詩ことばの森(231)「遠野行」
遠野行
遠野はふしぎなところです
駅前には痩せた河童たちが遊んでいます
僕には彼らが見えますが
河童たちは僕のことなど見えないようです
遠野の道を歩いていたら
色褪せた着物姿のお地蔵様たちが並んでいます
新しい着物を持ってくる人は
どこに行ってしまったのでしょう
古い茅葺の家にはだれもいません
庭からは畑が見えましたけど
畑の向こうからは山が覗いていました
僕は大きな声で叫びたくなりました
遠野はふしぎなところです
水辺や畑や農家にはだれもいませんでしたが
だれかがいたのです たしかに
お婆さんや河童や祈る人の姿をして
(森雪拾)
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