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雲遊萍記 〜うんゆうひょうき〜 -静岡の文系男子高校生が綴る、不定期更新の千字コラム-

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最近の記事

『すずめの戸締まり』からー〝怪物〟と暮らす。

 -扉の向こうには、すべての時間があった-  先月11日に公開された映画『すずめの戸締まり』の印象的なキャッチコピーだ。『君の名は』や『天気の子』で一世を風靡した新海誠監督による最新作。公開から2週間あまりで興行収入が62.6億を超えるロケットスタートを記録した。 1.“戸締り”が意味するもの  『すずめの戸締まり』は、災いを起こす“扉”を閉める旅を通して少女の成長を描く冒険ものだ。  日本とヨーロッパにおける“戸締まり”は、対照的なものであったという。その違いは、家

    • 色彩と五感

       かれこれ1ヵ月ほど前の話だ。コーヒー業界大手のスターバックスが今年のハロウィン向けに発売した紫芋素材の新作は、巷で大きな話題を呼んだ。その紫色のフォルムが放つ薄気味悪さは、比類のない魅力とも言えよう。 1.古代からの意味宿る色  紫は古代から高貴な色として重宝されてきた。その歴史は振り返ること約1,400年前・聖徳太子が定めた「冠位十二階」。紫色の冠を許されたのは、最高位の者に限られた。平安期には貴族を中心に愛された。  上品さを纏った紫色は時を越え、鎌倉期以降は武家

      • 【現地レポ】新たな図書館

         先日、新しくなった石川県立図書館を訪れた。7月中旬に移転オープンしたばかりの“本の宝庫”は、これまでの図書館のイメージを打ち破るものだった。 1.めぐりめぐる知と未来。  まずこの図書館に関する印象深い言葉に“めぐりめぐる知と未来”がある。図書館のホームページには、以下の一節がある。  本の文化が廃れつつある昨今、その価値と可能性を論じた、図書館の真理だと思う。この考えを根本に、この図書館は設計されている。 2.美の設計  吹き抜けから差し込む柔らかな光に、円形に

        • 「便利」の正体

           今月始め、一つの報せがネット上を騒がせた。若者を中心に大人気の位置情報共有アプリ「Zenly」が、間もなくサービスを終了するというのだ。友達の位置情報の把握は待ち合わせ等に便利だとして広く親しまれたゆえ、終了を惜しむ声や必要不可欠だとする叫びが絶えない。 1.事の経緯  そもそもZenlyとは、フランスのZenly社が開発した位置情報共有アプリで、同社は2017年に米Snap社によって買収された。日本では翌年夏頃から女子高生の間で流行り出した。その背景として、鈴木朋子氏

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        • 【現地レポ】
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        記事

          ハサミと科学は同じ!?

           今年は8月上旬から、線状降水帯による大雨の影響で、東北・北陸地方で橋の崩落や河川の氾濫といった被害が多発している。さらには先日、台風8号が静岡県伊豆半島に上陸し、接近前から雨の強まっていた東海地方では、降り始めからの雨量が400mmを超える大雨となった所もあった。  浸水の被害が広がる一因として、橋や堤防の決壊が挙げられる。山形県飯豊町では長さ24.6m、幅5.5mの大巻橋が崩落し約300戸に断水が生じた。また、最上川と米代川の計4カ所で越水を確認。同県川西町ではため池が

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          どこまでも“暑い”語彙

           -京浜国道は残暑の日盛りにまるでフライパンのように焼けていて-  社会性の濃い風俗小説の先駆者で知られる石川達三の名作『日蔭の村』に出てくる一節だ。舞台は昭和初期の奥多摩湖。小河内ダム建設の真っ只中だ。数多の文学で描かれてきた、ダム建設で村が沈む哀しみのような展開には走らない。彼の淡々とした文体で、不誠実な国の対応により生活が立ち行かなくなる村人の苦しみを描いたものだ。  この作品の特筆すべき点の一つとして、豊かな暑さの語彙表現が挙げられる。冒頭の一節の通り、彼は残暑の暑さ

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          “裏切る流通量”の真相を探る

          22年前の7月12日。それは、二千円札の発行が始まった日だ。今ではすっかりその姿を見かけなくなったが、それには複雑かつ面白いわけがある。 1.そもそもなぜ?  20年以上前の二千円札が作られた当時、世界で紙幣を発行していた国や地域のうち7割以上で「2」の単位の紙幣が発行されていた。アメリカの20米ドル紙幣などは、中額紙幣として市中での流通量が特に多いことから、日本でも二千円紙幣が同様の役割を果たすことが期待された。  その流通枚数は、米紙幣全体の25%を占めていた。その他

          “裏切る流通量”の真相を探る

          「出水」は何と読む?

            あなたは「出水」を、どのように読むだろうか-音読みして「しゅっすい」か、それとも訓読みして「でみず」か-  実はその両方が正解である。“しゅっすい”とは、大雨などで河川の水があふれ出ること。“でみず”とは、降雨により河川などの水が大いにふえて、あふれだすこと。そう、どちらも意味に変わりはない。  だが“でみず”が登場するのは、気象の場面だけとは限らない。 1.俳諧の“でみず”  数多くの名句を残した高浜虚子に俳句を学んだ昭和の俳人、松本たかし。彼は木曽川を舞台に、“で

          「出水」は何と読む?

          “窮地の産物”に思いを

           今月25日、日清食品から2つのカップラーメンが新発売された。いずれも「有名店シリーズ」の続編となる新商品で、お湯かけ5分で元祖京都ラーメンの味わいが楽しめる。 1.「まんぷく」を思い出す  カップ麺と聞いて、NHK朝の連続テレビ小説「まんぷく」が記憶に新しいという人も多いのではないか。インスタントラーメンを世界で初めて開発した男、安藤百福と彼の妻をモデルにした物語だ。舞台は食糧難が社会問題となっていた、戦後すぐの日本。厳しい時代の実話をもとにしたリアリティさと夫婦の強い

          “窮地の産物”に思いを

          夏空への第一歩

           活発な梅雨前線に覆われた、ここ数日の沖縄。気象庁から沖縄の梅雨入りが発表されたのは先月4日。同月11日には奄美地方の梅雨入りが発表されるなど、梅雨に関するニュースを耳にする度に、あの“じめじめの季節”がゆっくりと私たちの元へ近寄って来ているように感じてならない。 1. じめじめを乗り越えて  梅雨の時期によく目にするのが、カタツムリだ。その小さな〝梅雨の使者〟をじっくりと観察してみてほしい。  雨上がりの道端や塀にくっつき、ゆっくりと進むカタツムリ。そんなカタツムリの速

          夏空への第一歩