詩ことばの森(257)「真実の鏡」
真実の鏡
ほんとうのことは
目にはみえないらしい
テレビドラマの会話だった
ほんとうは本の言葉らしい
ぼくは本当のところは知らない
まぶしすぎる君は
ほんとうの姿だったのか
歯切れのいい会話や
聡明な頭が君だったとしたら
ぼくは少なくとも
君のことは知らなかったことになる
たぶんあれは本当の君じゃなかった
今年も秋が過ぎて
やがて冬になるけども
君のことはずっと昔のこと
ずっとずっと昔のことだから
君の姿はおぼろげでも
まぶしい姿はよくおぼえているよ
たとえそれが
偽りの君であったとしても
(森雪拾)