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詩ことばの森(251)「孤舟」

孤舟
 
だれもいない
岬できこえる
波音とともに
なつかしいものたちの声

広がる青色のなかを
白い絵の具を落としたかたちに
遠い海の波間を
小舟が通り過ぎていった
 
夜の庭には
今でも朽ちた木の残骸が
なくした海を夢見ていて
ときどき鳥が影を落とす

ふいに狂った海が
崩れては起き上がり
波濤のざわめきとなって
ふなべりを幾度も湿らせる

(森雪拾)

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