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魂の声たち。

所属会派の展覧会に足を運んできた。

今年は創立77年、展覧会は第70回の記念展という節目の年に開催される展覧会だということで、わが師匠の師であり、私が所属している書道会の創設者である上田桑鳩先生の小品展も特別陳列されるというので、これは是非とも見ておきたいと思ったのだった。

ちなみに上田桑鳩先生は、日本経済新聞の題字を書かれた書家であるが、この題字をご存知の方は日本にはたくさんおられると思う。

開催場所は神戸にある兵庫県立美術館である。

会場までの長い廊下は薄暗く、コンクリートを打ちっ放しにしたような灰色の壁面の建物の中をひたすらスナフキンと歩いた。

「なぁなぁ、暗くない?しかもすっごい奥まった場所のギャラリーじゃない?」

ブツブツ言う私にいつものように「フフフ…。」と笑うスナフキン。

ようやく窓の光が差し込む場所に差し掛かったとき、人々の姿と話し声がきこえてきたのでホッとした。

受付で記帳をする私の陰に隠れているスナフキン。

「ちょっと、スナフキン!せっかく来たんやからちゃんと記帳しよう!」

そういう私に向かって彼はものすごい小声で言ったのだ。

「あかんわ、uniちゃん。小筆で書くなんて!俺に記帳で墨象させる気?」

わっはっはっ‼︎

シーンとした空間に私の爆笑がこだましたのだから何が何やらとは言えやしない。
スナフキンめ、面白すぎることは真面目な場所で言うたらあかんやないの!

何はともあれ、会場の中に入るとそのダイナミックな墨象作品の世界に吸い込まれていくような、ちょっと怖いような、何とも言葉に尽くせない異世界に紛れ込んだ気がした。

スナフキンも息を飲み、口をぽかんと開けていた。

作品たちがワーッと大声を上げながら、「こっちよ!こっち見て‼︎」
「いやいや、こっちや!僕を見て‼︎」
そんな自己主張をしているかのような、音はないのに、魂の叫びが聞こえてくるような空気に圧倒された。

私たち夫婦が呆然としているところに1人の紳士がやって来た。

なんと師匠だった。

稽古場に来る時の姿とは打って変わり、パリッとした仕立ての良い上品なスーツ姿の師匠は別人に見えた。

ハレの日に正装するってやっぱり素敵だなぁと3割方男前が上がった師匠を見て嬉しくなった私。

さっそくスナフキンを紹介した。

書道の知識のないスナフキンに師匠は言った。

「これが字だとは思わないでしょう?絵やと思って楽しんでください。一つずつ丁寧に見たら疲れまっせ!ざーっと見ながら'これや!’って気になった作品をじっくり見て何かを感じてくれたら十分です。気にいらん作品もあるのが当たり前なんで!」

またなんか気になることがあったら声をかけてください。

そう言ってその場から離れた師匠。

言われた通りの書の楽しみ方をはじめた私とスナフキン。

たしかに気になる作品は、呼ばれた気がして立ち止まり、じっと見つめたくなる感じがした。

そして上田桑鳩さんの作品は、書だけではなく、墨に入れる字をデザインをした作品、親しい方へ宛てた手紙や色紙、「夕焼け」という名のみかん色の茶碗など数多くの作品を見ることができて、大満足である。

来年は是非、私もこの展覧会に出品したいと思っている。

この場に自分の作品が置かれることを想像すると、見てくださる方が私の作品の前で立ち止まりたくなる「私の魂」なる作品を作りたい気持ちでいっぱいになってしまうが、気持ちだけでは空回りしてスベるのはもう目に見えている。

究極の足し算でいくか、その逆でいくか。構想を練る準備をしなくては!

以下、本日の展覧会で私が立ち止まりたくなった魂の叫びが聞こえた素晴らしい作品を掲載します。

写真撮影は可能でしたので撮らせていただきましたが、個人様の作品ですので、転載、商用利用は固く禁止いたします。

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