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詩ことばの森(244)「種を蒔く」


種を蒔く

僕はなれない手つきで
種を蒔いたのだった
畑は夏の土とちがって
かわいたやさしい音を立てた

耕すと小さな虫たちが
もぞもぞと這い出てくる
彼らにとっては迷惑なことだろう
冬越しの準備に忙しいというのに

今年は猛暑だったから
ようやくほっとしてるのは
僕ばかりではないだろう
人の背丈ほどのびたオクラも
色褪せて落ち着いてきたようだ

空の上から聞こえてきたのは
カエルたちの合唱だが
なぜか蔵の壁に張りついて
天に向かって叫んでる

月日が経つのは早いもの
すべては刻々変わるもの
やがてむかえた夜の月が
淡く霞んで山の端に浮かんだ

(森雪拾)

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