワクワクを演出するイベントが定期的にあること
1,2のユーザー同士のコミュニケーションだけで飽きてしまわぬよう、運営側との接点を設ける必要があります。ファンコミュニティであるため、「商品への改善提案」「新商品開発のお助け」ができていると感じやすいタイトルや内容にすると、積極的な参加が見込めます。
それでは、ユーザーを多く抱えるファンコミュニティでは4つの要素がどのように落とし込まれているか、6個のコミュニティで各項目を確認します。
具体例で確認
スノーピーク「snow peak community」
1. 「「野遊び」でつながる、見つける」
・端的かつ趣旨が明確なスローガンです
2.キャンプ情報をメンバーが投稿
・タグ付けして、カテゴリー別にフォローもできるようにしています
3.いいねやコメントに加え、キャンプの現地でお互いのバーコードを読み取る
・オフライン/オンライン問わず、メンバー同士の交流を促進しています
・ポイント付与や履歴に残り、自身の活動が記録/可視化されます
4.キャンペーン
・私のベストキャンプ投稿など、自分の1番を見てもらいたい/認められたいという気持ちを表現できるお題を設定しています
コメダ珈琲「さんかく屋根の下」
1. 「コメダを通して新しい何かに出会うサイト」
・出会うものを「何か」に広げているが、中身のチャンネル数は絞っています
2.写真や日記などをメンバーと運営が投稿
・スタッフ専用の投稿部屋を用意し、メンバーがそこにコメントする形
→ ほぼ全てのコメントに対してスタッフがリプライしています
・お知らせや商品紹介以外は、メンバーが作成する投稿で形成されています
3.いいねやコメント
・だいたいどの投稿にも少なくとも1つはコメントがついています
・公式アカウントはありません
4.フォトコンテスト、クイズ大会など
・最初に「今後の商品開発の布石になるかも」と記載することで、コメダの商品との接点ということをユーザーに意識づけています
カゴメ「&KAGOME」
1. 「ファンとカゴメを繋ぐコミュニティサイト」
・ファンと企業の交流がメインであることが伝わるスローガン
2.レシピ、商品のレビュー、料理の写真などをメンバーと運営が投稿
・特に珍しいのは商品のレビューです
→ amazonやネットの評価とは異なり、ファンコミュニティ内のメンバーの評価だとメンバーも信頼でき、会社としても改善に活かすことができます
・運営もレシピを公開しています
→ 公式のコンテンツの方が多いです
3.いいねやコメント
・ほぼ全ての投稿にいいねとコメントがついています
・公式アカウントがコメントする場合が多いです
4.投票(選択肢は複数提示)
・投票に対する投票数とコメントが見れるため、ユーザーは盛り上がりを感じることができます
無印良品「IDEA PARK」
1.「ユーザーとの対話を通してモノづくりを進め、考え方を伝える」
・ユーザーと一緒に商品を良くしていくという明確なスタンスです
2.商品に対する要望をメンバーが投稿
・投稿の内容を商品に対する要望に限定しています
3.いいねやコメント
・こう思っていたのは私だけじゃなかったんだ、みんなの声を代弁できたという仲間を得られた感があります
・商品開発に反映した際に企業の公式アカウントからその旨のコメントがつくことで、自分の考えた改善点/新しいアイデアなどが実際に商品の改良/開発に直結したことを実感でき、もっと貢献したいという正のループが生まれています
4.なし
・ただし自分の意見が反映されたり、商品化されるかもしれないというワクワク/ドキドキがあります
森永製菓「エンゼルPlus」
1. お菓子好きが楽しめてお得な情報もゲットできるHAPPYなサイト
・お得情報がゲットできるという明確なメッセージです
2.森永製品の写真や、意見を募る掲示板などメンバーと運営が投稿
・運営側が用意するコンテンツの種類と数が豊富です
・ユーザー用と管理人用の掲示板を分けています
・「冬に飲む、お好きなあったかい飲み物はなんですか?」「今年一番食べたお菓子はなんですか?」「今日のおやつ」など、参加しやすい質問やお題が多いです
3.いいねやコメント
・ほぼ全てのユーザーの投稿に対していいねやコメントがついています
・公式アカウントはありません
4.投票、クイズ、キャンペーン
・投票:投票数/ 締め切り/ いいねが可視化され、 ユーザーは緊迫感と盛り上がりを感じます
・クイズ:回答者数/正解率が可視化され、ユーザーは盛り上がりを感じます
・キャンペーン:景品はオリジナル商品がほとんどです(図書カードなどもあります)
BASE「BASE FOOD Lab」
1.「対話から生まれる新しいカタチ」
・ユーザーの感想や要望を聞きたいという企業のニーズがはっきりしています
2.レシピ/トーク/ダイエットなどをユーザーと運営が投稿
・チャンネルの種類が豊富で、ダイエットチャンネルが特徴です
→ ダイエットに取り組むユーザーが、食生活を記録することで日記代わりになったり、他のユーザーの投稿を見ることで孤独感が和らぎ、さらに管理栄養士がコメントしてくれます
3.研究員ステージという設定
・投稿やリアクションの数に応じてポイントが付与され、一定量貯まると、クーポンに加えてオリジナルグッズがもらえます
・他の企業に比べて、作り込んだ世界観を反映させたインセンティブ設計です
4.投票やクイズ、キャンペーンはあまりない
・商品に対する意見を募るチャンネルを「研究課題」と呼び、これが投票やクイズの代わりの機能を果たしています
以上のように、活発なファンコミュニティは4つの要素を抑えていることがわかります。またBASEの「BASE FOOD Lab」では、メンバーを研究員と呼び、企業の強みを活かしたダイエットキャンプチャンネルがあったり、無印良品の「IDEA PARK」では、改善要望/新たなアイデアに絞った投稿を指定していたり、工夫を凝らした設計になっていました。このように4つの要素の上に企業のカラーや強みを加えることで、コミュニティを通してファンのロイヤリティを高めることにつながります。
まとめ
第5回となる今回のvol.1では、コミュニティの中でも特にファンコミュニティに絞って、活性化するにはどのような要素が必要なのか考え、具体例で確認しました。ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
次回のvol.2では地域コミュニティとボランティア団体、企業内コミュニティについて見ていきます。そして各コミュニティの考察を踏まえて、最終回のvol.3では、コミュニティ × DAOの未来はどのように交わるのか考えます。
次回も是非チェックしてください!
( 不正確な部分のご指摘やご質問があれば、Unyte Intern 田伏にご連絡いただけると嬉しいです!)
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