詩ことばの森(184)「魚の夢」
魚の夢
現実をみろと
先生は言った
夢子ではだめだと
こわい顔をした
大人になったある日
居酒屋で先生を見かけた
聞きおぼえのある声で
赤い顔をしながら
魚だ
サカナが
泳いどるぞと
お猪口をのぞいていた
魚は勢いがよいらしく
先生は頭を回転させている
くるくる
くるくる
さかながおよいどる
およいどるぞ
先生はそう言うと
お猪口を一口で飲み干した
今でも わたしは夢をみつづけてるけど
あれから 先生の姿は見かけない
ところで おいしかったかな
あの魚
(森雪拾)